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クラスで勇者に転生するはずが一人で置いて行かれました。  作者: NayuTa


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3章・目立つらしくてー10

 同日の夜、存分に飲み食いして帰ったウィルを暁光の導きのメンバーが全員で出迎えた。

「どうした?三人揃って。」

 そう聞きながらも内容は三人が囲むテーブルに置かれた書類で察していた。

「今日バーツ支部長が来たの。前から話していたクラン立ち上げへの参加希望書よ。」

 カミラの声は少し弾んでいる。

 クラン創設メンバーの肩書きは冒険者にとって嬉しいものだ。

 黎明期の苦労はあるだろうが、今回クランリーダーとなるバーツは既に根回しをしており立ち上げ当初から十分な規模となり、メンバーも元から見知ったゲインの冒険者が中心であることから一般的なクランほどのものでもないだろう。

 中でもトップクラスの実力を持つ暁光の導きクランを代表するパーティーとして華々しく迎えられるのは確実だった。

「三人とも入るのか?」

 その問いにカミラの表情が凍りつき、ゴータスとチャロも目を伏せた。

「アンタもでしょ?」

 カミラは出す声も冷たくなっている。

 ウィルの表情からはほろ酔いだった先程までの緩さが消え、いつもの席に座った。

「アンタ、何言おうとしてるの?」

 カミラの問いにすぐには答えず、ウィルは腕を組んで天井を見上げた。

「結論から言え。」

 いつもよりなお低いゴータスの声に、ウィルが口を開いた。

「ありがとよ。こういう時、いつもお前に助けられるんだよな。いつも言うけど、リーダーはお前がやるべきだろ。」

 いつもなら「あの時ジャンケンで負けたのはお前だ」と返すのが決まりだが、ゴータスは無言でウィルの言葉を待った。

 そしてウィルはハッキリと、

「俺は入らない。」

と告げた。

「酔ってるのよね?」

 やっと出たカミラの声はいつもと違い弱々しく、それでも聞き漏らすことができないほど室内は静まり返っていた。

「酔ってない時に出した答えだ。」

「ソウシ?」

 なんの脈絡も無かったが、カミラが聞きたい事は何となく全員が分かった。

「きっかけはな。」

「アイツとパーティー組むの?」

「また組んでみたいけど、前は足引っ張っただけだったから頼みづれぇな。しばらくはソロで、臨時のパーティーに入れてもらうことになるかな。」

「決まってないなら、しばらくは今のままでもいいじゃない。」

「ダメだな。」

 ウィルにしては珍しく、真っ向から相手を否定する言葉に三人は驚いた。

「なんで?私達、ちゃんと強くなってるでしょ?次はCランクなのよ?」

「確かにな。でも、そうじゃない。今、俺が求める強さはそういうものじゃないって思ったんだ。」

 黙り込む三人を見て、ウィルは

「三日後にシャミさん達が帰るのに付いて帝都に行くつもりだ。ランクアップ試験もそこで受ける。細かい事は明日話そう。」

と告げ席を立った。

「ジャンケンで決めましょ。」

 カミラの悪あがきにウィルは困ったような笑みを浮かべる。

 ジャンケンで決めるのはパーティーの選択を決める時なので前提が違う。

 それでもゴータスとチャロがカミラの、

「最初はグー。」

の掛け声で手を出したのはウィルを引き留めたいという想いの表れだった。

「ジャンケン、ポン!」

 その瞬間、三人の目が見開かれた。

 出された手はグーが三つとパーが一つ。

「ソウシとやると妙にいいタイミングで負けるんで、おかしいと思ったんだよな。」

 騎士団での訓練中、何かにつけてはジャンケンを挑み、遂に指摘を受けたのだ。掛け声に合わせて手を引いた時、無意識に出す手の形にしてしまっているのだと。

 つまり手を先出ししてしまっていたのだ。相手はその手に勝てる手を出せばいい。

 宗絃に確認すると、初めてジャンケンをしているところを見た時から気づいていたと笑いながら肯定した。

 付き合いの長いパーティーメンバーが気づいていないはずもなく、自身のジャンケンの弱さに納得したのだった。

 今回はそれを逆手に取って最後の瞬間に手を変えたのだ。

「じゃ、お休み。」

 自室に帰るウィルの姿はいつも通りだった。

「俺も寝るかな。」

 席を最初に立ったのはゴータスだった。

「アンタ達は納得してんの?」

「俺はしてる。残念だとは思うけどな。」

「じゃあ、」

「最初からそういう約束だっただろ?」

 ゴータスの声は少し冷たかったが、カミラ相手には少し突き放した態度が必要だと思ったからだ。

「俺達はそれぞれが上に行くためのパーティーだ。組んだのは、それが最適の選択だっからだし、抜けるのは自由だ。言い出したのはお前だぞ。」

 カミラは組み始めた当時、性格もバラバラで連携も噛み合わなかった四人でここまで来れるとは思っていなかった。抜ける者がいれば最初は自分で、ウィルが宥めるのだろうとも思っていた。

 実際はそれと真逆の現実である事をテーブルの上に置かれた新クランへの参加希望書が静かに物語っている。

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