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クラスで勇者に転生するはずが一人で置いて行かれました。  作者: NayuTa


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序章・置いて行かれてー2

目を開いた瞬間飛び込んできた光景は高校生達の背中だった。

 なぜ分かるかは、最近転校したばかりの学校の制服を着ているからだ。

 その中でも大人は一人、担任の大畠である。

 そして、何人か見覚えがあることからクラスメイトで間違いないだろう。

「さあ勇者達よ、新しい世界で必ずや魔王を倒してください。」

 生徒達の向こうで漫画で見る神官や天使のような重苦しい服を着た男がそう言った直後、クラスメイト達が消えた。

 理解できないが、文字通り消えたのだ。

 この場所は、うろ覚えだが転校してきた学校の体育館だった気がする。

 残っているのは見覚えのない男が一人。

 人の良さそうな微笑みを浮かべていたが、徐々に歪んで焦りに満ち溢れた。

「え?足りない?四つ足りない!おかしい!なんで?なんで?これじゃあダメじゃん!」

 そしてようやくこちらに気づいた。

「あ!お前!なんで残ってる?転送の術式は正常に起動、してる?」

 完全に一人で会話が進み、何かを確認するように目を閉じて頭を抱え、そして一人で結論に達したらしい。

「これは、そうか、範囲外に、クソ、勝手に動きやがって。こんな事になるなんて。これじゃ帳尻が、いや、そうだ、帳尻が合えばいいならコイツに……。」

 その時、何もない宙空にヒビが入ったかと思うと一気に広がり、真っ黒な穴が開いたのだ。

 中には男女が一人ずつ、こちらは一般的な服装をしている。女の方はビジネスカジュアル、男の方はかなりカジュアルという違いはあるが。

 二人を見た途端、これまで宗絃を無視していた男は異常なほどの反応を見せた。先ほど以上に焦っているのが明らかだ。

「ア、アヤセ!と、誰だ?いや、なぜここに?」

「なぜって、心当たりしかないからそんなに焦ってるんでしょ?」

 アヤセは明らかにイラついた声で答えた。

 貼り付けたような笑顔という表現がピッタリの表情で。

「い、いや、僕は、何も……。」

「何も?異世界間の転生を独断で行なっておいて、何も?」

「や、やっていない!僕はやっていない!」

「そう。自白はなしね。でも、貴方が何をしたかは分かってるから。全部筒抜けよ。大司書様を舐めすぎてたみたいね。」

 ダイシショサマは聞きなれない言葉だったが、言い逃れをしようとする男には通じたらしく、騒がしかった口調がぴたりと止まった。

「大司書?その男が?本当に?」

「そういう訳だから、貴方の弁明は不要です。現時点での『抹消』を開始します。」

 機械にも聞こえる抑揚のない言葉と共にアヤセが男に掌をかざすと、何事かを言おうとした男は光の粒子となり霧散した。

「はい、終了。でも、転生の発動は間に合わなかったか……。あれ?なんか残ってない?」

 アヤセの視線は宗絃に向けられているが、何を答えればいいものか、そもそも答えられる事が無いようにも思えて言葉が出ないでいると、ここまで静観を決め込んでいたダイシシショサマが口を開いた。

「時間だな。」

「時間?」

「パッケージをそのまま使ったんだ。誰がやったか分かりづらくするためにな。そのタイマーに縛られて予定が狂ったみたいだな。」

「え?タイマーって、じゃあ転生しちゃう?どうにかならないの?」

「俺はついてくるだけで何もしないって条件だっただろ。湯長にダイシショサマがどうこう話してたのは自分だぞ。」

 冷たい視線を向けるダイシショサマはアヤセの煽りに少しお怒りだったらしく、突き放すように言い放った。

 今度はアヤセが慌てふためきながら宗絃に右手をかざし、左手を額に当てた。

「本当だ。転送は…止まらない。どうすればいい?バランスが維持できない?」

 独り言を呟くアヤセを無視し、ダイシショサマは宗絃に向かって声をかけた。

「まあ、お前はこれから別の世界で転生するって話だ。外法に巻き込まれたのは、まあ、運が悪かったと諦めな。」

「ちょっと!諦めないで手伝ってよ!少しでもバランスを、」

「無理だ。それにバランスだの調整だのはコイツに関係ない勝手な都合だろ。」

 苛立ちを滲ませる綾瀬に対し、相変わらず冷静な声でピシャリと反論し黙らせる。

「お前の世界には無かった魔法も使えるぞ。喜んで、楽しめ。どこまでお前に有利に出来るかは時間がなさすぎて俺にも分からん。元からその世界で生きてる人間よりは楽に生き残れるはずだが、期待と油断はするな。後は、人里が近いように祈りな。」

 言葉の全ての意味は分からなかったが、口ぶりほど悪い人間ではないように思えた。

「ありがとう。」

 そう言おうとしたが、言葉は出なかった。

 それでも伝わりはしたらい。

 ダイシショサマが浮かべた笑みは、宗絃が見た最初で最後の彼の感情で、最後に思い出したように付け足された一言は妙に脳裏に残った。

「あぁ、それからお前は、濃いというか、深い、群青かな。」

次の瞬間、再び宗絃の視界は暗転した。


 ほんの一瞬。

 正しく瞬きをするように視界が開けると、視界は一面、木が茂っていた。

 どこからか映画の密林で出るような鳥の声が聞こえ、明らかに人里の近くではない。

「ロクなもんじゃねえ……。」


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