表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスで勇者に転生するはずが一人で置いて行かれました。  作者: NayuTa


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/39

2章・山を下りてー4

 暁光の導きが拠点としているゲインの町は典型的なダンジョンの出現により発展した町である。

 町自体に魔物が出ることは少ないものの断崖の森と呼ばれる魔境近くを通る街道で目撃例が多いことと、歩いて二、三時間で宿場町があることから移住者の少ない町だった。

 農作物の育ちやすい土壌であったために農家が集まっていたところにダンジョンが二つ見つかったことで冒険者が集まり一気に人口が増えたのだった。

 いずれも圧倒的多数を占める地下型と呼ばれる階下に進むタイプのダンジョンである。最初は素人でも倒せる魔獣が出現し、潜るほど徐々に強くなり三十階から下は上級者向けと、幅広いランクの冒険者が挑める難易度となっている。

 ゲインに着いてから四日後の朝、宗絃はダンジョンの入口前に立っていた。

 ダンジョンの周囲は柵で囲われ商人が露店を出し、警備らしき兵も配置されている。

 魔物が出てくることに備えているらしいが、ここは潜る冒険者が多いためにそのケースは珍しい。衛兵の仕事も冒険者同士の諍いに対応する事がほとんどである。

 初めて見るこの世界の「普通のダンジョン」に感動すら覚えつつ、露店にわきめもふらずダンジョンへと足を踏み入れた。

 外観は石造りの立方体に一箇所アーチ状の穴が開いているだけで、中に入っても地下へと続く大きな石段があるだけだった。

 階段を降ると、高さも幅も四メートルを超えるほど広い洞窟へと続いていた。

 冒険者が探索し、協会へ情報提供している階層までは図書館でもまとめた資料が閲覧できた。

 初心者ならば三階まで、初級者であれば十階までを余裕で踏破できる事が最初の目標らしく、そこまでのモンスターを倒せればEランク相当と見られている。

 D控えと認定されたならそこまでは行けるという自身の仮説を立証するのが今回の目的である。

 急襲を避けるために魔力探知を使いながらダンジョンを進む。

 いくつか探知に引っかかるが感じる魔力はこれまでにないほど微弱である。

 強めの圧を放てば向こうから逃げだすために敵の姿を見ることすらないまま十階まで進めてしまった。

 冒険者登録をすればランクに関わらず入れる管理の緩さにも頷けた。

 中級と言われる十一階へと足を踏み入れると、確かに探知できた魔力は強くなったものの先日見たウィンドホークには及ばない。

(魔物の種類は変わらないけど強くなるんだっけ?いやダンジョンの中だから魔物じゃなくてモンスターか。)

 図書館で読んだ本の記憶を反芻する。

 同じ種類でもダンジョン外では魔物、ダンジョン内ではモンスターと呼ばれるのだ、

 モンスターは倒すと肉体が魔力に変化しダンジョンに取り込まれ、魔石のみを残して消滅し、魔石も一定期間が過ぎてもダンジョン内にあれば取り込まれてしまうのだ。

 だからモンスターを倒して得た魔石はダンジョンの外に持ち出さなければならず、長期間ダンジョンに潜り続ける冒険者はいないし、レベルの高い階層でより良い魔石を手に入れられるランクの冒険者達は極力低階層での戦闘を避けて奥へと進んでいく。宗絃がこれまでに探知した冒険者で、魔物を避けるように進んでいた者達もレベルの高い冒険者なのだろう。

(やっぱり実際に戦わないとレベルが分からない。特に冒険者は……。)

 そろそろこの辺りでモンスターと戦って彼我の力を測ってみるべきだろう。

(それで冒険者の強さと自分がどれほどのレベルに位置するのかも推察できる。)と思いながら気が付けばすでに階段を五つ下り、地下一六階を探索中である。

 感じる魔力は十一階のものより強くなっているが十階から十一階への上昇ほどではない。

 力試しにはちょうどいいだろう。

 周囲に冒険者らしき反応はなく、曲がり角の先には複数のモンスターがうろついている状況もうってつけだ。

 足音を消して角の先を覗き込むと狼のようなモンスターが群れている。

 名前はワーウルフ。集団での連携を得意とするため初心者は避けるべき相手とされているが、特別な魔法攻撃をしてくる情報もなかったはずだ。

 不意打ちはせず群の前に姿を晒すと一気に視線が集まった。

 その瞬間に思い出す。

(集団で戦うヤツと正面から戦ったことなかったな。)

 命懸けだというのに抜けていた自分を責めたが、ワーウルフ達は一気に突っ込んでくる。

 どこが集団戦法なのかと思ったが、一気に展開して宗絃の周囲を取り囲んだ。

 例のウィンドホークと違いリーダーらしき個体も判別できず、分かりやすい意思表示があったわけでもない。

 その連携能力に驚きながらも状況の判断は冷静にできている。

 数で勝るなら、特に相手が一人なら取り囲んでの攻撃は有効かもしれないが、宗絃は魔力探知で背後に回った敵の位置まで把握し、その優位性を完全に無効化した。

 顔を向けることすらなく、四方八方から襲いくる牙も、爪も、最小限の動きで躱す。

(なるほど。こんなもんか。)

 最初こそ綺麗な連携に驚嘆したが、包囲攻撃以外には何もないらしいと分かれば大した相手ではない。

 暁光の導きもこの連携を経験したはずだが、ウィンドホークに手が出なかったのは三次元的な動きと魔法による遠距離攻撃に対応できなかったからだ。

 一通りの観察を終えると、今度は攻撃体制にシフトする。

 攻撃が止んだ一瞬で宗絃の周りに水球が現れ、次の瞬間、水球からワーウルフに向けて高圧水流が発射された。

 射出後、対象を切り裂くように角度が変わる線での攻撃。

 避けられなかったワーウルフがその体を切断されると、肉体は黒い粒子になって風に飛ばされるように消え去り、黄色い魔石が地面に落ちた。

 イメージしたのはウォーターカッター。

 見た目は完全に水属性だが、同時に土属性で生成した研磨剤を混ぜる小技を使用している。

 残った三頭は身を翻して逃走を図ったが、透明な風の刃による追撃で絶命した。

(これぐらいなら二属性同時でも戦闘中に十分使える威力が出るな。けど、研磨剤は同じ水属性で氷を使う方が簡単なのか?)

 魔石を拾い集めながら先ほどの戦闘を思い返すと、見直すべきところや試してみたいことが次々と浮かんでくる。

 やはり実戦で得られるものは多いと実感した宗絃は何度か戦闘を重ねて更に階下へと進んだ。

 だが、「他のパーティーから隠れながら」という制約が非常に重いことに気づいてしまった。

 この階層で最も厄介なのがワーウルフであり、大抵の冒険者が戦いを避けるらしいのだ。

 結果、人気のない道を進む宗絃が戦うのは全てワーウルフとなり、それ以外と戦えないまま上級者向けと言われる二十一階層に続く階段前にたどり着くのだった。


 ここまでソロの冒険者は見えていない事を鑑みるに、自分は異質なのだろうと思う。

 同時に自分の境遇を話し、理解を示してくれるであろう者もまた異質であり、存在するかも分からないような冒険者を探すために時間を割く気にはなれないのである。

 都合のいい人間との巡り合いがあれば組めばいいというのが出した結論であり、ソロで目立ってしまうのは諦めるしかない。

(ロクなもんじゃねえ。)

と思いながら歩を進めると、魔力探知に引っ掛かると同時に複数の足音が響いてきた。

 ちなみに二十一階からは先ほどまでの洞窟ではなく、人為的に作られたとしか思えない石造りのブロックで形成された正方形の通路となり、広さも心なしか先ほどよりも広がったように見える。

(走りやすい道にはなったけど、わざわざ走るか?)

 宗絃の疑問は嫌な予感がして広げた魔力探知で答えが出た。

 四つの人間の反応の後ろを大きなモンスターの反応がついて来ている。

 普通に考えれば追いかけられているのだろうが、追っている魔力の速度はさほど速くなく、十分に逃げ切れると思われた。

 だが、逃げている者達が目指すのは当然上階だろう。道を間違えなければ宗絃のいる方向へと逃げてくる。

(これは、一緒に逃げるしかない?)

 いい案はないかと唸っている間に足跡は最後の曲がり角を曲がった。

 綺麗に整備された通路に障害物はなく、逃走中の五人の姿がよく見える。

 女子三人と、残る一人は意識がないのかグッタリとして一番体格のいい女子に背負われているため顔が見えず、性別も判断できなかった。

 身に付けている装備から、背負われているのは神官、背負っているのが盾使いだろうと予想できた。他は剣士と魔法使いという暁光の導きと同じ編成だろう。

 魔法使いが宗絃に気付き、剣士の少女に声をかける。

「シャル!」

 シャルと呼ばれた少女がただ一言、

「走って!」

と叫び返すと二人は何を言いたいか察したらしく、驚きの表情を見せた。

盾使いらしき少女が怒ったように、

「おい!」

と言ったが、シャルは返事をすることなく全力で走り続けた。

何のやり取りだったのか分からず彼女たちを見守る宗絃の脇を通り過ぎる時、黙っていた魔法使いの少女が瞳を潤ませながら何かを呟くように口が動いた。

(ごめんなさい?)

 口の動きと僅かに聞き取れた声から、宗絃にはそう聞こえたように思えた。

 走り去る三人と背負われた一人が先の角を曲がると、追いかけてきたモンスターが姿を現す。

 それは明らかに二メートルを超え棍棒を持った、宗絃も見覚えのあるモンスター。

「ゴブリン?」

 初対面では必死で逃げるだけに終わったが、クロスと戦う前ですら複数を相手にできていたのだから今更手こずる相手でもない。

 先ほどの四人が離れて行くことを確認して兜割に刃を作り出す。

 水以外はまだまだコントロールに難がある。

「練習相手になってくれ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ