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第2話:竜の智慧、人の選択、王国の礎、歪んだ調律 -2

【毎日更新】

星を紡ぐ者たち 18時、19時 →

影の調律者 20時、21時 →

失われた千年史 22時、23時

イザナギは、アクアムンドゥスの言葉を胸に、アルテア一世の元へと向かった。

彼女は、王国の繁栄を支える新たな技術の背後にある、見えざる代償について訴えた。


「長アーダルベルト様。この新たな技術がもたらす繁栄は、確かに民を救うでしょう。

しかし、この地の生命は、この星の摂理は、深く傷つけられています。過剰な開墾は、やがて土壌を枯らし、森の木々も生命を失うでしょう。

どうか、自然と調和する道をお選びください。この大地には、持続可能な恵みが、確かに存在しています。」


イザナギは、懸命に訴えた。

その瞳には、ガイアへの深い愛情と、未来への危惧が宿っていた。


彼女の言葉は、澄んだ泉のように純粋で、アーダルベルトの心の奥底に問いかけるようだった。


彼女は、王国の繁栄が、まるで炎を燃やすかのように大地を食い潰していることを、霊感で感じ取っていたのだ。


しかし、アルテア一世は、アズィーズの誘導する「効率的な技術」の目の前では、「非効率的」な古代の智慧を受け入れようとはしなかった。


彼の脳裏には、数年前の飢餓の苦しみ、そしてアズィーズがもたらした奇跡の光景が鮮明に蘇っていた。


王国内の官僚ハンスもまた、数字と効率を重視し、イザナギの提言を「感情的な迷信」として退けた。

ハンスは、集落の人口増加のグラフを指差し、その数字の安定こそが民の安寧だと信じて疑わなかった。


「巫女殿の言葉は尊いが、我々が今求めるは、民を飢えから救う、確かなる繁栄だ。非効率な方法では、この冬を越せない民が出る。神々の恵みこそが、我らに真の道を示されているのだ。」


アーダルベルトの言葉は、イザナギの願いを打ち砕いた。


彼は、民衆の歓喜と、アズィーズがもたらす奇跡という「現実」を前に、イザナギの霊的な訴えを「非現実的」と判断したのだ。彼の目は、目の前の繁栄しか見ていなかった。


民の声に背を向けることは、彼にとって耐え難い選択だったのだ。



その頃、魔族の尖兵ジャバーによる襲撃はさらに激化し、人類は神々の提供する「秩序」と「防衛技術」に依存せざるを得ない状況に追い込まれる。


民衆は神々の庇護を求め、アブラハムが説く教義に救いを見出した。

神聖教団の教えは、人々の不安を鎮め、結束を促す強力な力となっていた。


イザナギは、人類が自らの手で自由な選択肢を狭め、見えざる支配へと向かっていることに絶望した。彼女の心は、深い悲しみに沈んだ。


彼女は、このままでは真実が失われることを悟り、粘土板に抽象的な記号と口伝で、この時代の「歪み」と「真の姿」を記録に残すことを決意する。その記録は、古き智慧が、いつか未来で、真の光となることを願って。


イザナギは、その孤独な使命に身を投じた。


夜な夜な、集落の最も古い祠に忍び込み、隠された粘土板の壁に、自らが感じ取った「淀み」の波動を記す。


その指先は、ひんやりとした粘土板の上を、震えながらも正確に滑った。


それは、言葉では表現しきれない、霊的な感覚の記録だった。


竜の一族から聞いた「自然の摂理」と、アルテア一世の集落で見た「人工的な効率」の対比。神々の「恩恵」が、いかに人々の心を盲目にし、真の自由を奪っていくか。


彼女は、来るべき時代に、この真実が届くことを願って、祈りを込めて記し続けた。彼女の視線は、遠い未来を見つめるかのように、暗闇の奥に消えていった。


イザナギの記録は、弥生の一族によって密かに継承されていく。


それは、神々の「恩恵」の裏に潜む「冷たい知性の波動」と、竜の一族が伝えた「真の智慧」の存在を記したものだった。人類は神々の恩恵によって繁栄を続けるが、その背後で自然の歪みと、見えざる支配が深化していることに気づかない。


世代から世代へと、その記録は、古文書の奥深く、そして巫女の一族の血の中に受け継がれていく。その時代ごとの巫女たちが、常にこの「澱み」を感じ取り、記録を更新し続けていくこととなる。


【毎日更新】

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ほかのスピンオフ作品も並行連載していきます。

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