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ハニートラップ発進!


 そして放課後。

 剣術の訓練はキャンセルして、私は学園の門の側で令息を待ちぶせる。



「キャッ、オールディッシュ様じゃありませんか」

 偶然を装って声をかける。


「私、アンジェ・アルコバレーノって言います。先輩に憧れていて‥もし良ければ一緒に帰りませんか」

「ああ構わないよ」


 美少女に声をかけられて、令息はにやける。

 分かりやすいやつだ。


「私、オールディッシュ先輩とお話したいって思ってたんです♡」

 いつもより甘ったるく話しかける。(当社比)


「ぜひガブリエルと呼んでくれたまえ。どこかでお茶でもいかがかな」

「いいんですか? うれしい! 私、ガブリエル様と今人気の喫茶店に行きたいなぁ」



 これは昔夢で見た、つつもたせで稼ぐ娼婦の話し方を参考にしている。

(今までイケメンを落とす時にも使っていましたよ。はい)



 懺悔はともかく、令息を喫茶店に引きずりこむのは成功。




「どれにしようかな~」

 ゆっくり悩みながら注文をする。



 お店にグレイス嬢が入って来た。

 彼女は私からは見えるけどガブリエルには見えづらい、斜め後ろの席に座る。



「ガブリエル様は婚約者がいるのに、こんなとこ私と来ていいんですか」

 ふざけた感じで、ちょっと悪そうな笑顔を作る。


 ガブリエルもニヤッとした。

「ああ、彼女とは子供の時に結んだ婚約でね。いつまでも固執されて困っているんだ」


「ええっ、本人の意思は関係なかったんですか」

「それが、彼女の家は成金なんだ。先代が爵位を金で買ったのさ。そして今度は名誉ある我が家と親戚になるためボクが買われただけで」



 はい、結婚を条件に資金を援助してもらったことですね。



「だが今は我が家の経営も上向きだ。必ずしも結婚が必要なわけではない」


 なるほど、ちょっと羽振りが良くなったから調子に乗っていたってことっすね。



「ええ、じゃあ婚約は解消したいんですか?」

「まあね」



 こいつチャラくてチョロい。

 奴の後ろでグレイス様が肩を震わせているとも知らないで。



(こんな奴、手加減する必要ないっしょ)





 これはこいつの本心を確かめるために組んだ茶番だ。



「そうだったんですね‥ 実はあの私、しがない家の娘だから、まだ婚約者もいなくて」


 私はテーブルの上で組まれている令息の手を、そっと両手でつつんだ。


「男爵家ではお嫌ですか‥」


「そ、そんなことはないさ! アルコバレーノ家は元々は子爵家じゃないか。ボクの妻にふさわしいよ」

 アンジェが平民出身なのは知らないのか構わないのか。



 その時、さっと私たちの視界が暗くなった。


 現れた女性を見て、ガブリエルは狼狽する。



 そして私は歯を食いしばり衝撃に備えた。


「このドロボウ猫!」

 パンっと音を立てて張り倒される私。大げさによろけてみせる。



 ちなみにたたいたのはグレイス様じゃなくて‥



「ジェミー! どうしてここに」

 ガブリエルが叫ぶ。


 さっき入店した客が、ずっとこっちをにらんでいた。

 雰囲気からして、ガブリエルの浮気相手だろう。


 グレイス嬢と相談してこの店を選んだのも、彼女の行きつけだったからだ。



(ここまでうまく行くとはねー)

 タイミングバッチリすぎて逆に怖いんですけど。



「ガブリエル様、こんな女にだまされないで下さい!」

 彼女はキッと私をにらみつける。


「彼が愛しているのはアタシなのよ!」



 私は頬を押さえながら、悲し気に立ち上がる。

「そんな‥ガブリエル様、本当ですか? こんな‥平民のような方を」


「ま、まさか! ボクが平民を愛しているわけないだろう。ジェミー、誤解させたとしたらすまなかった」


 うろたえるガブリエルに、すがりつく恋人。

「嘘よ、婚約者を捨ててアタシと結婚してくれるって言ったじゃない」




「あら、そうでしたの」


 グレイス様がガブリエルを見下ろしていた。


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