メガネ君
(公爵令息は片付いたっと)
「あ、あなたが良ければ、お食事をご一緒してあげてもよろしくてよ!」
ついでにキャロル様が飯友になってくれて一石二鳥だ。
このままヒロインから令嬢の友人にジョブチェンジしたいものだ。
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放課後は図書室で自習をしたかったのに、またイケメンにからまれてしまった。
「勉強なら僕が教えましょう」
長髪メガネで伯爵家令息のデイビス・ゲイル様。
「ゲイル様、勉強は婚約者とにしてくれませんか。変な噂が立ったら嫌なので」
しっかり断ったはずなのに、メガネは退かない。
「彼女とは幼馴染で、妹のような存在なのですよ。向こうも別に気にしてはいません」
(さすがメガネ、一筋縄では断れないか)
「そうなのですか、私は関係ないので今日はもう帰ることにします」
しょうがないから、本は借りるだけにして寮で勉強する。
(明日も会うのか。面倒くさい‥学校サボっちゃおうかな)
これ以上言い寄られたら、デイビス様のメガネをたたき割ってしまいそうだ。
(奴にはメガネ以外に弱点はないのか?)
たかが男爵令嬢にはできることが少ない。
不安はいっぱいだけど、とりあえず私は寝ることにする。
~~~~ (-_-)zzz ~~~~
『アンジェさんとばかり一緒にいないで』
『あの子にはただ勉強を教えていただけだよ。嫉妬はよしてくれ』
デイビス様の冷たい視線にわたくしの心がキュッとします。
『わたくしとの婚約が嫌になりまして?』
『君との婚約は、あくまで家の事情なんだ。好きも嫌いもないだろう』
デイビス様は学園に入ってから、ぜんぜんわたくしとお話してくれません。
お手紙を送ってもお返事が来るのは一月に一度くらい。
婚約者をないがしろにするのは良くないはずなのに‥アンジェ嬢とばかり一緒にいるなんて‥
さみしい‥辛い‥
~~~~~°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°~~~~~
目がさめた。
これって‥デイビス様の婚約者の夢だ。
(何が向こうも気にしていない、だ)
放課後図書室に向かうと、やはりデイビス様が待っている。
「やあ、今日は一緒に勉強できるかな」
「デイビス様、婚約者のダイアナ様を放っておいて私と会うのは止めてください」
デイビス様はキョトンとしている。
「他の女とばかり付き合って、許嫁をないがしろにしたら、婚約なんて破棄されちゃいますよ。デイビス様の有責で」
「別に、彼女はそんなことは」
「学園に入ってから、直接会ったのは何回でしょう? 片手で数えるくらいでは?」
裏は取ってある。情報源はキャロル嬢との昼休みだ。
「彼女、ずいぶんさびしい思いをしているそうですよ。婚約者に見向きもされない惨めな方ってバカにされることもあるとか」
「そ、そんな話僕は聞いていないが」
「まず相談されるほど会話していないでしょう。手紙だってちゃんと読んでいるかどうか」
だんだん青ざめるご令息に私は言い放つ。
「じゃ、さようなら。婚約者に愛想つかされないといいですね」
崩れ落ちる彼を置き去り、私は図書室を後にした。
(ちょっとやりすぎたかな~)
反省と共に。
健気な令嬢、脇役なら‥書ける、書けるぞ!