闇属性の生徒
「それだ! 闇魔法所持の生徒は少ない、拘束して神殿に連行しよう」
殿下も叫ぶ。
「学校は全生徒の魔力適性を記録しているはずよ」
ダイアナ様もうなずく。
「職員室に参りましょう!」
キャロル様は歩き出した。
「闇魔法の生徒ですか? あまり多くはないですね」
本来なら生徒に見せるリストじゃないだろうけど、いまここには殿下を初め高位貴族の令嬢令息がそろっている。
教師もしぶしぶ見せてくれた。
「全学年で十三人だが、そのうち男子生徒は五人。これくらいなら私の権限で拘束可能だ」
リストを写しとり、殿下は護衛に確保を命じる。
「昨日から護衛の数を増員させたからね。五人くらいならすぐさ」
殿下は爽やかに、私とキャロル様に笑いかけた。
「じゃあ寮に戻ろう。急がないと夕食に遅れてしまう」
寮までみんな一緒に戻る。
日は落ちてしまったが、まだ空は明るい。本当に和やかな宵だった。
爆発音が聞こえてくるまでは。
「え」
ドカンと音がすると同時に体全体が爆風に襲われる。
「寮の方角だ」
エドワードがそくざに顔を引きしめて飛び出す。
「待て、危険だ」
殿下は止めるけど、私はエドワードを見直した。
深呼吸をして、私も彼を追いかける。
行くべき場所は生徒が逃げてくる、その先。
男子寮の入り口は崩壊していた。
護衛兵や生徒が倒れている。血まみれで。
エドワードは剣をぬいて、立ちすくむ少年に向けていた。
「ぼ、僕じゃない、やったのは別の‥ でもそれも僕?」
少年はかなり狼狽している。
エドワードは躊躇なく切りかかった。
が、少年を覆った影が彼の剣を止める。
「来るな、来ないで、また」
霧が消えると、少年は手のひらをエドワードに突き出している。
「『我の恨みは』‥嫌だ‥『その身を焦がし』‥逃げて」
彼の手のひらに闇が集結する
私は二人の間に飛び出した。
「え、アンジェ,さん?」
彼は特に特徴のない少年だった。
(まったく記憶にない)
「そうよ、あなたのアンジェです☆」
心の声は封印し、精一杯の笑顔で話しかける。
少年の瞳がゆらいだ。
「ダメだ」
エドワード様が腕をつかんで引き離そうとしてくる。
しかし私はもう覚悟を決めたのだ。足に力をこめる。