登校
「アンジェにはそんな秘密があったのね」
キャロル様の寝室でココアを飲みながら、私は秘密を話してしまった。
時々他の人間の夢を見ること。
それを使って情報を得てきたこと。
そして自分に恨みを持つ人間の夢を見てしまったこと。
ブライアン殿下とフィリップ君の夢はさすがに言わないけど。
「そんな不思議な魔法が使えただなんて」
「し、信じてくれるんですか?」
「当たり前じゃない」
そしてキャロル様は私の話を受け入れてくれた。
信じてもらえるってこんなに嬉しいことだったんだ。
(もうキャロル様との友情エンドでいいんじゃない?)
「あなたはわたくしのお友達ですもの、公爵家がお守りしてよ」
「あ、あ゛りがとうごじゃいましゅう」
涙でお礼もまともに言えない。
そして登校の許可が下りる。
予鈴が鳴る中、私はキャロル様と一緒に登校した。
「おはようアンジェ嬢」
「お久ぶりですね」
「ようアンジェ」
「本当にケガは大丈夫?」
近づいて来たのは、ブライアン殿下にデイビス様にエドワード様にフィリップ様。
キャロル様が協力を仰いでくれたのだ。
「アンジェのことはみんなに知らせておいたわ。男子寮に怪しい生徒がいないか、探してもらっているところ」
「我らがアンジェ嬢に、ひどいことはさせないよ」
殿下がパチンとウインクしてくれる。
そして私はイケメンと一緒に校舎に入りイケメンと一緒に廊下を歩きイケメンと一緒に教室に向かいイケメンにはさまれて席に着いた。
「私、あんなひどい態度を取ったのに」
感極まっちゃうじゃん。
「俺と君との仲だろ!」
エドワード様はこんな時でも爽やかだ。
「君には‥恩もあるし」
フィリップ様、私、分かっていますからね♡
「まあ君だけのせいではないですから‥」
デイビス様まで微妙な笑顔を向けてくれる。
イケメンバリアはとても心強かった。
何事もなく平和に学園での1日は終わる。
高位令息や令嬢に囲まれていては、誰だって手が出せないはずだ。
(これなら別に心配することなかったかな)
私は無駄にポジティブなのだ。
久しぶりの学園に、軽い疲労を感じる。
ボスッとベッドに倒れこんだ。