医務室で 1
「ボクの婚約者が、本当にごめんなさい」
医務室で、フィリップ様が真っ青になってあやまっている。
あの後、すごい音だったから他の寮生たちがすぐに助けを呼んでくれた。
階段の上で立ちすくむ令嬢は、先生に連れて行かれる。
私を突き落としたのはフィリップ様の婚約者、ファナ・クーリッジ嬢だった。
「頭が無事なので、すぐ直りますよ」
急な階段から突き落とされた私だが、何とか頭への衝撃をさけた。
そのせいで足首と手首を捻挫するし、肋骨もヒビが入ったけど。
鍛えていて良かった!
「公爵家の者として、あなたにお詫びをするわ。何でも言ってちょうだい」
キャロル様も真っ青だ。
「いえ別に‥ いつもお世話になっていますから」
元凶自分だしね☆
****
しばらくは学校を休んで医務室に入院することに。
(横になっているしかできないから退屈だよねー)
キャロル様が侍女をつけてくれたから、身の回りのことはやってもらえるのは助かっている。
しかし両手首が痛いから読書も手芸もできない。
エドワードは筋トレグッズを持ちこんでくれたけど、ほとんど没収された。
つまり、暇だ。
しょうがないから寝る。
しかし、寝てばっかりだからであろうか、私に幸運が訪れた!
~~~~~ (-_-)zzz ~~~~
‥ 子供の時に婚約が決められたキャロル・アイスバーグ。
私は特に興味がなかった。
高い教養と洗練されたマナーを身に着けた彼女は、私の身分につり合っている。
重要なのはそれだけ。
アンジェ嬢と会った時は心が躍った。
この学園にこんな可愛らしい子がいたなんて。
『あなたはあなたのままで良いと思うの』
彼女は完璧な王子を演じなくてはいけない私に、優しく寄りそってくれた。
キャロルとは大違いだ。もっとこの子と一緒にいたい。
そう思っていたはずなのに‥
『放して、こんな顔を誰にも見られたくないの』
泣きじゃくるキャロルから目を離せなくなった。
僕以外誰にも見せたくない。
思わず抱きしめてしまう。
柔らかい。
身体がかぁっと熱くなる。
何なんだこの感情は?
彼女の亜麻色の髪に触れたい。
でもそんなことをしたら嫌われてしまうかもしれない。それは怖い。
私はゆっくり体を離した‥
~~~~~°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°~~~~~
(うっきゃあああ! ごちそうさまです‼)
「大丈夫ですか、アルコバレーノさん」
ハアハア言いながら目をさましたから、保険医に心配されてしまった。
「は、はひ、大丈夫れす!」
心臓に悪い。
でも続きは見たい。
王子×ツンデレ公女もありである。
保険医に湿布を取りかえてもらった後は、私は1日妄想に浸っていた。
お見舞いに来てくれたキャロル様には内緒である。絶対に。
(今夜も見れるかな? 楽しみ♪)
夢はよく見ます。
子供の頃風の谷の映画にハマってから、何とか自由に空を飛べるよう特訓したので。
「あ、これ夢の中だ。よし飛ぼう」
何年もの修業のおかげか、結構成果があります。