ゾクゾク
そして、次の日から昼食のグループにブライアン殿下も参加するようになってしまった。
「姉さん、それボクも一口食べたいな」
アーンと口を開くフィリップ様に顔を真っ赤にさせるキャロル様。
そしてそれを見るブライアン殿下から、どす黒いオーラがダダもれになっておりやす。
「ふざけないでよフィリップ」
「そんなぁ、この間は食べさせてくれたのに」
え、私が見ていない時にそんなことが!
休日での公爵邸か? 家族水いらずの時にか?
「ああの時は、アンジェにいつもあげていたから、つい手が動いてしまっただけよ」
「私の婚約者に無理を言わないでくれたまえ」
すっごいゾクゾクする。
****
(はふぅ、今すぐ周りに話したい!)
しかし許可など下りない。下りるわけない。
クラスでも寮でも「お二人に何があったのかしら」ってつめ寄られたけど、何も話せない。(涙目)
寮生がキャッキャとおしゃべりしているのを放っておいて、私は自室へ向かう。
「アルコバレーノさん」
階段を上がる途中、ふっと声がかけられた。
二階から、暗い顔の令嬢がスッと近づく。
「あなた、アイスバーグ家とはどういったご関係なの」
おおう、久しぶりの圧。しかし恋バナをばらすわけには行かないぜ。
「は、はい、キャロル様とはご飯時にたわいないお話をしております」
自分が知っているのはあくまでたわいない内容だけだと主張する。
「あなたが現れてから‥フィリップ様の態度がおかしいのよ!」
「えーと? すみません。でも最近は私、自重していますが」
しかし令嬢の眼光は一向に収まらない。
「あなたのせいよ! あなたが余計なことを言ったから、フィリップ様がわたくしを避けて、キャロル様とばかりお話するのよ!」
‥‥‥‥ あーーー それは確かに私のせいじゃん!
やべえ。言い訳ができない。
「ええと」
回れ私の口。
「今まであんなに仲が悪かったのに、おかしいじゃない!」
彼女の言い分はごもっとも。
「家族の仲が良いのは良いことですよ」
これじゃ無理だ。
目をつり上げた令嬢が腕を前に出して、
「あなたさえいなければ!」
私を突き落とす。
ガタガタッタン!
とっさに手すりはつかんだけれど、勢いは殺しきれない。
私は派手にこけて踊り場まで滑り落ちた。