おーほっほっほ♡
「ふふふふ、今日はすっきりいたしましてよ! おーっほっほほほ」
寮に戻ったキャロル様は悪い顔で高笑いをしていた。
「以前はあなたに殿下を奪われたと思っていましたの。殿下はあなたにばかり夢中になって、わたくしには全然かまって下さらないんですもの」
あれ、とばっちりが来るか?
「今日は殿下からあなたを奪って差し上げてよ!」
あ、恨みの対象が、私から王子に代わってる。
(まあ確かに浮気する男も悪いしね)
「あなたにあそこまで言われて動かない殿下ではないから、ドミナントのお宅も徹底的に調べつくすでしょうね」
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しばらくしてライトネス家はお取りつぶしになった。
キャロル様の予言もあたりドミナント家は当主が代わる。
王家の後押しもあり、若き女伯爵が誕生した。
「ドミナント家で継承権を持っていたのはヘレン嬢だけなのよ。家族はお家乗っ取りの容疑で全員逮捕みたいね」
「婚約は?」
「もちろん破棄よ。今じゃハンスさんもただの平民ですから」
「へえ、ところであいつらを殴って来てもいいですか?」
「ダメよ。報酬は多めに渡したでしょう」
私がキャロル様の提案を飲んだのは、解決した後ハンスたちをボコボコにする許可をもらったからなのに!
金貨の袋を渡された時、キャロル様は前言を撤回されてしまったのよ!
「アンジェ、大変だったな。フィリップの姉に目をつけられて」
今日の放課後はエドワードとの訓練だ。
私の五体にはだんだん筋肉がついてくる。
「そうですね。しかも明日もお茶に誘われて。訓練は一日おきになりそうです」
「一人での訓練は物足りないが‥切れた筋繊維を修復する時間も必要だからな」
エドワードは無駄に爽やかだ。
「エドワード、汗をおふきになって」
イブリン様がそっとタオルをさし出す。
「助かる。イブリンは優しいな!」
無自覚にそんなセリフを吐けるところがエドワードの良い所だ。
イブリン様も毎日見学に来ているから、二人の仲は順調なのだろう。
「辛かったり筋肉が衰えたりしたら、すぐオレに言えよ!」
‥筋肉は余計だと思う。
私は現在、公爵家の便利屋だ。
令嬢たちのうわさ話にそっともぐりこむ。
「殿下って素敵よね」
「アイスバーグ嬢との仲はどうなのかしら」
「キャロル様は一昨日、王宮の晩餐に招かれたそうよ」
「まあ、うらやましいわ」
「あら、わたくしは不仲だと聞いたのですが」
「アンジェ様は何かご存じ?」
「そうでしたか? キャロル様がサロンにお誘いしてくれる時は、良く殿下が一緒ですよ」
そうやって私はうわさを広める。
王家と公爵家の関係が良好なことを。
ま、それほど嘘ではないからね。
ポイント、イイね、ブクマ、ありがとうございます!
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