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異世界にTS転生したので、好きに生きたいと思います!  作者: 加藤凛羽
第1章 天を喰らう龍〈アグナリア〉
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第27話 天を喰らう龍 - I


 いったい、いつからそこにいたのだろうか。

 赤いたてがみと銀色の鱗、そして金の瞳を輝かせるその様は、まるで前世の深海魚、リュウグウノツカイを彷彿とさせる。


(いや、そうじゃなくてこの姿……つい最近、どこかで見かけたような……?)


 少なくともDFHにはあんな魔物はいなかった。

 だとしたらどこで見かけた?

 別のゲームか?

 いや、今まで別のゲームの要素をこの世界で見た記憶はない。

 だとしたらこの世界のオリジナルか?


 龍がゆっくりと尾を宙に振り、月光に照らされた鱗がキラキラと反射する。

 周囲の空気が震え、わずかに立ち上る蒸気が冷たい夜風に揺られた──次の瞬間だった。


「キュラァァァァァァァエエエエエエエ!!!!!!!!」


 甲高い咆哮とともに、その口から光輝く光線を吐き出したのは。


「〈白騎士〉!」


 グリフォンが旋回し、白騎士のタワーシールドが正面に構えられ、薄緑色の半透明で半球状の障壁が展開した。


 ゴオオオオオオオ、という低い轟音を響かせながら、障壁が光線を受け流す──が、すぐにひびが入り始めた。


「まじかよ!?」


 今の障壁は白騎士がレベル300で覚える〈対龍砲障壁〉だ。

 ドラゴン系の魔物が放つブレス系の攻撃の威力を50%カットするダメージ遮断スキル。

 このスキルはその効果に加えて白騎士自身のVIT値が計算に加えられることで、レベル600の時点で最終的には75%カットにまで性能を向上させることができる。

 それが、こんなにもあっさりと破られそうになるなんて、恐ろしい威力だ。


 グリフォンの首を足でたたいて、盾で受け流しながら光線の攻撃範囲から逃れる──と、その光線の先端はエインズワース市の上空を突き抜けて、さらに遠くの平野のど真ん中に巨大な爆発を引き起こした。


「ぐっ!?」


 爆風がここまで届き、その余韻が銀髪をわずかになびかせる。


「え、えげつねぇ!?

 いきなり何すんだあのドラゴン!?」


 幸い、エインズワース市のほうには被害があまり出ていなかったみたいだからいいが、直撃していたら今夜俺は野宿しなければいけなくなっていたに違いなかった。


 俺はうなり声をあげて二発目を準備しようとしている龍に気づくと、次当てられたら流石にまずいと先制攻撃を試みる。


「〈氷槍砲牙〉!」


 同時に10発ほど生成して、口の中めがけて音速を超えた氷の塊をぶち込んでいく──が、龍はその長い尻尾を器用に揺らめかせて全弾を弾き落とした。


「は!? 音速超えてるのに反応できんの!?」

「キュラァァァァァァァエエエエエエエ!!!!!!!!」


 直後、二度目のブレス攻撃。

 今度の射角は避けてもエインズワース市には当たらない。


 俺は一瞬だけ後方を確認すると、すぐさまグリフォンの体を重力任せに降下、そのまま滑るようにして龍の近くまで接近させた。


 きっと、音速とはいえ距離があったから弾き落とせたに違いない。

 そう考えた俺は龍の間近まで接近したところでもう一度〈氷槍砲牙〉を射出した──が、どうやらそう単純な話ではなかったらしいことが判明する。


「魔術が発動しない!?」


 一定距離まで近づいた瞬間だった。

 それまで杖の先端に浮かんでいた青白い魔法陣が、ノイズが走ったみたいにぶれたかと思えば、その直後には術式がかき消されていたのである。


「まさか、妨害持ち!?」


 一部のレイドボスには、魔術妨害という特性を持つ者がいる。

 これは文字通り、近くまで接近すると魔術の発動を阻害するという特殊効果である。


 この手の敵には妨害が及ばない遠距離からの攻撃がセオリーになってくるが……これだけデカい上に空中戦ともなると、魔術師では相性が驚くほど悪い。

 その上魔術は基本遠距離攻撃とはいえ、距離が開けば開くほど回避されやすくなるうえに威力が落ちる欠点がある。


 つまりこいつは俺にとって、そこそこに相性が悪い敵だといえるのである。


「くっ!?」


 不意に、龍が体をくねらせて尾を鞭のように撓らせながら俺たちを狙った。


「落下!」

「キュィィイイイ!!」


 指示に合わせてグリフォンが翼をたたみ、自由落下の要領で尻尾を回避する。


 ブレスを使ってくる敵は、大体接近している状態だとブレスを撃ってこない。

 しばらくはこのまま、着かず離れずの距離にいるしかないか?

 いや、そうするとこっちが攻撃できない。

 せめて、エインズワース市を背中にしないように回り込んで戦うか……!


 そう思い、グリフォンを旋回させて龍の背面に回った時だった。

 不意に、その赤いたてがみの中に見覚えのある水晶が映えているのが見えた。


「あれは!?」


 よく見れば、月光に反射して輝いているのだと思っていた鱗の部分にも、複数個所にわたって例の水晶が生えているのが確認できた──が、コボルドのものと決定的に異なる点があった。


 それは、術式が書き込まれていないという点である。


 もしかして、あの水晶はこの龍から採掘されていたのか?

 いや、だとしてもおかしい。

 こんな荒っぽい龍を、どうやって押さえつけていたというんだ?


「押さえつける?」


 その瞬間、霧がかかったようだった記憶が鮮明に蘇った。


「もしかしてこいつ、聖アグナリア大聖堂の天井画の──!?」


 ヴェッリという名前もどこかで聞いたことがあったと思ったが、そうだ、今思い出したぞ。

 前にサリエルと入ったあの大聖堂で、なんとかって物語を書いた人物と同じ名前だったんだ!


 龍の尻尾が鞭のように掠めるのを回避しながら、俺は唸り声を上げた。


 ゴトシャ教と魔族の繋がり……。

 なんとなく嫌な予感がしていたが……。


「俺のこの背中の疼きといい、たぶん何らかの関連性はありそうだよな……。

 帰ったらゴトシャ教についても調べなきゃ……なっ!」


 あと怖くて見るのを後回しにしていた自分の背中も!


 今度は少し距離をとって、杖先から黄金に輝く魔法陣を展開。

 金色の閃光弾を連射した。


 元素魔術の中で最も速い光属性魔術〈鈺閃(ぎょくせん)〉である。

 攻撃力はさほど高くないが、着弾すると爆発し、閃光によって視界を奪う暗闇の状態異常に加えて怯みの追加効果を与えられる比較的有用な魔術だ。


 相手がドラゴンならほぼほぼ効果のない魔術だが、あの龍はDFHでは見たことがないモンスターだ。

 DFHにはワイバーンを筆頭にして見た目がドラゴンなだけでドラゴンじゃない魔物もちらほらいたので、一か八かで試してみたのである。


「キュラァァァァァァァエエエエエエエ!!!!!!!!」


 顔面に直撃したのだろう。

 龍はその小さな鉤爪のある手で両目を覆いながら、狂ったように嘶いた。


 よし、今なら十分、こいつを鑑定してステータスを確認する隙ができるはず!


「鑑定!」


天を喰らう龍(アグナリア)

 種族/■■■■(■■■)

 性別/無性

 レベル/450

 能力値/HP:75,891,007/75,891,236

     MP:77,776,377/77,777,777

 保有スキル/『魔術妨害』『ブレス』『元素魔術』

 権能/『■■』


 称号/レイドボス:アグナリア火山の■■■

    ■■■■■

    信仰心を与える者』


 開いたステータスウィンドウを見て最初に感じたのは、その内容の伏字の多さだった。

 そもそも今までステータス内に伏字が見つかったことは一度しかない。


 俺に新しく追加されていたスキルツリー『異世界人』のうちのスキルの一つである。

 〈異世界言語完全習得〉と〈情報操作解析〉だけはやたらとまともそうな一方で、三つ目のそれだけは伏字で名前を隠されており、更に説明を求めて詳細を開いてみれば文字化けした文章ばかりが羅列されていた、例のあのスキルである。


 そして、この最後に記されている文言──信仰心。

 たしか、伏字スキルの詳細欄の最後にも信仰心が何だとか書かれていた気がする。


 何か関係があるのか?

 いや、無い方がおかしいだろう。


 何かが繋がりそうで繋がらないもどかしさに顔をゆがめる──が、それもこれも、全部こいつを倒した後に調べればいい。


 そろそろアグナリアにかけた暗闇と怯みの状態異常が終わる。

 俺は両頬を叩いて気合を入れなおすと、アグナリアにワンドを突きつけて宣言した。


「レイドボスを独り占めだなんてやったことはないが……いいだろう、速攻で終わらせてやる!」


次回は明後日の16時更新です。

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