今の時代でもあるのだろうか【会話のみ】
会話形式です。
今の子供は、こんなのあるんだろうか?
「なあ、母さん」
「なに?」
「俺がまだ小さい頃に、親族の集まりでもらったお年玉が沢山あっただろ?」
「…………あったかしら?」
「あっただろ。 それで大きくなるまで、私が預かりますって5000円だけ残して、全部持ってったよな?」
「……………………あったかしら?」
「……集まりがあったのは恍けてる感じだったけど、今度のはマジで忘れてるな」
「…………そうだったかしら?」
「……まあ良いや。 その時さ、俺がゴネにゴネてさ」
「ああ、そんな事もあったかしらね」
「そこは憶えてて、なんで金を預かったのだけ忘れてるんだよ……」
「まあいいじゃない、それで?」
「良くねえよ。 それでさ、母さんが預かるって証明書を書いたんだよ」
「…………???」
「ホント、なんなの。 そのご都合記憶力」
「だって、憶えていないんだから、仕方ないじゃない」
「子供としては、仕方ないで済まされたくない重要事項なんだけどなぁ」
「それでなに?」
「社会人になって荷物整理してたらその証明書が出てきたから、丁度いいし返してもらおうかなと」
「んーー? その証明書を見せて?」
「はいよ」
………………。
…………。
……。
「あーー、預かってるお金は無いわね。 諦めなさい」
「……は?」
「ここ見て、ここ」
「何言ってんだ?」
「ほら、ここ」
「………………はぁ!?」
「ここに、預かったお金の保管期間は10年で、それが過ぎたら自動的に家のお金になりますって書いてあるでしょ?」
「ふざけんな! なんでそんなの書いたよ!? あの時から10年って、中学に上がるかどうかだろ? その頃にって、完全に俺に金を返す気無かっただろ!!!」
「いえ、あったんじゃないかしらね」
「絶対それは無い!! 中学生なんてまだ子供だから、大金を持たせられないとか言って出し渋るだろっ!!」
「……………………」
「おい、こっち見ろよ!!」
「あ、そろそろ買い物に行かないと」
「おい、逃げるな!!」
特約と言うか、約款と言うか、証明書そのものを書く家庭はそうそう無いでしょうが、昔はそれで親に金を取り上げられて返してもらえず涙した子供は本当に居たモンです。