第181話・しばくでしかし!
「なあ、キューちゃん」
「あ? どないした、八っつぁん」
出合って三分、すでにウチとヴァンパイアは、あだ名で呼び合う仲になっていた。
「戦うの、やめへん?」
「言うて、ワイも魔王はんの部下やしな。そお簡単に首を縦に振れんのや」
「それはわかるけど、そこの毛玉に命令されるのってなんかムカつかね?」
ヴァンパイアはグレムリンを見下ろすと、死んだ目になりながら、ボソッと『わかるわ〜』と口にしていた。
「魔王軍ではワイと同列やのになぁ。なしてお前が指揮官やねん」
「頭のできが違うっペよ」
「ほんま、ムカつくやっちゃな~。しばくでしかし!」
と、メガネをかけていないのに、中指でクイッとジェスチャーを加えるヴァンパイア。芸が細かい。
「ええぞキューちゃん、しばいたれ!」
〔こらこら、あおってどうするのですか!〕
「なんとでも言えばいいっペ。オラは次の仕事があるから行くっぺよ」
「おま、また逃げるのかよ」
「あとは好きにすればいいっペ」
ヒョコッヒョコッと歩き去っていくグレムリン。魔王転移のための魔法陣を作りに行くのか、それともまた別の要件か。いずれにしても、放置しておくのは危険だ。
……アイツは人目がなくなると、必ずなにかをやらかしてくれるタイプなのだから。
そんなウチの考えを読み取ったのか、キティがスッと姿を消した。グレムリンをこっそりと尾行するためだ。なんとなく直感で連れてきたけど、大正解だったな。
「なんや、おもしろい術つかいよるな……」
ヴァンパイアなどの上位種アンデッド系モンスターには、”生体感知“があると聞いた。生物に対してのみ働くセンサーみたいなものだそうだ。だから当然、消えているキティの動きもバレバレなわけで……
一瞬ヤバイと思ったが、意外にもヴァンパイアは、ウチらに向かってサムズアップしてきた。口元の犬歯がキラリとまぶしい。
「毛玉って、マジで味方からも嫌われてんのか」
ウチが前にいた会社にもそんな上司がいた。たまたま営業成績がよかっただけの、人の上に立つ資質のない人。みんな不満を持っているが、陰湿な嫌がらせをされるので陰口を言われる事がないタイプ。
今思えば、グレムリンってその時の上司に似ている。……だから苦手なのかもしれない。
「ほな、こうしようか〜。ワイと戦って勝ったら戦いをやめたるわ。しらんけど」
「ちょ、自分がなにを言っているかわかってないだろ」
「わかっとるがな。戦いをやめるかどうかを戦いで決めよう言う事やで」
「くじ引きをする順番をくじ引きで決めるようなもんやないか」
「まあ、そお言うなや、八っつぁんや」
ヴァンパイアがバサっとマントをひるがえすと、その手には細身のレイピアがあった。……いつ抜刀したのだろうか?
ハッキリとは見えないが、その剣身には細かい文様が彫られ、ぼんやりと光を発している。トリスが持つランスのような、いかにも魔力が籠っていますって感じの武器だ。
「もう、結局戦うのかよ」
「あ、やっと漫才終わった?」
と、あくびをしながらエクスカリバーを取り出すアンジー。
「せっかく穏便にすませようと思ったのに~」
「無理だって」
「いやいや、結構ウチと気が合うんやで? 話だって……」
「あのね……戦いが生活の中心にある魔族と話し合いなんて無理だよ。ドライアドは稀有。精霊に近い魔族だから話が通じただけ」
「そうは言ってもなあ……」
ミノタウロスですら、ティラノと戦う事が生きがいになっているのだから、アンジーの言う事が正しいとは思う。それでも戦いを避けられるのなら避けたい。
なにより、恐竜人たちが傷つくのを見たくないんだ。
「ウチとしては、恐竜人チームと魔王チームで、サッカーとか野球で決着をつけられればって思うんやけど?」
〔わけのわからないフラグ立てないで下さい。アナタが言うと本当になりそうで不安しかありません〕
「……カバディでもええで?」
女神さんのカカト落としが、脳天にパフっと炸裂しました。
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