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第178話・エレガント スルー

「なあ、姉っち。魔法使えたのかよ」

「それはワシも思ったぞ。使えないのではなかったのか?」


 今いる恐竜たちの霊廟には、ある種の結界が張られている。

 その為、魔法の力の源である魔界とのリンクは完全に断たれ、一切の魔法行使が不可能になっていた。


 ——しかし、そんな状況で魔法を放ったメデューサ。


 つい先ほどまで『魔法が使えません。戦力外ざます』と言っていたのになぜ? と、ティラノや魔族の面々、そして英霊たちまでもがメデューサの言葉を待っていた。


「あら、わかりませんか? お二人のスキルで発生した時空の亀裂が、この霊廟と外界とを繋げているのでありんす」


 と言いながら、アクロの頭上に浮かぶ黒い穴を指差すメデューサ。


「よくわからねぇけど、さすが姉っちだぜ!」

「ふむ……そうであったか」


 ポンッと手を打つティラノとミノタウルス。理解しているかは怪しいものだが。


〔ほうほう、見事治めたようじゃの〜〕


 ギリギリの戦いを終えて疲れ果てたティラノとミノタウロスたちに、あっけらかんと他人事スタンスなダスプレトサウルスの英霊。


 どこから取りだしたのかわからないが、バリバリと噛み砕く堅焼き煎餅の音が、ティラノたちのイライラを増幅させていた。


「はあ? 元はと言えば大爺(おじじ)っちが原因だろ」

〔はてはて、そうじゃったか……?〕

「うわ、殴りてぇ〜」

 

 拳をプルプルさせるティラノ。ダスプレトサウルスは煎餅を一枚ティラノの口に押し込むと、お決まりのひと言を放った。


〔お主はか弱い年寄りをいじめるのかの?〕

「ずりぃぞ、またそれかよ……」


〔——爺い、ちと黙っとけ〕


 その場にいた全員が『また始まったか』と思ったその時、会話を遮って終わらせたのは母ティラノだった。


〔相変わらず口が悪いのう、お主は……〕

〔おい、バカ娘〕


 彼女はダスプレトサウルスのぼやきを華麗に無視(エレガント・スルー)すると、どこからか取りだした”乳白色の棒“を娘ティラノに投げ渡した。


「なんだこれ……」


 と、手の中の”それ“をまじまじと見つめるティラノ。

 木刀の(つか)のような形と大きさで、どこか懐かしさと落ち着きを感じる不思議な物体だった。


「よくわかんねぇけどヨ、なんかすげえ手に馴染むぜ」

〔当り前さね。アタシの骨をアンタの手に合わせて削りだしたんだからさ〕

「え、母ちゃんの……骨⁉」

〔あ? なんだい、不満があるなら言ってみろ〕

「いや、不満とかじゃなくて……なんで骨なんだ?」

闘気(オーラ)を込めてみな。それですべてがわかる〕

「わかるってなにがだよ~」

〔はあ……?〕

 

 またもや、木刀の柄で娘の脇腹を小突く母ティラノ。さっきより力がこもっているのは誰の目にも明らかだった。


「ちょ、母ちゃん痛いってば~」

〔やればわかるっつってんだろ、バカ娘!〕

「もう、マジかよ……」


 ティラノはしぶしぶと、母ティラノに言われるがまま闘気(オーラ)を込め始めた。すると……


「え……すげえ」


 骨製の柄の先からボワッと青白い光が伸び、そして、刀身を形成していった。


 ティラノはその時の印象を『今まで使っていた木刀くらいの長さで、それでいて重さはまったく感じなかった』と言っていた。

 それは多分、闘気(オーラ)をそのまま刀身として具現化しているからだと思う。


 そもそもの話として、英霊の骨は”とんでもない情報量と質量が封じられている“エネルギーの塊みたいなものだ。


 そこに闘気(オーラ)を注ぎ込めば、圧倒的な力を持つ武器となる。奇しくもこれは、バーサーク化したアクロが証明していた。


 ……ま、ウチには、やはりどう考えてもビームサーベルにしか思えなかったけど。


〔込めた闘気(オーラ)によって強さは変わる。お前もアタシの娘なら四の五の言わずに使いこなしてみせな〕

「母ちゃん……」


 ティラノは母親の愛情にうれし涙を浮かべ、母ティラノに勢いをつけて抱きついた。



 ……と思ったらアッサリとかわされて尻にミドルキックを喰らっていた。



〔甘えんじゃないよ、このバカ娘!〕

「ふざけんなよ、ここは感動のシーンだろ。このくそバ……」


 ——バキッ!!!


〔あ? 今なにを言おうとしやがった〕


 言葉が終わる前に、母ティラノの木刀が火を噴いた! 


 容赦のない彼女の生き方(スタンス)には、いろんな意味で涙目の娘ティラノであった。



〔ふう、さてと……〕


 カルノタウルスはティラノ母娘(おやこ)の会話が終わったのを確認すると、メデューサとウェアウルフに視線を向けた。


〔お主らにも褒美をとらす。これは、ここにいる英霊の総意だ。もちろん、我らに可能な範囲での話だが〕

「わっちらは、主さんたちとは敵の立場でありんすが……」

〔なぁに、かまわんよ。楽しませてもらった礼と思うがいい。それに、真の敵は他におるのだろうからな〕

「真の、敵……?」


 メデューサは首をかしげ、その言葉を素直に受け取ってよいものかと戸惑いを見せた。


 カルノタウルスはそんな彼女の心情に配慮したのだろう。先に『お主はどうだ?』とウェアウルフへ質問を投げた。


「お、俺ば……」

〔うむ、望みを申してみよ〕

「メ……」

〔メ……?〕



「……メ、メデューサと結婚ざせでぐれ!」



 ………………



〔……あ~、なんだ、その~……うん、頑張れ〕

「うむ、頑張る!」

〔我ら英霊は、お主を応援しているぞ!〕


 と、サムズアップするカルノタウロス。


「おう!!」


 ……それでいいのかウェアウルフ。



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