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第169話・飼い主

〔ほう、お主には作戦があるのじゃな?〕


 ダスプレトサウルスは値踏みするようにメデューサに問いかける。


「もちろんざますわ」


 メデューサは鼻で笑いながらダスプレトサウルスに答えた。


「とりあえず、このエリアの結界をといてくださいまし」

〔無理じゃよ〕

「あら、なぜざますの?」

〔ここの結界はのう、何千万年もの時の中で霊廟を守るように自然発生したものじゃ。言わば大自然の歴史そのものじゃよ〕


 この言葉を受けたメデューサえてあえてなにも言わず、相槌すら打たずにダスプレトサウルスをじっと見つめた。


 ——二人の間にあるのは沈黙、その静寂はそれぞれの焦燥感を刺激しプレッシャーとなって襲いかかってくる。


 こういう時、精神的に相手を上回った方が場を制することが多い。無言の圧が侵食し、先に耐えられなくなった方は、失言を引きだされてしまうからだ。


 そしてこの場において、精神的に勝ったのはメデューサだった。


 何千万年もの知識があるダスプレトサウルスでも、より現代文明に近い異世界で揉まれた者のメンタルマネージメント能力には叶わなかったとみえる。


 沈黙と視線に耐え切れなくなったダスプレトサウルスは、脳味噌をフル回転させながら“自分を大きく見せようと”言葉を絞り出した。


〔じゃからのぉ……お~……こんな些事で何千万もの英霊の想いを壊すわけにはいかんのじゃよ〕


 一瞬、ニヤリと口角を上げるメデューサ。欲しかった言葉を手に入れたのだろう。


言質(げんち)頂きました」

〔なんじゃと?〕

「それではダスプレトさん、英霊のみなさん、アクロさんを鎮めるためにご協力をお願いします」

〔なにを言うておる。お主たちの問題はお主たちで解決いたせ。当然の話であろう?〕

「あら、わっちどもで解決できなかった場合、この霊廟は破壊しつくされるざます。()()()()()()何千万もの英霊の想いを壊すわけにはいかないのではありませんこと?」


 メデューサは、返す言葉を失ったダスプレトサウルスを追い詰めるように、じ〜っと視線で刺し続けた。


〔くっくっく……ダスプレの、お主の負けだ。なんとも気転が利く(むすめ)ではないか〕


 そこに割って入るカルノタウルス。彼は二人のやり取りを楽しんでいたが、段々と追い詰められていくダスプレトサウルスをみて、助け舟をださざるを得なかったようだ。


「なにも戦ってくれとは言いませんわ。ひとつだけお手伝いを願いしたいのざます」 

〔了解した。じいさんの代わりに、我輩の方で責任をもって対処いたそう〕


 後輩に助けられ拗ねているダスプレトサウルスの背中を、カルノタウルスは豪快に笑いながらバンバンと叩いていた。


「そのあとはのんびりと、足踏みしながら観ていてくださいまし」


 恐竜の遺骨が破壊されても『単なる形骸じゃ』と平然としていた彼等も、霊廟そのものがなくなるのは避けたいのだろう。

 ここは、幾多の積み重ねた歴史と、あとに続く者たちへの遺産なのだから。







 アクロが放つ漆黒のレーザービームは、その一発一発がレックス・ブレードにも匹敵する闘気(オーラ)を秘めていた。


 転がっている石に触った瞬間、そこには恐竜人(ライズ)たちが放つスキルと同等の闘気(オーラ)が注入され、一撃必殺とも言えるだけのパワーを有するようになる。


 更には時おり混ざる英霊たちの遺骨が厄介だ。

 元々霊力の塊のような骨片にアクロの闘気(オーラ)が上乗せされて放たれるのだから、その威力は小石と段違い。


 ……迂闊に受けようものならミンチになる覚悟がいるだろう。


 身体能力を極限に高めるバーサークも脅威だが、アクロの真の力はこの“物質の兵器化”の方だと思う。


 純粋な戦闘力で比較したら、間違いなく彼女が最強と言える。……敵味方の見境が無くなる()()()()()()()()が無ければの話だけど。


「おい犬っち、大丈夫か?」


 ウェアウルフは、ティラノみたいにジュラたまブーストができる訳でもなく、ミノタウロスみたいに解放(ドラゴニック・バース)をしているのでもない。


 そもそも、(はな)から有利な面はひとつもなかった。徐々に体力は削られ、つやつやだった毛並みは、今や見る影もなくボサボサだ。


「誰に言っでんだ。ディラノごぞボロボロじゃないが」

「そんな事ねぇだろ、犬っちほどじゃないぞ!」 


 ……実際はティラノもウェアウルフも同じくらいヘロヘロだった。それでも虚勢を張る二人に、ミノタウロスは声をかけながらウェアウルフの前にでた。


「二人とも、少し息をいれろ」


 ひるがえる白銀の大戦斧を見ながら、リザードマンは相方に呼応するように、福井さんの煌弓(こうきゅう)に矢を番えて牽制の構えを見せる。


「なめるな、俺ばまだまだやれる」

「頭を冷やせ、ウェアウルフ。メデューサは今魔法が使えないのだぞ」

「そうでやんす。ウルフはんが守らなかったら誰が守るでやんすか?」


 リザードマンの言葉を聞いたウェアウルフは、目の前の強敵にだけ向けていた自分の意識を引き戻されて息を飲んでいた。


 チラリとメデューサの方を見ると剣を降ろし、溜息と共に張りつめていた気合を吐き出す。


「ずまん、頼むぞ」


 彼女を理由にされたら引かぬわけにはいかない。最愛のメデューサの事を忘れていた自分が恥ずかしくなったのだろうか、そそくさと彼女の横に下がるウェアウルフ。


 ……その話を聞いた時、ウチは飼い主に飛びつくワンコを想像していた。


 飼い主メデューサはワンコの頭を撫でながら、ミノタウロスたち二人の位置取りを確認した。直後、カルノタウルスに視線を送る。これは作戦開始を意味するアイコンタクトだ。



「さあ、用意が整いましたわ。ティラノさん、ここからが貴女の出番ざます」


ご覧いただきありがとうございます。


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