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第14話・プチのポケット

 とりあえず、だ。空から降ってくるワニというのを見てみたい。


 なにより、コッソリ陸地に上がって襲ってくるなんて小癪なヤツ……ウチは大好きだぞ。


「めちゃめちゃ気になるっしょ? ね? ね?」

「な、なんですかそのテンションは……こっちを見ないでくださいぃ~」

「え~だって、この中で飛べるのってさ~」

「む、無理ですぅ~。空飛ぶワニとか無理ですぅ~」


 ほんっと、この()は怖がりだねぇ。ま、そこが可愛かったりするんだけど。


「んじゃ、みんなで行こうか!」

「結局そうなるんじゃねぇか」

「あ~でも……(キリッ)」

「んだよ、まだなんかあんのかァ?」

「いや、向こうから来ただすよ?(キリッ)」



 ――まさか、あれは。



 筋骨隆々の体躯に、身長よりも巨大な戦斧。そして頭部は……牛。どう見てもファンタジー物語にでてくるミノタウロスだ。


 しかし、違和感と言うのか、イメージしていたミノタウロスとはちょっと違う。


 “粗暴”なイメージのあるモンスターだったけど、目の前の彼はビシッと黒のタキシードを着こんだ紳士的牛男であった。

 分厚い胸板に太い首、特に二の腕や太ももは筋肉の盛り上がりがハッキリと見える。


「やばい、ツッコミどころがわからん……」


 そしてもう一人はリザードマン、『落ちて来たワニ』は彼の事か。


 ……まあ、トカゲだけど。


 派手なオレンジ色のチュニックにハードレザーの胸当てという軽装スタイル。背中に見えるのは弓と矢、遠距離支援が得意なのかもしれない。……そして、何故か麦わら帽子。


「二人してツッコミどころが行方不明だわ……」


 まあ、それはさておき。彼等はどう考えてもこの時代に生きる者ではない。


「つまり……魔王軍、だよな」

〔間違いありませんわ。魔王軍の先遣隊、威力偵察((注))と言った所でしょう〕


「なあなあ、あいつらつえーのか?」


 ティラノは木刀を肩に乗せ、左手で髪をかき上げた。


「多分……」

「よっしゃ、俺様にまかせとけ!」


 こんな時にめちゃくちゃいい笑顔するじゃないか。いや、こんな時だからこそ、かな。


「でも相手二人だしな。ここはやはりプチちゃんが~」

「無理ですぅ~」

「なにか武器持ってない?」

「武器……ですか? ……どうでしょ」


 と、ポケットに手を突っ込むプチ。……やはり戦闘はむりっぽいか。キティもパワーファイターって感じじゃないし、闘うのはきつそうかな。


「って事はアレか、ウチがやるしかないのか? とうとうウチの秘められた力がここで明かされるのか⁉」

〔八白亜紀、戦闘力ミジンコのあなたにそのような隠し要素はないと思いますが?〕

「なんか、さらっと酷いこと言いやがりますのね」


 ……ウチのハートは木端ミジンコやで。


「あ、ありました、マスターさん。ポケットに……」

「お? 見せて見せて」


 ポケットに入る武器ってなんだろ? メリケンサックとか撒菱(まきびし)くらいのもんじゃ…… 


「――ってええええええええ???」


 プチのポケットからでて来たピンク色の物体。これは……ヤバイなんてレベルじゃない。 


「ちょっとプチさん、それがなにかご存知で?」

「なんでしょう? 変わった石ですねぇ……ぶつけたら痛そうです」


 といいながらパシパシ叩いている。怖いっす。知らないって怖いっす。


「え~~っとね、そこの丸い穴に指入れて……そうそう。そしたら引っ張る」


 ――ピンッと軽い音を立てて、“変わった石”から丸い穴がはずれた。


「でもって……投げろ~!!」

「は、はいぃ~~~!!」


 力なくひょろひょろと山なりに飛んでいく()()()()()()()!!


 ……なんて恐ろしいものを持っているのよ、この娘は。


 あらぬ方向に飛んで行ってしまった手榴弾は、岩に当って跳ね返り、そのまま木々の間に転がって行った。


 低く籠った『ズドンッ』と地響きがして、爆煙とともに数本の木々が倒れる。


 その場にいた敵も味方も呆気(あっけ)に取られていた。

 当たり前だけど、白亜紀の生き物も異世界から来た魔王軍も、手榴弾なんて物は知りもしないだから。


「ウチだってネット動画でしか観たことないで……」

「あ、あのう……マスターさん」

「ん?」

「ポケットからどんどん出てきます」


 と言いながら、あふれ出る手榴弾を両手で抱えるプチ。


「ちょ、しまって、ヤバイからしまって!」

「は、はい……」


 これって、空飛びながら敵軍に撒き散らしたら最強なんじゃ? まあ、怖がってやってくれるかどうかわからないけど。


 それにしても、可愛らしくピンク色しているけど、中身が凶悪な事には変わりがないんだよな。


 そして今の爆発には、魔王軍の二人も動揺していた。初めて見る現象、それでいて破壊力がある。


「ミノはん、今のはなんでヤンスか……?」

「うむ、我らの知らない魔法であるか?」

「あそこにいる獣人がやったのでヤンスかね」


 リザードマンが口にした獣人とはもちろんウチたちの事だ。猫人間に猫幼女に恐竜少女、はたから見ればなにひとつ間違っていない。


「あの者に力を感じる。リザード、手を出すなよ」


 ミノタウロスは辺りを見渡すと大戦斧を振り上げ、ティラノに向って構えた。


「へっ、俺様に狙いを付けるとはいい度胸じゃねぇか。いいぜ、相手してやるよ!」


 ティラノとミノタウロスは視線をぶつけ合い、お互いにニヤリと笑って見せる。


「あ~これは……バトルマニア同士ってやつか」


 闘い続けて決着がつかなくて、最後夕日をバックに『お前、なかなかやるじゃねぇか』『お前こそ!』って握手するやつ。 



「……こうなると、見ているしかないんだよな」

(注)威力偵察

 軍事作戦における情報収集の手段の一つ。敵方の勢力や装備などを把握するために、実際に敵と交戦してみる事。


ご覧いただきありがとうございます。


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表紙及び作中イラストはNovel AIで生成後、加筆修正して仕上げており、著作権は作者に帰属しています。


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