第146話・単純ざます。
〔おお、これは香しき乙女。なんとも|イノッツェン~~~ズァ《(純真無垢)》ですね!〕
か細くささやくようなアクロの声に反応するキピオ。どうやら女性の声はハッキリと聴きとる事ができるらしい。
アクロは溜息をひとつつくと、キピオを完全スルーしてメデューサに話しかけた。
「わっち姉さん、氷使えとうと?」
そう言いながらアクロ自身はその場を動かずにメデューサを手招きした。
「氷魔法でありんすか? もちろん使えるざんす」
近接アタッカー勢の機動力がそがれている現状を見て、足場を固めるという提案なのだろうとメデューサは思ったのかもしれない。
「でもこの広い面積を凍らせるのは無理ざます。それに足場を作っても滑ってしまっては……」
「そんなにいらんたい。ちょいと耳を貸すっちゃね」
「お? 作戦会議か?」
と、近寄ろうとするティラノに“ビシッ”と右手の平を突きだして制止させるアクロ。
「ナイスなティラノ姉さんは赤い変態をおいたくっとね」
「お、おう……ナイス? おいたく?」
……それでも、なんとなく雰囲気は伝わっているティラノ。
「それから、カッコイイお兄さんと素敵なお兄さんとイカすお兄さんも赤いばかちんをちょろまかしとき~」
「カッコイイ……ってワシか?」
「じゃ、オイラは素敵でヤンスね」
「ふむ、イガス兄ざんも悪ぐないな」
彼等がチョロいということもあるが、どうやらアクロは人を誘導するのが上手いようだ。
言葉巧みに相手が喜ぶ形容詞を適当にくっつけてよい気分にさせ、結果、静かな時間を得ようという作戦なのだろう。
気分よく、バシャバシャと水飛沫を上げながらキピオを追いかける四人。
「あらあら、単純ざますわね……」
♢
「これでどげんね?」
「なるほど、おもしろい作戦でありんすな」
メデューサは動き回るキピオの足元を見ながら、湿気で広がった髪の毛を整えてた。
「じゃ、あとはめちゃ美しいわっち姉さんにまかせるたい」
と言うとアクロはその場に腰を下ろし、気怠そうに岩にもたれかかった。
「まあ、美しいだなんて本当の事を……」
メデューサはめちゃくちゃ上機嫌で魔術用の杖を構え、顔がほころびそうになるのを必死で我慢しながら声を張り上げた。
「ダスプレトさん、聞こえているのでしょう?」
〔なに用じゃ〕
「先ほど主さんは『どんな手を使っても』とおっせえましたが?」
〔ああ、それがどうしたと言うのじゃ〕
「その言葉に二言はござりんせんね?」
〔あたりまえじゃ、しつこいぞ!〕
その時メデューサの口元がニヤリと笑ったのを、ティラノは見逃さなかった。
「お、なにかイイ手があんのか?」
「もちろんです。あの余裕ぶっこいたニヤケ面を、二度と笑えなくしてやりますわ!」
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表紙及び作中イラストはNovel AIで生成後、加筆修正して仕上げており、著作権は作者に帰属しています。