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第142話・……砂漠?

「おおおおおおお!!」


 ティラノは突然、滝つぼの先に見える魔王軍の二人に向かって走りだした。


 ……雄叫びを上げ、『発見して下さい』と言わんばかりに。


「ティラノさん、いったいなにを……」

「騒ぐな、バカがお前は!」


 メデューサもウェアウルフも突然の行動に面食らった。

 武器もなしに、それも大声を張り上げながら魔王軍に突っ込んで行くなんて尋常ではないのだから。


 ……しかしティラノはそんな事にはお構いなく、水飛沫(しぶき)を上げながら浅瀬を突っ切って走った。




 ――そして、叫ぶ!




()()()()! ()()()()()()


 その声、その剣幕に気がつき振り返る魔王軍の二人。


「おお!? ティラノではないか、なぜこのような場所に……」

「それは俺様のセリフだっての!」

「なんとも奇遇でヤンスね」


 経緯はわからない。だが、どういう訳かそこにはミノタウロスとリザードマンが立っていた。


 懐かしい顔ぶれ、ティラノが初代(はつしろ)新生(ねお)にライズされた時以来だ。


 そして、久々に再会した強敵(とも)に駆け寄りハイタッチをする!!


 ……はずだった。 


 しかし、突然ミノタウロスは得物である大斧を構え、同時にリザードマンも弓に矢を(つが)えた。


 冗談で武器を構えたのでないことは目を見ればわかる。


 だがティラノには、どうして()()()武器が向けられたのかわからない。


 疑問を持つよりも先に、本能的に足を止めるティラノ。丁度ミノタウロスたちとメデューサたちの中間辺りだ。


「やるぞ、メデューサ」


 その様子を見て不穏な空気を感じたウェアウルフは、大剣をスラッと抜くとミノタウロスに向かって構えた。


「丸腰ですからね。怪我させるわけにはいかないざます!」


 直後、魔法詠唱に入るメデューサ。


「やはりそうくるのか」


 大斧を頭上で振り回し、足元に叩きつけるミノタウロス。

 “ガキンッ”と金属音を響かせて、硬い岩に刃が食い込む。これは武器を構えたウェアウルフへ対する牽制だ。


「え? おい、お前らいったいなにを……」


 久々の再会なのに、どこか様子がおかしいミノタウロスとリザードマン。もちろんティラノには思い当たる節がない。


 そんな戸惑う彼女を蚊帳の外に置き、真剣な表情で耳打ちを始める二人。


(ミノはん、どう見るでヤンスか?)

(うむ、いまだ操られているのか、それとも……)

(裏切った可能性はないと信じたいでヤンスね)

(しかし、あのティラノは以前の状態、いやそれ以上に力を感じる)

(ならば、騙されている可能性も考えなければならないでヤンス)



「——そこをどいてくださいまし!」 



 その声と共に、メデューサの魔法が撃ちだされた。

 水面(みなも)を波立たせ水滴を巻き込みながら逆巻く風が、ミノタウロスたちに向かって飛ぶ。


 ミノタウロスは咄嗟に手首を返し、振りかぶった斧の刃を横にして振り下ろした。

 そこから発した風撃とメデューサの風魔法が、ティラノのすぐ横でぶつかり合い、爆発にも似た衝撃を発生させて水を巻きあげた。


「お~い……なんだよこれ」


 そして……頭から水の塊を被ってしまったティラノ。


 全身、濡れネズ……濡れ恐竜だ。


「引いてくれそうにありませんわね」

「仕方がない、本気でやるが」


 すぐさま次の詠唱に入るメデューサ。それを合図にウェアウルフは低く屈み、大剣を肩に乗せて詠唱完了を待つ。


 そして、メデューサの風魔法が脚に付与された瞬間、ウェアウルフは飛びだした。溜め切っていた力を一気に開放したその瞬発力は、風魔法の加護もあって水の上をすべるように突き進む。


 一方のリザードマンは、ウェアウルフが走り込む軌道を狙い矢を放つ。その矢は正確に“ウェアウルフの次の一歩の着地点”を狙って打ち込まれ、歩幅を強制的に変えさせて突進力を削いでいた。


 ウェアウルフが動くと同時に走りだしていたのはミノタウロス。そして二人は、ティラノの真横で激突した。鈍い金属音を響かせながら大斧と大剣がぶつかり、二合三合と斬り結ぶ。


「なかなかやるではないか、犬のくせに」

「言うでくれだな、トロい牛が!」


 鍔迫り合い、睨み合い、罵り合う牛と犬。 


「……ってか、お前らなんで戦ってんだよ。味方同士でさ」


 しかし、戦闘に集中する彼らの耳に、ティラノの声は届いていない。


「お~い……」


 この状況のど真ん中に居ながらも、完全に置いて行かれているティラノ。訳も分からずに虚しさと寂しさが去来したようだ。


 きっと、ラミアとメデューサの”人質会話“に置いて行かれた、あの時のウチと同じような感覚なのだろう。


「これが亜紀っちの記憶にある“東京砂漠”ってやつなのか……?」

 

 中央で押し合い動けなくなっているミノタウロスとウェアウルフの元に、それぞれリザードマンとメデューサが駆け寄ってくる。


「妹の為にも手だしはさせません!」

 ——走りながら呪文詠唱を終え、魔法を撃ちだそうとするメデューサ。


「ふんっ、言うにこと欠いて誘拐犯どもが!」

 ——肩の筋肉が盛り上がり、大剣ごと押しつぶそうとするミノタウロス。


「キザマらにはヤラぜねえぞ」

 ——ウェアウルフの大剣にまとわりついている禍々しいオーラが増大し始める。


「それを盗人猛々しいというでヤンスよ」

 ——必中圏内に敵を捉え、リザードマンは狙いを定めた。



「ティラノさんを……」

「ティラノを……」



 ……その瞬間(とき)、魔王軍四人の声が重なった。



「「「「魔王軍の手には渡さない!」」」」



「……」



「……あの、ミノさん。今、なんて言ったざます?」

「メデューサ、お主ら、ティラノを殺そうとしていたのではないのか?」

「まさがだな、牛。オレだちばディラノの護衛を頼まれただけだ」

「あっしらは白亜紀(ここ)に来た時からティラノのダチでヤンスよ」



 盛大な誤解から始まった、微妙でいたたまれない空気。

 


 ドドドドドドドド………………



 そこには、滝の音だけが響いていた。



 四人が四人ともバツが悪そうに、どうしてよいかわからずに言葉を失っていた。


 そんな中、口を開くティラノ。完全に蚊帳の外にいたから場の空気なんて関係がない。


「なあ……」


 四人の視線がびしょ濡れのティラノに向く。



「……東京砂漠って、なんだ?」

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表紙及び作中イラストはNovel AIで生成後、加筆修正して仕上げており、著作権は作者に帰属しています。


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