第106話・姉ちゃん再び……
「あら、メデューサお姉様とワンちゃんではありませんか!」
久しぶりの姉妹再会は、ラミアの“標準語”で始まった。
「ほんざんすか……まさか、生きていたなんて」
「うむ、ラミアにまぢがいない。」
「だから、ウチは最初からず~~~っとそう言ってんじゃん」
♢
メデューサがしっぽの家に来た。それも朝早くに、だ。
罠を警戒してなのか、木陰からじ~~~っと観ているだけだったけど、あまりにもバレバレすぎて微笑ましいと言うかなんと言うか、むしろ不審者だった。
でも、襲うつもりがないのはわかっていた。それなら寝込みを襲うはずだし、なによりラミアの姿を確認している以上は、手をだして来ないって確信があった。
だからウチは“いつでてくるかな?”って思いながら【おざら】を作っていたんだけど……。
そしたら太陽が真上に昇っちゃったから仕方なく『お昼、ご一緒にいかがですの?』とタルボに声をかけてもらったんだ。
「でも、話し方が変ざますわ」
「怪じいな。なにが悪いもん食っだのか?」
普通に会話するだけで偽物認定されるとか、ラミアって、魔王軍ではどんだけギャルキャラだったのよ。
「せっかく再会したとこ悪いんだけどさ、ちょっと話聞かせてもらっていいかな?」
アンジーの声を聞いた瞬間、メデューサの顔に緊張が走る。
「な、なんざんす……」
「あら、お姉様、なぜそんなに緊張しているのです?」
「ラミア、なにを……。その方が誰かわかっているざますか?」
「誰って、ジュラぴはジュラぴだよ?」
「だよね~」
ハイタッチするラミアとアンジー。“ぱんっ”と響く音で、メデューサの緊張がより一層増していた。
アンジーが魔王軍を“根こそぎ壊滅蹂躙殲滅撲殺全滅”させたのはウェアウルフが魔王軍に入る前の話らしい。
もしかしたらラミアも魔王軍に入ったのは最近で、アンジーに対する先入観がないのかもしれない。
「ジュ、ジュラぴだなんて失礼な言い方を……」
「ああ、ミア姉緊張しないでええよ。アンジーはウチの命令がなければ戦わないから」
「命令って、“あくとすぐぼあ”さんは、その……」
「ああ、ドラゲロ・アンジーはウチの下僕やで」
アンジーがジト目で見てくる。
言いたいことはわかるけど、“悪名”をウチに預けたのは他でもない下僕本人。好き勝手に使わせて貰うぞ。
「あと、あくとすぐぼあは忘れて。ウチが泣きそうだわ……」
「お姉様大丈夫ですよ。ジュラぴも亜紀ぴも弱酸性だから」
恐怖の絶対王者、ドラゲロ・アンジーを、そしてその“主”であるウチを『優しい』と言い切るラミア。
……きっと、メデューサは心中穏やかじゃないだろうな。
「だからまあ、昼飯でも食べながら落ち着いて話そうよ」
「あ、これ、お二人の分の味噌ツユっス。熱いから注意っスよ」
メデューサたちに声をかけたのは、つい先日“圧倒的な力を披露した”ルカ。横顔を見た瞬間“ビクッ”となるウェアウルフ。
「バルログ、加減するニャ。焦がしたら脳天チョップの刑ニャ!」
「ヒョ、やめテくだサい~」
そして鬼強いはずのバルログが、小さな猫幼女を敬い笑いながら会話をしている。
さすがにこの状況は理解できないだろうな。ウチも慣れるまで時間がかかったし。
「それで……聞きたい事と言うのはなんでござりんす?」
「君らもバルログもさ、ラミアが死んだと思い込んでいたみたいだけど……」
鋭い目つきで射貫くようにメデューサを視るアンジー。腕を組んだまま微動だにせず、圧をかける。
「それ、報告したの誰?」
「あ、それウチも気になってた。どう考えても話が噛み合わないんだよね」
「ほ、報告は先遣隊から入ったとだけ。内容はグレムリンから伝達されたざますわ」
「つまりそのグレムリンってのがミア姉たちみんなを騙しているのか、もしくは……」
「報告した誰かが嘘をついているのか。だね」
アンジーにも“誰が嘘をついているか”まではわからないみたいだ。
でも、犯人は絞られてきた。ウチとしては“その悪役”を捕まえて『魔王軍は騙されてる』って体で対話できればと思うんだけど。
「あ、あとウチからも二人に質問なんだけどさ」
「なん……でしょう」
うわ、ウチまでめっちゃ怖がられている。アンジー、そろそろ睨むの止めたって。圧かけんといて。
「グレムリンって、アレなに?」
「なにど言われでも……アレば、アレでじがない」
「アレでも幹部ざますので……」
「いや、アレがさ。アンジーは“つぶれた肉まん”って言っていたけど、ウチが遭遇したのは毛玉だったんだ」
ティラノたちを追いかけている時にすれ違ったあの毛玉が、まさか幹部の毛玉だったとは思いもよらず。
「あの時、キティちゃんが出合い頭に“レックス・ヴォルテックス”ぶち込んだんだけど、当たらずにすり抜けたんだよね」
「挨拶代わりにレックス・スキルぶち込んだんスか。キティさすがっス!」
「ふっ……(キリッ)」
「ルカちゃん、そこは感心するところじゃないから。キティちゃんもアンジーの真似してアゴチョキしないの!」
……むしろ焦ったよウチは。確かに怪しい毛玉が走ってくるとは思ったけどさ。
「八白さん、多分それ幻体ってやつだと思う」
「つまり本体は別にいるってこと?」
「うん。問題は、本体がどこにいるか、だね」
これを聞いた時、最初は『本体の居場所ってそんなに重要なのかな?』と思いもしたけど、アンジーの考えは理にかなったものだった。
本体が白亜紀に来て幻体を操作しているのか、それとも異世界にあって遠隔で操作できるのか。
それによって相手の力を量ったり、思惑を考察することも可能になる。
……ま、その辺りの考察はアンジーに丸投げだけど。
「私も毛玉になる前の顏は見たことないな~」
「ミアぴもグレムリン本体を知らなかったんだね」
やっぱりウェアウルフと同じく魔王軍に入って日が浅いのか。と、思っていたらメデューサから衝撃のひと言。
「だってラミアは、最近入ったばかりの学生バイトざますから」
……なんですと⁉
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表紙及び作中イラストはNovel AIで生成後、加筆修正して仕上げており、著作権は作者に帰属しています。