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第7話  陰陽師講座の講師

 「九十九(つくも)様、なんでこちらにいらっしゃるんですか!?」

いきなり現れたオレに、さすがの琵琶(びわ)も取り乱している。


「え?まぁ話すと長くなるんだけどぉ、実は………」

「全部話すんですね……」

と、琵琶(びわ)に少し呆れられた。 





 遡ること数分前。


 ──シュタッ


よし、かっこよく着地できたぞっ!


 オレは協会の医務室に運び込まれた陰陽師が討伐に向かっていたアヤカシの元へ行った。

今回の現場は、森の中。

とある山の中で、変な噂が流行っている………という話は聞いたことがあったが、そんなにひどくボロボロになるってことは、結構強いアヤカシということか?


 そんなことを考えながら森を散策する……なんてことはしない。

面倒じゃん。



 え〜っと、陰陽師には“家系能力”ってオレが呼んでいるものがある。家によっては、“相伝能力”だの、“家術”だのって呼んでいるところもあるが、まぁつまりは、家に受け継がれている能力だな。


平野(ひらの)家は霊力を音に変換する家系能力を持ってる家なんだな。

琵琶(びわ)琵琶(びわ)を使うし、(こと)(こと)を使う………予定でした。(なんで過去形かはまぁ………察してくれ。)

琵琶(びわ)(こと)のお兄さんは、なんかわかんないけど、笛を使っているはずだ、確か。


 オレの家系は陰陽師の家系じゃないけど、先祖に数人陰陽師がいて、その能力が全部オレに来たわけだ。

いわゆる、先祖返りってやつ。


だから色々同居してるわけだな、能力が。


 んでその一つに、大地を媒介にして五感を広げることができる能力がある。(意味わかるか?)

オレはこういう土壇場では、その能力を使ってアヤカシを発見するんだ。


 オレはゆっくりとしゃがみこんで片膝をつき、両手を地面につけた。

目を閉じて、能力を発動。

視覚拡張(しかくかくちょう) 範囲調節【(ひのえ)


 その瞬間、遠くのどこかの景色が脳内に流れ込んできた。

オレはその全てを識別する。


違う。

違う。


………これも、違う。


これは……ちがわない、か。


 ここから何キロだ?

え〜っと…二キロだな、全然余裕だ。


 オレの能力その二!

触覚拡張(しょっかくかくちょう) 範囲調節 【(みずのえ)


 これは、オレの触覚を視覚で見えている範囲まで拡張できるという能力だ。


 神経を集中させ、さっきのアヤカシの元に触覚がたどり着いたことを確認すると、ゆっくりと言った。


霊力操術(れいりょくそうじゅつ) 【(かのと)】 蓮華(れんげ)

その途端、視覚からアヤカシが消えた。


 おっし、任務完了。


あ、蓮華(れんげ)っつーのは、技名みたいなので、何もないところから急に霊力で作られた針みたいなのが登場して、アヤカシが刺された姿が最後花みたいな形になるっていう技だな。


 実際見るのは、結構きついんだ。















 「ってな感じで。」

オレがそう説明すると、琵琶(びわ)はため息をついて、

「それじゃあ、この者の治療お願いします。」

「オレ、今アヤカシ討伐してきたばっかりなんだけど?」

オレは琵琶(びわ)に尋ねるも、完全に無視される。


「はいはい、やりますよー。やりゃあいいんでしょ、やりゃあ。」

オレはそう大声で言いながら、ベッドの上の陰陽師の体に手を触れた。


 お〜、たまげた。

これ、内部の毒が原因でここまでなってんのか。


そんじゃ、さっき祓ったアヤカシ相当なやつだったんだな。


 「ほんじゃいっきまーす。」

オレは元気よく言うと、目を閉じた。


全神経を集中させる。

治すのは意外と繊細な作業だからな、うん。


 この治癒術(ちゆじゅつ)のイメージは、オレが治すと言うより、霊力が治してくれる、ってな感じだ。


治癒術(ちゆじゅつ)専門の治癒術師(ちゆじゅつし)はすごく貴重なんだ。

滅多にいない。

だから、しょっちゅうオレと琵琶(びわ)が駆り出されているわけだな。


あれ?

秋穂(あきほ)さんも使えるんじゃなかったっけ?


ま、いっか。


 一分ほど陰陽師の体に霊力を送り続けていると、

「ぷはぁ!」

と言う声が聞こえた。


よし、任務完了。


オレはそう思って立ち上がった。


「つ、九十九(つくも)様っ!?」

陰陽師がオレを見てびっくりしている。


「そうでーす。ニノ前九十九(にのまえつくも)でーす。」

オレはニヤリと笑って言った。


「もしや九十九(つくも)様がわたくしの治療を……」

「うん、まぁね。」

こいつ、男なのに一人称“わたくし”って、どんないい家の生まれなんだよ。


 「ありがとうございます。九十九(つくも)様。」

よくよく顔を見ると、三十代後半から四十代前半くらい、って感じだな。


陰陽師界、結構に人手不足だからなぁ。


 「あら?もしかしてあなた、陰陽師講座の講師さんではありませんか?」

琵琶(びわ)が驚いた声をあげた。


「はい。陰陽師講座で講師をさせてもらっています、石野(いしの)と申します。」

その陰陽師………石野(いしの)さんは、深々と頭を下げた。


琵琶(びわ)、気づくの遅くない?」

オレが茶化すと、琵琶(びわ)は真面目な顔をして、


「この任務につく陰陽師を選んだのは私ではありません。悩んでいたら兄が勝手に決めたんです。」

「なるほどね。」

だからと言って会長が把握していないのは問題しかないとオレは思うけど。


 「でも、陰陽師講座の講師さんが死んだらダメだね、困るよ、みんな。」

「はい……本当に助かりました。ありがとうございます、九十九(つくも)様。」

なんども頭を下げられて、なんだかこっちが申し訳なくなってきた。


 あ、そうだ。

陰陽師講座っていうのは、陰陽師が陰陽師であるために存在している講座だ。

うん、言い方がむずかったな。


まぁようは、陰陽師には学校がなくて、知識がゼロから始めるやつとかがいるわけ。オレとか。

そんな人たちのためにあるのが陰陽師講座だ。


 ぶっちゃけ、すごく需要が高い。

なんてったって、陰陽師になる前に知識があるやつなんて、有名な陰陽師の一族くらいのもんだ。

大抵、知らないケースが多いのである。


 まぁ、講座を受講するやつのほとんどが、自分のちゃんとした技を持ってなくて、除霊具(じょれいぐ)とかで戦う奴らなわけだけど。



 「そうだ、九十九(つくも)様。」

しばらく雑談した後、石野(いしの)さんがオレに言った。


「よろしければ、今の陰陽師講座を見に行かれますか?」

「それ、いいな!」

オレはにっこり笑って親指を立てた。


 医務室を出るときに、振り返りざま、琵琶(びわ)に言った。


「言い訳。考えておいてね?」

「承知しました。」

琵琶びわは深々と頭を下げた。


 オレはその返答に満足して、足取りも軽く医務室前の廊下を歩いた。

読んでくださってありがとうございました!!

次の話では、九十九が陰陽師講座に行きます。


九十九が目をみはるような陰陽師が現れます。

いや、というか、イケメンが現れます。


お楽しみに。


それでは次のお話でお会いしましょう!!

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