第60話 第1ラウンド
そんなこんなでオンリーワンチャンピオンシップが始まった。
最初に行われるのは、幻影術などの会場が壊れない術の見せあい。
最初に呪文詠唱や武術系の披露をしたら、会場が壊れて後になるほど野ざらしの状態でやらないといけなくなる。それじゃ全然フェアじゃないだろ?
が、正直なところ。
幻影術の披露では、参加者たちのやる気が薄いように感じられる。
それもそのはず。
トリに理寿が控えているのだ。
普通、参加者たちは自分の手の内を見せないようにする。それが一つのアドバンテージとなるからだ。
しかし理寿がいるのではそんなことは言っていられない
一応これはチャンピオンシップであって、幻影術の覇権を握っている家の時期当主がいる前で中途半端な技を披露して鼻で笑われるなんてことはメンタル破壊への快速電車なわけだ。
同時に、どれだけやっても勝てないことが確定している。
参加者たちは、まあ勝てませんけどねという空気の中自分の全力を尽くし切ることを求められるのだ。
そりゃあやる気もなかろう。
幻影術にはいくつかパターンがある
俺はそんなに詳しくないが、大抵は一術師につき一パターンの技を生涯のうちで極めるのが定石となっている
ここまで言うとわかるかもしれないが、理寿についてはそんなことは全く関係がない
何ならあいつ三日くらい前に、
『ねー大会なにしよー。内容考えてないんだけどー』
とかいう他の参加者をナメくさった内容の電話をかけてきた。
もうお前も殿堂入りしとけよ、と返してきった
チャンピオンシップだし、審査員は人間であってアヤカシを倒す様子を見せる訳では無いので、基本的に見栄えする技をするのが普通だ。
んで、その術師たちが各々極めてる一パターンの幻影術の範囲内では見栄えする技の個数なんて限られているわけなので、抽選で決まった出場順により前の人が自分と同じ種類の幻影術をする人だった場合、内容が似通いすぎて面白みにかけるのだ。
理寿には関係ないんだけどさ
やる気のない何人かの技を見て、点数と感想を書き込んでいるうちに、とうとうヤツの番がやってきた
「うわあいつ舐めすぎ……」
そんなセリフが思わず口から盛れるくらい、理寿はラフな格好をしていた。
普段アイドルとして現場入りする時に着てるスウェットみたいなのをだるっと着ていて、申し訳程度に家紋の入った手ぬぐいを持っている。
「すみません、うちのが。」
邏寿さんが頭をさげる。
審査員席のあるところはそこそこ暗いのと、実際に技を披露する場所との間にかなり高さがあるのとで出場者から審査員はあまり見えないはずなのだが
理寿は正確に邏寿さんの方を向いて睨みつけ、オレの方を向いてニコニコ笑って手を振った。
「それでは、始めてください」
琵琶のアナウンス。
これまでの出場者は緊張で震えたりしながら技を始めていたが
果たして理寿は
「はぁい、狐狸川理寿、いきまーすっ!」
と元気よく手を挙げると、すっと表情を変え、会場全体を真っ暗な夜へと誘ってしまったのだった




