第51話 康記さんとの対面
「なぁ、向葵。」
「何でしょうか、九十九様。」
「お前、自分の本当の親のこと、どれくらい知ってる?」
本当はこういうことぼかして聞くべきなのだと思うけど、でも、変に気を使うよりはいいのかもしれないな、って。
「___事情は、よく知らない、んです。」
言葉を一つ一つ選ぶように吐き出す。
「でも、あの、親同士は、すごく、仲がよかった、けど。でも、母親の、家が、名家だったらしくて、それで、母方の親戚が、昔、貧乏だった、父の家を、ばかにした、らしくて。それで、だんだん大きな喧嘩になって行っちゃって、その家同士の争いに僕も巻き込まれかけて、それを助けるために、お母さんが僕を施設をやった、みたいなことは聞いたことがありますけど………」
なるほど。
ある程度噂通りってわけか。
「そっかぁ、大変だったね。でもまぁ、ここに来たからには大丈夫だよ。住む場所とかも手配できるし………あ、オレん家………はダメかな。」
「………ずうずうしく上がり込ませてもらおうなんて思えませんけれど、とりあえず理由を聞かせてもらってもよろしいですか?」
「うん、もちろん。あーー、聞いたことないかな?オレがアヤカシと一緒に住んでるって。」
「!?ありません!」
「そっか。結構有名なんだ。最強の陰陽師なのに、アヤカシと一緒に住むだなんて。って。」
「そうなんですか………」
「オレ、二重人格?ってやつで、”あっちの九十九”は”オレ”が陰陽師をやってることを知らない。もちろん一緒に住んでる妖もな。だから急にお前を住まわせるってなると、事情の説明が面倒………あーでも、あいつらだからきっと許してくれるか。うん。」
「ず、随分、信頼してるんですね?」
こいつからしたら、自分の家族を殺したアヤカシと一緒に住んでるオレも、オレと一緒に住んでいるアヤカシも、気色悪いのかもしれない。
「琵琶の許可がもらえたら、一緒に住むか?」
「!!??ぜ、ぜひ、よろしくお願いします!!」
「許可がもらえたら、だけどな。」
「………琵琶さん、って、誰なんですか?」
「陰陽師協会の会長だよ。オレの二個上。」
「ずいぶん若いんですね!?」
「史上最年少らしいぜ。」
「ほぇ〜………」
向葵は変な声を出している。
「九十九様は、副会長か何か、役職についていらっしゃったりはしないんですか?」
「え?いいや、ぜーんぜん。琵琶には、会長になってくれって頼まれてるんだけど、オレ、そういうの好きじゃないんだ。」
「そうなんですか?」
「うん。ほら、どの任務にどの陰陽師を派遣するか、とか、予算とかその他諸々管理しないといけないじゃん?でもオレそういうの苦手だし。」
「あ、そういう理由ですか。」
「逆にどういう理由だと思ったんだ?」
「え、なんかこう………『オレは役職なんかにつかず、現場で一生を終えるんだい!』的な………。」
「何その古い刑事ドラマみたいなスタイル。全然、そんなんじゃないよ。」
年齢、お前と一緒だぞ。
「ははっ、あっは、はっ、はっはっあーーーーはっはっは!………あーーー、おもろっ。」
さっきまで真面目に話していた向葵が急にそんなこと言うから、びっくりして笑ってしまった。
久々のゲラ笑いだ。
膝をバンバン叩いて笑うオレを見て、向葵が一瞬きょとんとした顔をして、それから、
「はは。あはは、あはははは!」
と笑い出してくれたのが嬉しかった。
しばらく笑いがやまないでいると、康記さんを連れた秋穂さんがやってきた。
康記さんは渋い人である。
50代くらいで、着物をバッチリ着こなして、白髪混じりの髪を後ろになでつけている。
ちなみに常に腕を組んで歩く。
そんでもって常に眉がひそまってるみたいな感じで、目が切れ長で、うん。
ぱっと見はすごく厳しい人みたいだけれど、実はいい人である。
起こるとめっっっっっっっっっちゃ怖いけど。
琵琶が小さい頃、康記さんに怒られてギャン泣きしたらしい。
むしろ琴の方が平然としていたんだとか。
「九十九様、どうされたんですか。」
渋く、落ち着いた低い声でオレにそう言う康記さん。
………ちょっと、いや、めっちゃ、緊張する。
「いや、あの、この子………」
向葵を手で指しながら言う。
「自己紹介して、向葵。」
「あ、えっと、はい………」
恐る恐る立ち上がると、背の高い康記さんを下から見るようにして、言う。
「お、憶原向葵、と、もうし、ます。はじめ、まして。」
「………………は?」
康記さんがそう言う。
一歩、向葵に近く。
向葵が逃げようとするのを、オレが後ろから支えて止める。
「つ、九十九様、」
「驚きました?オレも驚いてます。」
「こ、これは本人ですか?」
「本人だと思います。指輪、してますから。向葵、見せてあげて。」
「?」
向葵は首を傾げながら、指に輝く美しい指輪を康記さんに見せた。
「………っ」
「本物、ですよね。オレ、見た事ないのではっきりとはわかりませんけど………」
「本物です。これは本物です。”憶原家”の指輪ですよ。」
康記さんがその手を取る。
「九十九くん、最初からわかってたの?」
「はい。同い年でしたし、結構話を聞いたことがありましたから。」
「ふうん。ボクもびっくりだよ。………会うのは初めてかも。」
「オレもです。」
オレたちだけで話が進んでいくのが不安になったのか、向葵が叫ぶ。
「つ、九十九様、どういうことなんですか?この人は誰ですか?本人って?本物って?僕は一体なんなんですか?」
康記さんはそんな向葵を抱きしめた。
向葵はもっと困惑している。
そりゃそうだ、本人からしたら、初めてあった”つもり”の、親くらいの歳の人に、急にハグされるとか、そりゃ困惑するよな、うん。
助けを求めるようにオレを見る向葵に、オレは言う。
「お前は憶原向葵。”憶”の家の一家、”憶原家”の次期当主。お前をハグしているのは、もう一つの憶の家、”憶山家”の現当主、憶山康記さんだ。」
「………………………………え?」
読んでくださってありがとうございます。
いつの間に50話投稿しちゃってたんですね、いま気づきました。
はい!憶原向葵くんですよ!
僕この子めっちゃ好きだわ〜。
実は向葵くんと衣織くんはこんなメインキャラになる予定ありませんでした。
なのに、九十九くんがいおりに教えるっていうから!!!!!!
そりゃメインキャラになるよ!!!!
風。
ふう。
もう夜遅いんで寝ないと明日の活動やばいんでもう寝ます。
おやすみなさい
それでは次の話でお会いしましょう




