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第42話  まだダメなのかよ………

 「フゥ………」

ため息をつくと、目を数秒だけ閉じて、理寿りじゅの方に向き直った。


 意識はないものの、傷は綺麗に治って、落ち着いているように見える。


よかった………

胸をなでおろすと、理寿りじゅを抱えて、うずくまっていた周太しゅうたくんの方へ向かった。


周太しゅうたくんは傷一つなく、砂埃で少し汚れてはいるものの、元気だった。


「さっさと出よう。こんな気味の悪いところ、ずっといたくない。」

「………はい。」

周太しゅうたくんは一つ頷くと、オレの服の端を掴み、一緒に歩き出した。



 ………ただ。

やっぱり周太しゅうたくんは疲れていたみたいで。


しばらく歩くとへたり込んでしまった。


「大丈夫?」

オレが聞くと、周太しゅうたくんは頷くものの、やっぱり疲れているようだ。


「じゃあ、いいことしてやろうか。」

オレはそう言うと、周太しゅうたくんの手を(頑張って)強く握った。


「行くよ?」

オレはそう言うと、すぐに、ことの発端のビーチまで飛んだ。



 興味津々に目をかっぴらいていた周太しゅうたくんではあったが、急に景色が変わったので、目を白黒させている。


そう、瞬間移動は、本当に、急で、一瞬なのだ。


「びっくりした?」

「びっくりしました!」

オレの顔を見上げて、周太しゅうたくんは言った。


「すごいでしょ。」

「はい!さっき戦っている時も、とてもカッコ良くて!みんなに自慢したいなぁ。」

「それは困るなぁ。」


オレは眉を八の字にしてそう言うと、理寿りじゅ霊力れいりょくで宙に浮かせ、周太しゅうたくんの頭を撫でた。


「ヒーローは、自分で存在を人に知らしめて有名にならなきゃ。」

「………!」

憧れの目をしてオレを見てくれる周太しゅうたくん。


この子は、自分の母親が死んだことを知ったらどんな反応をしてしまうのだろう。


この瞳に映る、美しすぎる、純粋な光は、真っ黒なものに塗り替えられてしまうのだろうか。


オレが、周太しゅうたくんの母親が死んでいることがわかった上で、何にもないように接していたことを知ったら、人を信じられなくなってしまわないだろうか。


 ………いや。

人を信じられなくなってしまうのではないか、という思いと、同じくらいか、それとも少し多いくらいに、この子に嫌われたくないという思いが勝ってしまっている。


自分勝手だなぁ………

何より、オレの気持ちなんかより、この子の感情を優先すべきなのに。


でも、急に黙り込んでこの子を心配させるわけにはいかない。


「さぁ、とりあえず街に戻ろう。」

オレはそう声をかけると、街に一つだけある交番に向かうことにした。



 交番は思いの外立派だった。

綺麗で広い。


おまわりさんに周太くんのことを軽く説明した後、耳に囁く。


「どうやらお母様は、もう………」

「なるほど。わかりました。」

おまわりさんの顔がこわばった。


「施設への手続きなどは、お願いします。」


周太しゅうたくんに対して優しい笑顔を二人して作ると、


「それじゃ、オレは理寿りじゅと帰らなきゃ。じゃあね、周太くん。」

オレはそう言って周太しゅうたくんの頭を撫でた。


周太しゅうたくんはくすぐったそうに、嬉しそうに笑い、


「また、会いたいです。」

と言った。


だが、正直オレは会わない方がいいと思っている。


陰陽師おんみょうじなんて、会ったところでアヤカシに絡まれる可能性が高くなるだけの厄介な人種だ。

君はこれ以上不幸になったらダメだ。


「そうだね、また、会えるといいね。」

オレは全ての感情を押し込んで、仮面を身につけた。



 元気に手を振る周太しゅうたくんを見て、自分にムカつく。

どうせ、どうせいつか真実を知るなら………いっそ、いま………


いや、やめよう。

歪んだ感情を、人を信じられなくなるようには絶対なって欲しくないから。



 理寿りじゅを連れて、帰りの電車に乗る。


まだ目を覚ます気配がなく、オレはそっと髪を整えてやった。


顔を少ししかめるも、まだしっかりと閉じたままの瞳。


「おい、この後の琵琶びわへの報告、オレが一人でやるのか?やだぞ、そんなの。」

ひとりでにそう言いながら、オレは靴を脱いで膝を抱えた。


あの男の子のことが、ずっと引っかかっている。


オレたちが助けてくれたと信じて、あんなに無邪気な顔をしてくれるあの子を、裏切ったような気がしている。


「なあ理寿りじゅ、どうするのが正解だ?どうしていたら正解だった?あの子に、現実を伝えていた方が良かったか?」

オレの、聞いているような聞いていないような問いに、理寿りじゅは動かない。


「やっぱ、ダメか。」

と微笑する。


『さぁ、どうだろうね。』


突然、理寿りじゅの声がして、オレは目を丸くした。


理寿りじゅの唇は全く動いていない。


「おい、理寿りじゅ理寿りじゅ?」

呼びかけても、反応はない。


幻聴か?

頭の中で突然響いたような感じだったけど………


 オレは考えるのをやめ、理寿りじゅの手を握った。

足を降ろす。


「早く起きてくれ。なんだかんだ、お前がいないと心が潰れてしまいそうだ。」


言葉にできない、胸の奥を何かに圧迫されているような痛みを抱えて、オレは唇をかんだ。

 読んでくださってありがとうございます。


個人的に大事なことが終了したので、投稿しました。


さて、今日はクリスマス!

ケーキ食べましたか?私は食べました。


私の地方はだんだん寒くなってきています。

寒さに気をつけて元気に過ごしたいものです!


それでは、次の話でお会いしましょう。

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