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第41話  綺麗になってほしい。

 「理寿りじゅ理寿りじゅ理寿りじゅっ………」

名前を呼びながら、理寿りじゅに走り寄る。


周太しゅうたくんも、立ち上がりかける。


「そこにいて!」

と叫んで右腕を後ろに突き出すと、周太しゅうたくんはおとなしく座り込んだようだった。


脈を確認。


うん、大丈夫………


呼吸も、正常だし、見かけほどひどくはない、のか??


でもこれだけ血が出てるわけだし………



 「ん………」

不意に、理寿りじゅが顔をしかめた。


ゆっくりと手をついて起き上がろうとする。


「おい、寝てろ!」

オレの叫びも虚しく、起き上がった理寿りじゅは頭に手をやった。


「?」

首を傾げながら、自分の手を見る。


「わ、血………」

さほど驚かない。


「治す、すぐ治すよ。」

オレはそう言うと、理寿りじゅの頭に手を当てた。


一番外傷がひどいのは頭だ。


ひたすら、ただひたすらに、理寿りじゅの綺麗な頭が復活することを祈り続ける。


徐々に癒されて行くようで、オレはホッとする。


だがしかし依然として意識が戻る様子はなく、とりあえずタオルの上に頭を置いて寝かせる。


「仇はオレがとってやる。」

なんてかっこいいことを言えた柄じゃないが、そのような心持ちではある。



 アヤカシに向き直る。

楽しそうに、ケタケタと唇の端を歪ませて、笑っている。


許せないという感情だけでは追いつかない。


周太しゅうたくんに、出て来ちゃダメだよ、と言うようにうなずいてみせる。


周太しゅうたくんはおとなしく、洞窟の、出口に近いところで座っていた。



 オレはアヤカシを睨みつけて、


「お前はただでは死なせてやんねーから。いろんな人傷つけておいて、流石のオレも、堪忍袋の尾が切れた、ってやつだから。」

アヤカシは首をひねり、ケタケタと笑う顔を、変えようともしない。


うざいな、ムカつく。

そんな顔してんじゃねーよカス。


何にも理解できてないような顔して、本当は理解できている野郎が、イッチバンムカつくんだよ。


「おいテメェ。オメェはバカだから知んねーだろうけど、オレ、最強だから。最強のオレが、お前のことズッタズタにしてやるって言ってんの!」


そう叫ぶと、何も持たずにアヤカシに突進した。


ケタケタ笑ったままのアヤカシは、体をこちらに向ける。


かかった!


オレはそう叫びたいのを我慢して、アヤカシの少し手前で止まり、素早く右手と右足を自分の前に突き出した。


ドン、という重い音が洞窟に響き渡ると、同時に、洞窟自体がリズムを刻み始めた。


要するに、一定の間隔をあけて縮小と拡大を繰り返しているのである。


急に地盤が不安定になったこともあり、アヤカシは首を180度回転させた。


「気持ち悪りぃなぁ、お前!」

オレは煽るように言って笑うと、


「これぐらいでへばってんじゃねーぞ、カース!」

さっき前に出した手のひらを下に向けて、押した。


ぐわングワン上下を続けていた洞窟の天井が、アヤカシめがけて落ちた。


でもこれくらいで死ぬなんて思ってない。

こんなんで祓えたら、陰陽師おんみょうじなんていらねーよなぁ。


霊力調節れいりょくちょうせつ みずのと!」

落ちた岩1つ1つに、丁寧に、丁寧に霊力れいりょくを流す。


これで、この岩たちはオレの手足と一緒だ。


『落ちろ』という命令を発すると、次々と、アヤカシのすでに傷ついた部分に向かって落ちて行った。



 攻撃を受け、よろよろと岩の山の下から這い上がってくるアヤカシ。

ニヤリと、余裕の笑みを浮かべて見せている。


「あれ、あれれれ〜?」

オレは体を前に突き出した。


「これで終わりだと思った?思った?思ったよなぁ、そうじゃなきゃ、そんなに余裕じゃねぇよなぁ?」

そう言うと、オレは息をついた。


オレがヴィランみたいになってるじゃん。


息を飲むと、アヤカシの顔をじっと見つめた。

うん、やっぱり気持ち悪い。



 「………なぁ、知ってるか?」

オレはそう切り出した。


「金縛りっていうのは、起こすのは簡単なんだ。霊力れいりょくで作った紐を体のあちこちに巻きつけて、固定すればいいだけだからな。喋れなくなったりするのは、普段滅多に触れることのない霊力れいりょくに触れた人間が、ショック状態になるからだ。

霊感がある人は、逆に霊力れいりょくに敏感になりすぎて、金縛りがひどくなるケースが多い。」

長々と語るオレに、アヤカシは首を傾げた。


「まぁ、つまり何を言いたいかと言うと。………なぁお前、今動けるか?」

アヤカシは、当然、というように、口をさらに横に広げた。


そして、オレの方に足を踏み出そうとした。


「なぁ、無理だろ?」

オレはニヤリと笑って、アヤカシにふれた。


「話の続きだ。」

オレはそう言う。


霊力れいりょくというのは、なんでもできるんだ。例えば、そうだな───精神攻撃、とか。」

途端、アヤカシが顔を歪めた。


身をよじろうとするも、金縛りにあっているので、できない。


「へぇ、お前にも、心ってものがあったんだな。理寿りじゅにあんなひどいことするから、ないと思ったよ。」


「できること………あとはそうだなぁ、」

と、オレは意地悪く言った。


「アヤカシを消滅させる───まぁ、祓う、とかな。」

決め台詞のようにそう言うと、アヤカシの表情が動かなくなった。


ゆっくりと、ゆっくりと、アヤカシの黒い部分が、白くなって、綺麗になって、消えて行った。



 理寿りじゅにひどいことされたから、除霊じょれいするときの気持ちは荒れてたけど。

けど、けど、こうやって、少しずつ綺麗になっていくのを見るのが、嬉しかったりする。


人の、『怖い』っていう思いを一つに集約されたアヤカシを、かわいそうなんては思わないけど。

だって、人を傷つけたりしてるわけだし?


けどさ、最後は、消滅のときは、少しは綺麗な感情が増えてくれたら、なんて………


あんな祓い方をした後に、ただの言い訳だろうか。

 読んでくださってありがとうございます。


ここで、別の作品に関するお礼を。

『氷の王子様』ブックマーク登録ありがとうございます!!!

ぜひ少年陰陽師の方も………投稿がかなり不定期ですので………


 結構昔、氷の王子様の投稿頻度が上がるなんてほざいていましたが、また悩みの時代が到来してしまいました。

次の話は、途中まではかけているのですが………


頑張って、なるたけ早くだせるようにしますね!



 それではみなさん、次の話でお会いしましょう!!

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