第31話 陰陽師は脳筋??
「衣織ー、どこだー。」
「衣織くーん、どこにいるのーっ。」
廊下にオレたちの声が響き渡る。
返事は返ってこない。
「九十九くん、電話してみたらっ?」
「………そうしてみる。」
理寿の提案に頷いて、スマホを取り出した。
「もしもし?」
「あ、えっと、あの、もしもし、九十九様ですか?」
「うん、そうだけど。衣織、今どこにいるの?オレは今協会にいるんだけど。」
オレが言うと、衣織は慌てたように声をあげた。
「すみません、僕がお呼びしたのに、申し訳ありません。」
「大丈夫だから。で、今、どこにいるの?」
「あーえっとー………説明したいんですけど、ちょっと口で言うのは難しいので、中庭の北口にいていただけますか?迎えに行きますので。」
「わかった。待ってる。」
オレはスマホをポケットにしまうと、
「理寿、北口で待っててって。行こう。」
「うんっ。」
理寿はスキップしそうな足取りで北口へ向かっていく。
「理寿、上機嫌だな。」
オレが言うと、理寿は目をますます細めた。
さすがアイドル。
笑顔が光り輝いている。
「え〜、そうかなっ。」
「そうだよ。明らかにいつもより楽しそうだ。」
「そっかぁ。………ま、当然だよねっ。だってさ、九十九くんがさ、後輩の子にさ、教えようとしてるんだもんねっ。」
ふふふ、と楽しそうに空をふり仰ぐ理寿。
「あ、でもさ、オレ、あんま教えるのうまくないから、さ、その………」
言いよどむオレに、理寿は何もかもわかっている、というように頷いた。
「大丈夫、僕、一生懸命サポートするからねっ!」
拳をブンブン振り回す理寿。
通りがかった女性の陰陽師が、こちらを指差してこそこそしている。
「理寿、目立ってるよ。」
「別にいいよっ?」
「理寿が良くても、オレが良くないんだよ。」
「あー、そういえば九十九くん、昔ファンに囲まれて熱中症になったんだっけ。」
ははは、おっかしー、と笑う理寿。
もう、その話やめてよ!
「ふふ、九十九くん、不満そうな顔。」
「ムゥ………」
確かに不満だが、理寿が嬉しそうなので我慢することにした。
北口でしばらく待っていると、キョロキョロ首を傾げながら走ってくる衣織を発見した。
「お〜い、衣織〜!」
オレが呼ぶと、衣織はこちらを見て、
「あっ!」
と顔をほころばせた。
走ってくると、膝に足がつきそうなくらいに頭を下げた。
「ありがとうございますっ!!」
「いえいえ〜っ。」
と言うのは理寿。
おい。
頼まれたのはオレだ。
「あ、理寿さん!」
素直な衣織はますます表情を和らげた。
「え〜、僕のこと、おぼえててくれたのっ!?」
理寿はポンと手を叩いた。
いや、理寿はアイドルだから、どんな人でも知ってるでしょ。
「当然です。九十九様のお友達だそうですし、あとで調べたらアイドルもやられているみたいですから。」
調べる………?
そんなことできるのか?
オレはそんなにすごいことはできない。
スゲェー。
そう思いながら尊敬の目で衣織を見つめると、衣織はぴょんっと一歩後ろに下がった。
「どうしたの?」
「九十九様が、なんだか、僕が恥ずかしくなる目をしていらっしゃるので。」
理寿がこちらを見る。
「ほんとだぁっ!よく、秋穂さんあたりにやってるやつだよねっ!」
おい!余計なことを言うな!
え、まって。
秋穂さんあたりに、よくやってるの?
オレが?
はっず!!
「と、とにかく!早く修行しようぜ!それにほら、理寿。オレたちは、仕事もあるし。」
オレがそう言うと、理寿はポンポンオレの背中をしばいた。
「わかったわかったーっ!」
「さ、衣織。さっさと修行するところ、連れてってくれ。」
「は、はいっ!!」
衣織は緊張しているようで、右手と右足が一緒に出ている。
しばらく歩いて歩いて、階段を登ったり扉をくぐったりしていると。
───ふわっ。
オレたちのそばを、誰かが通り過ぎた。
振り返ると、明るい茶髪に、たくさんのピアスを両耳につけた男の子だった。
わーすげー!
ピアスだ!
オレ、穴開ける勇気が出ないんだよなぁ。
その子を眺めていると、
「どうかしましたか?」
と衣織が首を傾げた。
「いいや、なんでもないよ。」
そう答えると、衣織は安心したように頷いて、歩き出した。
それから、またまたしばらく歩いて、衣織はこちらを振り返った。
「つきました。」
そこは、芝生が敷き詰められ、木々に囲まれた広場だった。
「なにこれっ。僕、こんなところしらないっ!」
理寿はワクワクした声を上げる。
「実は、琵琶会長に、言われたんです。もしよかったら、ここで訓練したらどうですか、って。九十九様のおかげです。ありがとうございます。」
あー、なるほど。
そういえば、協会は地下にあるんじゃないのかって思ってる人が多いと思うけど、協会はすごく広くて、移動しているうちに外に出たりもするんだ。
「さっきまで、ここでやってたんですよ。」
ベンチの上に置いてあった水筒を手にとって、水分をとる。
緊張していたようで汗をかいているし、たくさんお茶を飲んで欲しいと思う。
衣織は水筒をおいて、タオルで顔を拭いた。
「それじゃあ、やろうか。」
オレはそう言って、衣織の方を向いた。
ごくん、と衣織が唾を飲み込む。
「まず、お前にとって大切なのは、霊力の消費を少なくすること。」
「はぁ………」
「だって、|霊力(れいりょくは増やせないからな。」
そう、霊力は身に授かって生まれてくるもの。
増やせないものである。
「まぁつまりは、慣れることだな。」
「はぁ………」
「ただ、ひたすら術を使い続ければいいわけじゃない。筋トレもして、体力もつけないと。ほら、土台がしっかりしてないと使えないわけだ。しっかりしてないスポンジにたくさんのデコレーションをすると潰れる、的な。」
オレが言えた口じゃないけどな。
「筋トレなら、少しは………っ!」
拳を握る衣織の腕を、理寿が包んだ。
「んー、どうだろうなぁ。」
「ふわっ!?」
衣織は驚いて一歩下がった。
「んー、中途半端だね。ここは結構いいけど、でもここは………うん、やっぱ君、筋トレの仕方間違ってるよ。」
理寿はアイドル活動の一環で筋トレをしまくっている。
効果的な方法、なにに役が立つのか。
その全てを知っている理寿。
「理寿、筋トレはお前に頼んだ。術はオレが教えるから。」
「わかったっ!先ずはねぇ………」
解説しようとする理寿。
陰陽師が脳筋だと思われたくないと祈るオレであった。
読んでくださってありがとうございます!
投稿頻度あがるとか、嘘だ!って言わないでください。
忙しかった………のかな?
書きたいって気持ちはあるのに、パソコンは開かないというバカは私です。
頭の中ではオンリーワンチャンピオンシップまで完成してるっていう謎。
でも絶対、未完成では終わらないと宣言しておこうと思います。
未熟な作者をこれからもよろしくお願いします。
それでは次のお話でお会いしましょう!!
追伸:投稿頻度がまちまちなので、ブックマーク登録などしていただけるとモチベが上がります。