第28話 陰陽師さん
「あの、陰陽師って…………」
ぼくが聞くと、彼は、「んーとねー、」と言いながら、伊知郎の脈を測ったり呼吸を見たりして頷く。
「陰陽師は、アヤカシを祓うお仕事だよっ。」
と、ローブの下でニヤリと笑った。
なんだかその顔を見たことがあるような気がしたけど、心にストッパーがかかったみたいに思い出せない。
「アヤカシを………祓う?」
百狐さんたちも………ってこと?
黙ってしまったぼくを見て、陰陽師さんは優しく笑った。
「どうしたのっ?やっぱり、アヤカシ、怖かったっ?」
「えっと………アヤカシって、さっきの………?」
さっきの自分の発言を打ち消すように、聞いてみた。
「うん、そうだよっ。あれがアヤカシっ。キモチワルイバケモノ。」
んべ〜、と舌を出して、ぼくの発言の矛盾点をつくこともなく、優しく教えてくれる。
「あのっ………!」
思わず大きい声が出てしまった。
「どうしたのっ?」
「い、いいアヤカシって、いるんですか?」
ぼくはすごく必死そうに聞いていたらしい。
陰陽師さんは、驚いたようにぽかんと口を開けて、
「ふふっ。」
と笑った。
それから、
「………うんっ、いる、よっ。」
と答えてくれた。
ぼくはホッとした。
少なくとも、この人はいいアヤカシを知っている。
陰陽師さん以外の陰陽師がどうかは知らないけれど、この人はいいアヤカシを祓うような人じゃないって、分かる。
「でもねっ。」
陰陽師さんは声を真剣にした。
「いいアヤカシばかりじゃないよっ、この世の中は。今祓ったような、悪いアヤカシの方がずっと多い。ねっ?わかったら、こんな夜中に、肝試しなんて来ない方がいいんだよっ。」
厳しい声でそう言われて、下唇を噛む。
そうだよ、もっと、もっと、ぼくが気をつけて、伊知郎を引き止めていられたら………
「そんな顔しないでっ。」
トン、と陰陽師さんはぼくの肩に手を置いた。
「大丈夫だよっ。」
と髪を揺らす。
そして。
「あっ!」
ローブがパサリと取れた。
「?」
ぼくがはてなマークを浮かべると、陰陽師さんは光の速さで後ろを向いて、ローブを被り直した。
「も、もう、帰ろうかっ。」
ローブをさっきより深くかぶると、ぼくのほうを向いた陰陽師さんは伊知郎を抱えた。
「この子のお家はどこっ?」
伊知郎の顔を見ながら、陰陽師さんが聞く。
「あっ………っぼくが案内します。」
「助かるよっ。」
陰陽師さんの前に立って歩く。
この人、なんか喋り方変だな、っておもってしまう。
あれ?こういう話し方の人、そばにいたような気がする………?
首をひねるぼくを見て、陰陽師さんは慌てたように手を振って話し出した。
「そ、そういえばさっ、君らは、どこの学校なのっ?」
「ふぇ?」
「あ、ごめんね、ごめんねっ!個人情報だよね、よくないよねっ。」
頭を何度も下げてくる。
そのまま行くと、またローブ取れますよ………
しかし、今度は固定されたようにローブは動かない。
「いや、あの………はい。」
流石に、今初めて会った人に、自分の学校教えるのはどうかと思うし………
「えーっと………じゃあ、じゃあ、好きな食べ物はっ?」
「えー………あ、甘いもの、とか。ブラウニーとか、クレームブリュレとか、ですかね。
あんまり嫌いなものはない、です。」
「へぇ、そうなんだっ。僕はねー、苦いものが嫌いだなぁっ。でも、甘い物は好きー。」
楽しそうに言う陰陽師さんは、なんだか可愛い。
伊知郎の家に着くと、陰陽師さんは伊知郎をぼくに渡そうとした。
「あ、ぼく多分、伊知郎を支えきれないです。」
「あぁ、大丈夫大丈夫っ。ちょっとズルしてあるからねっ。」
人差し指を立てる陰陽師さん。
首をひねりながら伊知郎を抱えると、
「!?」
い、伊知郎が、軽い!
「これは、陰陽師さんの術とかですか!?すごいですねっ!?」
「そうだよー。さっ、早く伊知郎くんをおうちの人に。」
そう言われて、伊知郎の家のピンポンを押す。
「はーい。」
伊知郎のお母さんの声がする。
「あ、すみません、ニノ前九十九です。伊知郎、肝試しの後眠くなっちゃったみたいで………」
「あら、ごめんなさい!今行くわ。」
バタバタという音がして、ドアが開いた。
「ごめんなさいねぇ、九十九くん。伊知郎、重かったでしょう。」
「いや、その………はい。」
本当は陰陽師さんの術のおかげで全く重くなかった。
「ほら、伊知郎、行くわよ。ごめんなさいね、九十九くん。ありがとう。」
伊知郎を抱えた伊知郎のお母さんは、ぼくに何度も頭を下げて、扉を閉めた。
「陰陽師さん、ありがとうございます。」
そう言ってぼくが振り返ると、陰陽師さんはもういなかった。
「行っちゃった。まぁ、ぼくの家は近いからいいけど。」
ぼくはそう呟いて、自分の家に向かった。
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一方その頃
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「ハァ〜、危ない危ないっ。」
僕は声に出した。
「まさか、九十九くんがあんなところにいるなんてねっ。」
会長から言われて慌てて向かったら、九十九くんがいてもっと焦っちゃった。
「でも、僕が狐狸川理寿だっては気づかれなかったねっ。よかったぁ。」
僕はホッと胸をなでおろす。
ローブが取れた時はどうしようかと思ったよね。
九十九くんが鈍感で助かったや。
それにしても、あっちの九十九くんは本当に全く霊力がないんだねっ。
アヤカシは見えてるのに。
防御もできないし………
ふつう、霊力のある人間は、妖術を使えなくても、命の危機には無意識にバリアを張ったりできるのに。
なんでだろう。
これ、九十九くん七不思議の一つだねっ。
さ、帰ろうっと。
………あ。
今日、あのグズが帰ってる日だったっけ。
読んでくださってありがとうございます!!
お久しぶりです!(最近いつも言ってますね………)
陰陽師さんの正体がわかりましたね。
でもネタバレはやめておこう。
陰陽師さんが、温厚な陰陽師さんが、『あのグズ』と形容する人物は誰なのか!
でもねー。
それを書くのは、もうちょい後になりそう。
こういう予告をよく言ってるから、今予告していることをリストアップしておきます。
・九十九くんを尾行している人物
(忘れてる人がめっちゃ多いと思う。作者ですら、半分忘れかけてました。)
・陰陽師さんが『あのグズ』と呼ぶ人物。
あれ?結構少ないなぁ。
まぁいいや。
えー、私の投稿はものすごく不定期です。
なのであのー、ブックマークなどしていただけたらな、と思います。
それでは、次のお話の方でお会いしましょう。




