第22話 審査員ってなにすんの?
「ただいま。」
と家に入ると、なぜか静かだった。
「あれ、みんな寝ちゃったのかな?」
と、あっちの九十九の話し方でリビングのドアを開けると、帆兎さんと百狐さんがソファで倒れていた。
「な、なにこれっ!?」
オレが叫ぶと、清子さんがやってきた。
「おかえりなさい、九十九さん。」
「あ、清子さん!これ、どういうことですか!?」
オレが叫ぶと、清子さんは困ったように、
「実は、百狐さんが九十九くんがいなくなって寂しいからって帆兎さんをお酒に誘ったんです。」
見ると、テーブルに大量のビールの缶が並んでいる。
カルパスや、スルメや、ポテトチップスの空袋も並んでいる。
「そう言えば、帆兎さんは酒に強いけど、百狐さんはそうでもありませんよね。」
「はい。やけくそでどちらが多く飲めるか勝負し、百狐さんが早々に酔いつぶれ、そして帆兎さんも眠ってしまわれました。」
容易に想像できるな………
「お、九十九、帰ったのかにゃ。さっさと風呂に入ったほうがいいにゃ。」
ツツさんが眠そうに大欠伸しながらやってきた。
「おりゃはもう寝るにゃ。おやすみ。」
ツツさんは部屋の隅にあるキャットタワーを猫らしく軽々と登り、てっぺんのつぼ形クッションの上で丸くなった。
「そうですね。さ、お風呂にお入りください。わたくしも眠ります。」
清子さんに促され、オレは頷く。
「わかりました。」
霊に睡眠は必要ないけど、やはりずっと姿が見えるようにしておくのは辛いらしい。
オレはおとなしく風呂に入ることにして、着替えを取りに自分の部屋へ向かった。
ウォークインクローゼットの中から下着やパジャマを引っ張り出し、風呂場へ向かう。
服を脱いで洗濯機に入れ、電源を押すと、ちょっと重いスライドドアを力ずくで引っ張り開けると、立ったままシャワーを全身に浴びた。
全身を洗い終わった後、しばらくお湯を浴びながら目を閉じる。
オンリーワンチャンピオンシップの審査員………やったことねぇんだけど。
ど、どうやって点数つけんの?
それに、え、確かジャンル分けとかあったよね。
ジャンル分けって無数じゃないの!?
ジャンル分けは、能力の性質によって異なる。
頭脳系、五感系、変化系、妖術系、自然系、身体強化系、除霊具系、身体操作系、治癒系、精神系。
大きく分けるとこれくらいか、これより少し多いくらいだと思われる。
頭脳系は、記憶操作とかただの記憶とか、脳に干渉したりするような内容。
五感系は、五感の拡張や性能アップぐらいかな。
変化系はあれだ、理寿みたいな。理寿の家は変化系に属する。
妖術系は、霊力を飛ばしたり、霊力を武器に変えたりだ。
琴や琵琶の家は妖術系に属する。
自然系は、土とか木とか花とか水とか、そういうのをなにもないところから生やしたり植物を操ってアヤカシを縛ったり。
ぶっちゃけ、結構有用性が高い。
身体強化系は、霊力を使って体を強化するんだ。
足をスッゲェ強化してジャンプ力を上げたり、とかだな。
除霊具系というのは、除霊用具や除霊道具を使っている人たち、もしくはそれらを作っている人たちのことである。
除霊用具はお札などの小物、除霊道具は太刀などの武器だと決まっているのだ。
除霊用具の方がコスパいいんだよね。
小さくて軽くて持ち運び便利なのに、除霊道具より扱いやすくて威力がデカイ。
え?じゃなんでみんな除霊用具を使わねぇのかって?
大太刀使って振り回してると、女性人気がエグいからだろ。
オレ的には、札使った方がかっこいいと思うけどなぁ。
だからこないだオレが琴を助けたときに除霊具は、細かく言うと除霊道具に当たる。
除霊具を作っている人たちは、マジ職人気質だから、あんまり人と仲良くしてんの見たことねぇわ。
身体操作系は、身体強化系と一緒じゃないのとよく言われるけど、違う。
操作系は相手の体、強化系は自分の体だからな。
要するに相手の体を自分の意のままに操るってことだ。
立てなくしたり、どこか一部分の機能を低下させたり、な。
で治癒系は治癒術師な。
人の体直したりするやつら。
精神系は心理操作みたいなやつ。
メンタリストの進化版で、感情や心を支配する。
恐怖を植え付けるのにはぴったりで、みんなから避けられている。
んなもんじゃなかったか?
まだあるかもしんない。
そこまで考えると、気が緩んだのか鼻から水が入った。
「〜!?」
例えようもない激痛。
「ゲホッ、ゲホッ。」
と大きく咳をして涙目になり、シャワーを止めて風呂から上がる。
部屋着に着替えると、素早く歯磨きをして二階に向かう。
途中、清子さんに挨拶をしようかと思ったが、寝ると言っていたので邪魔をするのはやめることにした。
清子さんがかけたであろう百狐さんと帆兎さんの毛布を直してから、電気を消し、自分の部屋に戻る。
目覚ましをセットしている間に、琵琶から電話がかかってきた。
「はいはい。」
見なくても琵琶だとわかる。
だって明日学校だし。
その前に、あっちの九十九の人格に戻しておきてぇんだろ。
「もしもし。」
「もしもし九十九様、今はお家ですか?」
「あぁ、家だ。」
「それじゃお………」
おやすみなさいませ、という前に、オレは琵琶に言った。
「琵琶、今度の浜辺のアヤカシ祓う時は理寿と一緒だよな。」
「え?あぁ、そうです。資料も理寿さんにすでに渡しております。」
「え、じゃ、オレがその資料を読めるのは当日?」
「そうなりますね。」
「え、ちょっと待って、それ、大丈夫なの?」
「大丈夫です、九十九様ですから。」
琵琶に言い切られ、反論しようと口を開くと、
「それではおやすみなさいませ、九十九様。」
と、早口で琵琶に言われてしまった。
クッソ………
ベッドの上にいたのが救いで、オレは頭をぶつけることなく眠り込んだ。
読んでくださってありがとうございます!
ぶっちゃけ〇〇系のところはこれからまだ増えていく可能性大。
新キャラも出るし。
次からしばらくは九十九の学校の話になる…はず。
伊知郎たちとの毎日を楽しんでいただけたらと思います。
それでは、次の話でお会いしましょうっ!