第20話 秋穂さん、辛辣すぎますよ。
「ん〜、美味しい〜!」
オレは目を閉じて味わった。
さすが秋穂さんが行きつけのスーパー(?)で選んだお肉………食材である。
普段オレが食べている肉の何億倍もの歯ごたえや味が広がってくる。
秋穂さんが大口を開けてお肉を頬張った。
「やっぱり、あそこのお肉は外れないねぇ、聞いたことない業者さんからのだったから少し心配だったけど、今までのよりもずっといいかもしれないね。」
なんて感想を言っている。
あ、業者さんのお名前までご存知なのですか?
あ〜、そりゃ当たり前かぁ。
なんせ秋穂さんは、石巻秋穂さんだからなぁ。
「この卵も、黄身が最高………」
オレがでろんと目尻を下げて言うと、秋穂さんがくすっと笑った。
「でしょぉ?九十九くんが美味しそうに食べてくれるから卵も浮かばれるねぇ。」
「卵が浮かばれるってなんですか………」
と呆れた顔を向けながらも、言われて悪い気はしない。
もぐもぐ食べていると、秋穂さんがテレビをつけた。
「あ、見て見て〜、クイズ番組やってるよ〜。謎解きだって〜。」
のんびりとそう言われて、オレは箸を置いてテレビの方を向いた。
かっこいい俳優さんとかが謎解きに頭を抱えている様子が巨大テレビに映される。
ピンコーンと音がして押した子役がドアップになる。
子役が舌ったらずな女の子らしい可愛い声で、
「あめだま。」
と答え、正解音が鳴る。
「解説をお願いします。」
と司会者に言われ、
「えーっと、あの、例から“3”が“あ”にたいおうしてるので、そのかんじで考えていたら、あめだまになりました。」
と一生懸命答える子役。
「頑張ってるねぇ。」
と秋穂さんに言われて、
「はい。最近は子役がバラエティ番組に出ていることが多くなりましたね。」
と返す。
「ねぇ。でも、あんまり演技がうまい子は少ないよね。」
秋穂さんがニコニコ笑って辛辣なことを言った。
「えぇ、まぁ………でもこの子は有名ですよね。」
オレが笑って言うと、うんうん、と頷いてチャンネルを変えた。
「え、変えちゃうんですか?」
「え、見たかった?」
「いいや、そう言うわけじゃないですけど。」
見たくないけど途中で切られるとその先が気になる。
「あ、歌番組だぁ。つまんなそー。」
またも、秋穂さんが辛辣なことを言う。
そしてチャンネルを変える。
「お、バラエティーじゃん。あ〜、この芸人さん、ボク好きなの。」
美しい指をテレビの液晶に向けながら言う。
「最近有名になってきた人ですね。うわぁ、髪型のくせすごっ!」
その番組は芸人さんのトーク番組で、話し上手な人と話が苦手な人の差が大きく開くのがこの番組である。
秋穂さんはもぐもぐ食べながら、
「アッハッハ、この人初めて見たけど、話すのうま〜い。」
「ん〜、この人はあんまりうまくないなぁ。」
と辛辣なコメントを出している。
秋穂さん、こういうとこあるんだよなぁ。
いつもはへニャンへにゃんなのに、テレビ番組に対しては異常なほどに厳しい。
言い方はふわふわしてるのに、というかそっちの方が、テレビ番組作成者からすると結構きついことなんだろうなぁ。
「秋穂さん。」
オレはうんざりして、
「あまりそういうことを言わないほうがいいですよ。特に親しい人以外の前では。」
と注意した。
「でも、九十九くんはボクとすごく近くて親しいじゃん。」
言われて、その通りだなと思う。
だけどさぁ。
この美しい顔からそんな辛辣な言葉が飛び出すのはちょっと色々………やばいかも。
ってかここまでで、“辛辣”って単語何回使った!?
「秋穂さぁん。性格もいい方がいいですよ。」
「え〜?別によくなぁい?完璧って、ムカつかない?」
そう言われて、うっ、とひるむ。
オレは身長が低い。
周りの美形人たちに比べれば顔も悪い。
声もそんなにいいわけでもない。
性格も、そんなにいいわけじゃない。
それに比べて。
秋穂さんは身長が高い。
周りの美形人たちに比べても一ミリも劣らずかっこいい。
声も以上にいい。
この上性格もよかったら、思考回路がショートするどころじゃすまないであろう。
「納得しました。でも、あんまりそういうこと言うと、美味しいお肉が美味しくなくなっちゃいますからね。しーっ。」
オレがそう言って唇に人差し指をおいた。
秋穂さんは素直に右手を上げて、
「は〜い。」
と言った。
「よろしい。」
とオレは満足げに頷くと、大口を開けてお肉を頬張った。
読んでくださってありがとうございます!!
秋穂さんが、完璧ってムカつかない?なんていうと、ちょっとイラっときますよね。
もうすでに完璧みたいなもんですからね、秋穂さんなんて。
あと謝罪が一つあるんです。
この間、あと1話で秋穂さんと九十九くん編が終わるって言いましたけど、あと1話あります。
でも、次の話で本当に終わりです。
(秋穂さんと九十九くん編は、ね。)
次の話も楽しみにしていてください!
それでは、次のお話でお会いしましょうっ!




