表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/60

第14話  大人の余裕

 「ふんふ〜ん。」

しばし、車内に秋穂あきほさんの鼻歌が響く。


「ご機嫌ですね。」

そう言うと、秋穂あきほさんは前を向いたまま答えた。


「当然。久々に九十九つくもくんと出かけてるわけだしねぇ。」

「あはは、確かに。最近は人と出かけたりしてないなぁ。アヤカシたちと一緒に行くわけにはいかないし。」

「そりゃそうでしょ。」

真面目な声で秋穂あきほさんが言う。


オレはその真剣な空気が嫌で、わざと明るく、

「そういえば昨日、久しぶりに理寿りじゅとも遊びに行ったんです。」

「………理寿りじゅくんと?」

遅れて、秋穂あきほさんが反応してくれる。


「はい、理寿りじゅと。オレが忙しいのを心配したみたいで。」

あと、普通に二人とも楽しくなるし。


「ふうん、そっかぁ、仲良いもんね、幼馴染だもんね。」

その言葉に、どこか投げやりな、諦めたような響きがこもっていて、首をかしげる。


 秋穂あきほさんはゆっくりと右手で探るようにボタンを探し、自分の座席の窓を開けた。

髪が風でパタパタと舞う。

「………め。」

なんらかをつぶやく。


「どうしましたか?」

風の音で聞こえなかった。

「なんでもないよ。………それより九十九つくもくん、何食べたい?」

秋穂あきほさんが窓を閉めながら聞いた。

また、話がさっきと同じやつに戻ってくる。


 ってか窓を開けた意味、何?


「え〜っと、おす………いいや、え〜っと………」

お寿司、と言いかけたが、秋穂あきほさんの行くお寿司はきっと回らない、一貫一貫、目の前で大将が握ってくれる、余裕で万を超えるお寿司だろう。


 ンなところで、リラックスして食べられるはずもない。


 「え?お寿司?」

秋穂あきほさんは信号で停車して、こっちを向いた。


「いや、いや、いいです!えっと、ファストフードがいいです!ミックとか。」

「あぁ、いいよ。やっぱ若い子は、そういう系が好きなのかい?」

秋穂あきほさんだって十分若いですよ。」

と、思わず声に出してしまう。


「そりゃぁどうも。でも、ボクも結構年だからなぁ。」

最近腰が痛くって、とアクセルを踏みながら大げさに言う秋穂あきほさんを見て、オレはクスッと笑った。


 「どうしたの?」

オレが笑ったのを秋穂あきほさんが見て、前を向いたまま首を傾げた。


「いいえ、なんでも。秋穂あきほさんが、全く年を取っていなくてお若いのに、自分がとてもすごい年寄りみたいに考えてるんですから。」

オレが言うと、

「あっはっは。でも、九十九つくもくんたちの年代からしたら、ボクはもう立派なおじさんだもんねぇ。」

秋穂あきほさん、幾つなんですか?」

「ひ・み・つ♡」

間髪入れず、秋穂あきほさんが答える。


「わかりました、聞くのは諦めます。」

オレが言うと、秋穂あきほさんは嬉しそうに頷いた。


「それでいいんだよ。」

大人の余裕を感じさせる声で、オレが聞くのを諦めるのなんてわかってたみたいな調子だった。


 それでオレは少し拗ねて、そっぽをむいた。


 それを見ていた秋穂あきほさんが、

「もう、拗ねないでよ〜。」

と言って、運転しながらオレの方を軽く叩いた。


「ちょっと、ちゃんと前を向いてください。」

オレは恥ずかしくなって秋穂あきほさんの手を跳ね除ける。


秋穂あきほさんは、ふふ、と満足そうに微笑んで、ハンドルをきった。


 「ほら、着いたよ。」

上手に駐車場に停めると、秋穂あきほさんはオレに向かって微笑んだ。


オレはまだ少しむくれ顔を作りながら、秋穂あきほさんの手を借りずに車を降りる。


 「もう、まだ拗ねてるの?」

秋穂あきほさんもほおを膨らませて、オレの後ろから両腕を回した。


「っ………ちょっと、秋穂あきほさん。」

流石に、公衆の面前でこれは………付き合ってるわけでもないんだし。


オレはそう思いながら秋穂あきほさんの両腕を外すと、向き直った。


「だって九十九つくもくん、まだ拗ねてるんだもん。」

「拗ねてないですよ!」

「でも、眉が少しひそまってるよ?」

「だって………秋穂あきほさん、オレにも歳教えてくれないんだもん。」

すっごい大人の余裕だし。


「だって、恥ずかしいんだもん。」

秋穂あきほさんもそう言って、そっぽを向いた。


 それから顔を見合わせて、どちらからと言うわけもなく吹き出した。

 読んでくださってありがとうございます!!

秋穂さんと九十九の関係を周りからみると、(めっちゃ仲良い)兄弟みたいな感じらしいですよ、琵琶曰く。


 あと二、三話くらいは二人の話になると思います。

いや、もっと行くかな?


 頭の中では完璧に構想ができてるので、さっさと書きたいなぁと思っています。


 それでは、次のお話でお会いしましょう!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ