表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊獣ノ巫女  作者: 紺野真夜中
第1章 霊獣ノ巫女
14/65

14

 義一の視線に気づいて友仁は明るい声で言った。

「明日、神社のお祭りがあるんだ。神社からちょうちんと屋台がずらっと並ぶんだよ」

 無邪気に輝く目を見て義一も自然と頬がゆるむ。それにしても大工の男たちがわざわざ友仁を訪ねてくるなんて、本当に大人は誰もいないようだ。子どもをひとり置いていった両親の行方に考えを巡らせていると、友仁が「あ!」と声を上げた。

「凰和様も出てください。だってこの神社のお祭りは凰和様への祈りと感謝を捧げるものなんですから」

「ええ!? そう言われても私なんにもできないよ。それっぽく見えないと思うし……」

 凰和は白い着物の襟をつまんでもじもじといじった。彼女には悪いが義一は内心で確かにとうなずく。凰和がむっと頬をふくらませにらんできた。あれ。声に出てたか? から笑いで誤魔化しながらあとずさった義一とは反対に、友仁は乗り気だ。

「大丈夫ですって。凰和様の神々しさと気品はそのままでも十分伝わります。最初にちょっとあいさつするだけでいいですから」

 考えといてください、と念を押して友仁は駆け足で門から下りていった。忙しい子どもだなと義一は小さな背を見送る。この猛暑の中、祭りの準備も大人たちに混じって進めてきたのだろうか。身の丈と同じくらい長いほうきを持って、立派な杉が何本も連なる狭くはない境内を朝からひとり掃き清めているところに、大事な巫女の部屋に見知らぬ大人の男がいたら怯えるのも無理はない。

 義一は米神をぽりぽりと掻いた。不可抗力だったが、ほんの少しだけ悪いことをしたなと思い改めた。

 そして凰和もまた義一の中で気がかりな存在となっていた。目を向けると凰和が低い欄干へふらりと近寄るものだから、とっさに手を出していた。凰和はわかっていると言うように微笑んでその場に正座した。義一も追いかけて廊下に腰を下ろし、欄干の間から足を投げ出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ