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プロローグ


 私の人生が変わっていったのはきっとこの時だろう。


「えっと……お姉様、これからよろしくお願いします」


 ぺこりとお辞儀をして、可愛い笑顔を見せる私の異母妹(いもうと)

 きっと色んな人から愛される人ってこういう子を言うのだろう。私と違い、愛想がよく、思わず守りたくなるような弱さが垣間見える見た目。

 私と違うーーいいや、違うところか真逆と思うくらい全てが正反対だ。

 生い立ち、見た目、性格。そして、これからの()()も。


「ミティリア、メルに少しでも危害を加えるような真似をするなよ。いいな?」


「………はい、お父様」


 その子()にはもう愛称で呼んでるのね。私は何年経っても、〝ミティリア〟なのに。


 どうして、お父様は私を見ようとしないの?

 どうして、私と話そうとしないの?

 どうして……その子には笑顔を見せるの?


 ああ、そっか。私が持っていないものを全て、あの子が取ったんだ。途中から私達家族に割り込んで来たくせに。


 全て全て全て全て全て全て全て全てっ!

 取っていった。


 もう、私は何も求めないし、何もいらない。


 さよなら、私の大嫌いなメルシア




 ☆ ☆ ☆




「………っ!」


 ……どうしてあの夢を今になって見たの…?


「151番! 朝だ! 早く朝食を取り、速やかに仕事をするように!」


 もう朝なんだ…。なんとまあ目覚めの悪い朝になってしまったものね。

 あの夢を見るまであの子()のことなんて忘れていたのに。


 あの後、私は最低のことをした。最初はバレない程度の小さな嫌がらせ。だが次第に大規模な嫌がらせに発展していった。


 だって嫌がらせをしても健気に「私は大丈夫ですから」って言って余計に腹立ったんだよね……。

 婚約者(仮)みたいな存在がいたけど、唯一私を見てくれる人だったせいか、執着しちゃって…嫌われるのも仕方ないわよね。婚約者が妹のことを好きになって私がする嫌がらせが発展した。ああ……本当に私ってバカよね。


 頭が冷えてから考えると今ではただの逆恨みとしか言えない。だってメルシアは何もしてないのに私が勝手に恨んで、勝手に虐めたんだもん。


「戻れるなら戻りたい……。次は絶対に虐めないから」


 ……なんて言ったけど、もう私には関係ないことよね。


 戻ったら戻ったで妹とは関わりたくない……。


 だけど、それは無理そうね…。私がまだ虐めてなかった時もよく話しかけていたもの。


『お姉様、こちらの花は何て言うんですか?』

『お姉様、お菓子作ってみました! ど、どうですか…?』

『お姉様! 私にお勉強を教えて下さい!』


 私が無視しようと健気に声をかけてくれていた。

 今思うと、あれはただ私と仲良くなりたかっただけなのかもしれない。

 私の視野の狭さには、何とも言えなくなるわ…。


「151番! 客人が来た。すぐに来るように」


 ……? 私に客人? 訪ねるような人がいたかな?

 私は取り巻きはいたけど友達はいなかった。ようはぼっちだ。一人や二人、いたにはいたけど、虐めをしていたんだもん。近寄らなくなるよね…。

 よくよく考えて見たけど誰もいない……。囚人になってから友達なんて作れないし、もう諦めるしかない雲の上の存在なんだよな…。自分で言っていてなんだけど、悲しいな。


「遅れてすみません。151番、ミティリアです」


「おお、君か…!」


 ……って誰だよ。

 如何にも胡散臭い見た目していやがるな。フード被っててよく顔見えないし。


 黒いフードに十字架の刺繍…?

 あれって、神都の聖職者じゃない。

 余計に誰か分からなくなってきた……。


「初めまして……でよろしかったでしょうか?」


「ああ、初めましてだ。俺はロマニスタ・シートラシタと言う。気軽にロスタと言ってくれ」


「は、はぁ。あの、何かご用件があって私に会いに来たんですよね? 早く手短に済ませて下さい」


「そう焦らなくてもいい」


 そう言って鞄から綺麗な瓶を出して私の前に置いて渡してきた。


 流石、神都ね……。普通、囚人との面会なんて怪しいものを持ち運べないし、渡せないもの。

 この国はけっして弱小国ではないけれど神都には逆らえない。

 この国も他の国も違う神だけれど、それぞれ神を信仰している。

 その神様が住んでいると言われるのが神都。

 それが理由なのか、どこの国も神都には逆らうことが出来ない。


「君は神に選ばれた!」


「………………は?」


 神都は頭がいかれた人ばかりだと聞いたけど、本当にそうだと思う。


 なんなんだ、この人。神様を信仰しすぎて頭を打ったのか? いや、信仰したら頭を打たないか。


「この瓶の中身は液体だ。だが、ただの液体ではない。神々の魔力が込められている液体だ。有り難く飲むように」


「…って、は? これを飲むんですか? いやですよ。得体の知れないものを飲むなって、昔言われましたもん」


 あっ、素で話してしまった。

 まあいっか。頭がいかれた聖職者に敬語使うなんていやだし。


「得体の知れないものとは何事か! 神々からお告げがあったのだ! 君は転生する資格を得た! 今日中に飲むがいい。それが期限だ。君は神々方のお告げを信じられないと言うのか?」


 いや、そもそも神様を信じてないんですけど。


 ……それを言ったら殺されそうだから言わないけど。


「あの、転生ってどう言うことですか?」


「知らない」


「……は?」


「知らないと言ってるだろう。俺はお告げを言っただけだ」


 ええぇ……。


「それでは、そなたに神からの祝福があらんことを。ジェペリア・ティルミール」


「ちょ、ちょっと待って下さい!」


 逃げるなんて卑怯じゃない!? それにさっきの言葉ってなんだったの!?


「…………」


 胡散臭い聖職者がどっかに行ったあと、時間だけが過ぎていった。


「………転生ねぇ…」


 やっぱり、気になってしまい、チラッと瓶を見てしまう。


「飲まなかったら、飲まなかったらで後々、言われそうだしな……」


 だけど、得体の知れないものを飲むのは気が引ける…。


「あれ…? 紙がある。さっきまで無かったのに」


〝聖職者には分かりやすく転生と言ったが、転生と言うより時間を巻き戻して、そこに生まれ変わらせるものだ。過去に戻りたいのなら戻ればいい。そなた次第じゃ〟


 なに、これ…。明らかに胡散臭いですけど……。


 過去……。戻れるのならば戻りたい。

 今度はあの子にちゃんと結婚おめでとうって言えるようになりたい。


 どうせ、私の人生なんて、これ以上生きていてもしょうがない。


 あの子に贖罪をしたい。

 あの子にこんなお姉さんにごめんねって謝りたい。


 そう思っていたら、気がついていた時には瓶の中身を飲んでいた。


 乗っかってやるよ、これであの子に贖罪が出来るのならば。


「………っ!!! あ、あああああぁぁっ!!」


 熱い、熱い、熱い、熱い、熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱いっ!


 こんなに苦しいなら飲むんじゃなかったっ!


 あ、やばっ、思考が………。


 プツリと何かが切れて、私はパタリと倒れた。


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