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51 反響

無事にダンジョンを出てきた重徳たちは一旦学園に向かいます。そこでは・・・・・・

 俺と歩美さんはダンジョン管理事務所を出て学園に向かって歩いている。事務所での事情聴取を終えて、このまま教室に置いてあるリュックを回収して帰宅するつもりだった。そして学園に到着して教室のドアを開けると・・・・・・ そこには俺たちを待っている4人の姿があった。



「歩美、無事で良かった」


「話は聞いたよ。鴨川さんと四條は大活躍だったみたいだね」


「さすがは師匠ッス! 尊敬するッス!」


「本当に助かった。2人は命の恩人だ」


 真っ先に声を掛けてきた二宮さんをはじめとして、ロリ長と義人が俺たちに労いの言葉を掛けてくれる。まあここまではいつものメンバーだから話は通じるんだが、最後の1人は果たして誰だろう? 同じクラスの生徒のような気がするけど、今まで接点は全くなかったように思うんだが・・・・・・



「梓ちゃんたちはわざわざ待っててくれたんですね。ありがとうございました。それから彩夏ちゃん、『命の恩人』なんて大袈裟ですから止めてください」


 おや、歩美さんはどうやら彼女と顔見知りのようだな。ダンジョンでゴブリンに包囲されて立て篭もっている間に知り合いになったのかな?



「歩美と四條はそんなところに突っ立っていないで座れ。彩夏から大体の話は聞いたが、その後どうなったか聞かせるんだ」


「そうだね、僕も興味があるからぜひとも色々と聞かせて欲しいな」


「師匠の武勇伝を聞きたいッス!」


「四條君と話すのは初めてだが私は上条彩夏だ。今後ともどうかよろしく頼む」


 二宮さんの有無を言わせない口調に背中を押されて俺と歩美さんは空いている席に腰を下ろす。ロリ長と義人もどのような顛末だったのかと期待に瞳を輝かせているな。それからもう1人は上条さんだったんだな。なんだか俺と苗字が似ているぞ。それはそうとして、ここはきちんと挨拶をしておこう。



「ああどうも、俺は四條重徳です。よろしくお願いします」


「ノリ君、彩夏ちゃんは考え方がしっかりしていてゴブリンに囲まれている間もクラスの女子たちを励ましてくれたんですよ」


「私は何も出来なかったよ。本当に助けてくれたのは歩美と四條君の2人だから」


 そうだったのか! 同じクラスの聖女はどうも付き合いにくいという先入観を抱いていたけど、こういう人も居るんだ。これは今までの考え方を改めないとダメだな。それにこうして遅くまで俺たちを待っていてくれたんだから悪い人ではないだろう。二宮さんやロリ長も彼女と普通に話しをするくらいに打ち解けているから、この場の雰囲気もいい感じだな。義人だけはどうにも女子と話しをすることに苦手意識を持っているようで、まともに顔を見て話が出来ないようだ。お前は勇者だろうが! しかも俺の弟子なんだからもっと積極的に頑張るんだ!



「それで、歩美はいつからそんな不思議な能力を身に着けたんだ?」


「これだけはいくら梓ちゃんでも言えません」


 二宮さんがいきなり歩美さんの能力に話題を振っているけど、こればかりはおいそれとは明かせないよな。何しろ神様から直接もらった能力だから、仮に教えたとしても信じてもらえないだろうし。



「でも魔法障壁を構築して、それだけでは飽き足らずに電流を流したり不思議な霧でゴブリンを消し去ったりしたんだろう?」


「まあその辺は私が仕出かしたのは間違いないです」


「歩美、幼馴染としてお前のステータスを見せて欲しい!」


 二宮さんはかなり執拗に食い下がってくるな。歩美さんは俺にどうするかという顔を向けてくる。俺が軽く頷くと、彼女は二宮さんだけにこっそりと自分のステータスを開示した。当然表側のステータスだ。




 鴨川 歩美  レベル20     女  15歳   



 職業  料理人 


 体力      83


 魔力     112


 攻撃力     41


 防御力     52


 知力      87



 保有スキル  味付け 包丁捌き



 レベルだけは大量にゴブリンを討伐したおかげで20まで上昇しているが、その他の数値はどこから見ても大した物ではない。平凡といっても過言ではない数値が並んでいるだけだ。



「なんでこんな数値でそれ程の大活躍が出来るんだ? 私の方が倍以上あるじゃないか!」


「さあ、どうなっているんでしょうね?」


 歩美さんは二宮さんの追及を煙に巻こうとしているけど、根が正直なだけに相当追い込まれているようだな。ここは俺が助け舟を出すしかないだろう。



「二宮さん、冒険者は互いの能力を深く追求するのは禁止というルールがあるから、その辺にしてもらえるかな」


「そうなのか、仕方がないな。歩美は数値上は頼りないが素晴らしい能力を持っているんだな」


「それで納得してください」


「わかった、この場は納得しよう。それで、聖女たちをダンジョンから救出してから今までどんなことが起こったんだ?」


 仕方がないから起こった出来事をありのままに話すとしようか。管理事務所でも特に緘口令は申し渡されていないから、しゃべっても問題はないんだろうな。それに将来もしかしたら戦いを挑まなければならない勇者に今のうちにこの話をしておくのは意義がある筈だ。


 俺はゴブリンを追い立てながらダンジョン1階層の中央部に向かって進んで、そこでで出くわした存在に言及する。



「魔族だと!」


「ついに魔族が現れたんだね」


「師匠! 魔族が出たんッスか!」


「あの一件の裏では魔族が糸を引いていたのか!」


 4者4様の反応だな。以外なのは上条さんが割りと冷静にこの事実を受け止めている点だ。ひょっとすると結構肝が据わっているのかな?



「四條、それでその魔族はどうなったんだ?」


「下級兵士の4体は倒したが指揮官は転移魔法で逃げた。腕を1本もらって押していたんだけど、俺自身の魔力もだいぶ心許なかったからな」


「お前は一体どうなっているんだ? 魔族を4体倒しただと!」


「さすがは四條だね。魔族相手でも余裕なんだな」


「師匠! さすがッス! 自分は一生師匠に付いていくッス!」


「魔族というのはそんなに簡単に倒せるのか?」


「彩夏ちゃん、ノリ君の行動を常識で計ってはいけませんからね」


 おいおい、義人よ! お前は勇者なんだから自分のパーティーを引っ張っていく立場なんだということを思い出せよ。まあうっかり勇者を弟子にしてしまった俺もどうかと思うが。とにかくいつまでも俺を頼っていないで、早く一人前になってくれ! 


 二宮さんはビックリした表情をしているのに対して、ロリ長は冷静に受け止めているな。こやつは常にポーカーフェイスで感情を表に表さないからな。それから上条さんは魔族がどんな相手なのか具体的なイメージが湧かないようだ。何しろ魔族の存在が確認されたのは世界でも初の出来事だろうからこれは仕方がないだろう。ただ歩美さんのフォローが俺にとってなんだかいい方向を向いていないように感じるのは気のせいだろうか


「四條、話を総合するとどうやらその魔族がゴブリンを大量に発生させていたんだね」


「信長の推察どおりだ。巨大な魔石に魔力を込めて次々にゴブリンを発生させていた。偵察と俺たちの力を計るのが目的だろう」


「そうだろうね。それで今後も同じような事件が発生する可能性を四條はどう見ている?」


「可能性はいつでもある。だがあれ程の大きさの魔石がそうそう大量に準備できるとは思えないな。今回は1階層で発生した事件だから大事になったが、次に魔族が何かを仕掛けるとしたらもっと深い階層のような気がする」


「その可能性は間違っていないと思うよ。ゴブリン程度の魔物を大量に発生させるよりも、もっと力がある魔物を生み出した方が内部を探索する冒険者に与える脅威の度合いが高いからね。当然これからダンジョンに入っていく僕たちにも脅威にはなるだろうね」


 ロリ長の分析は的確だな。悔しいが俺よりも遥かに明晰な頭脳を持っているとしか言いようがない。どうせ俺は肉体労働者タイプだから汗をかいてナンボだし。そうだ、この件に関してもう1つ付け足すことがあるんだった。



「冒険者全般というよりも魔族にとっての直接のターゲットは当面俺になるな。堂々と名乗ってやったから今頃は魔族の間に俺の手配書が回っている頃だろう」


「四條はどこまでも無茶をするんだな」


 二宮さんは呆れた表情だが、歩美さんと義人はどうやら違う思いを抱えているようだ。



「ノリ君、私はノリ君に何処までも付いて行きますからね!」


「師匠! 自分も何処までも付いていくッス!」


 歩美さんとはともかくとして、義人よ! お前は本当にそれでいいのか? もっと自分の生き方を突き詰めて考えろよ。



 こうしてしばらくダンジョンについての話をしてから、だいぶ遅い時間となったこともあってこの日は帰路に付くのだった。









 翌朝の学園では・・・・・・


 俺がギリギリの時間に登校すると、いつもよりもクラス内が閑散としている。どうやら昨日のショックが尾を引いて、聖女の半分程度が欠席しているらしい。まあ無理もないか。ダンジョンに入った初日に大量のゴブリンという手荒い洗礼を受けたら、ショックを受けない人間のほうが少数派だろう。半数が出席しているだけでも、この1ヶ月の訓練の成果だと認められるんじゃないかな。



「ノリ君、おはようございます! 朝から聖女の皆さんからたくさんお礼を頂いたんですよ!」


 歩美さんの手は手紙やら紙袋に入ったちょっとしたお菓子やらで一杯になっている。上条さんが『命の恩人』と感謝していたが、どうやらその思いはダンジョンに居合わせて聖女たちに共通するのかもしれないな。



「それからノリ君の分も預かっていますから! はいどうぞ!」


 歩美さんはニッコリしながら俺に3通の手紙を手渡す。その内容は今まで一般人としてバカにして申し訳なかったという侘びと、一番乗りで救出に来てくれたお礼だった。俺としては歩美さんの無事を確認するのが第一で彼女たちは結果的に助ける形となったんだが、こうして感謝されると悪い気はしないので黙って受け取ることにしよう。


 そういえば俺に集まる聖女たちの視線に明らかな変化が見えるな。昨日の朝までは存在を無視するかのような雰囲気に満ちていたのが、今朝は畏怖と感謝の念が綯い交ぜとなった複雑な感情を向けられている気がする。


 ああ、そうだった! 歩美さんが築いた神域に辿り着いた時は、俺は神水霧断の攻撃を浴びて血塗れだったんだ! もしかしたらゴブリンとの戦闘で血塗れになったと勘違いされているのかな? 違いますからね! ゴブリンごときは一蹴したけど、最後の関門の歩美さんの術が強力だったんですよ!



 そしてホームルームが始まるといつもの事務連絡の後で、担任が忌々しげな目で俺と歩美さんの名前を呼び上げる。



「四條と鴨川の両名は学園長室に行くように」


 今度はお約束の生徒指導室ではなくていきなり学園長室だって! しばらく顔を拝んでいなかったけど、あのジジイは元気にしているのかな? いい加減年だからいつの間にか成仏していたりして。まあそんなことはないか、相当しぶとそうなジジイだし。



「ノリ君、学園長先生に直接呼ばれるなんて、やっぱり昨日の件ですよね。どう答えたらいいでしょうか?」


「そんなに気にしなくていいんじゃないかな。そこそこ話のわかるジジイだし、事情を聞かれる程度だろうから」


「ノリ君は学園長先生とも知り合いなんですか?」


「勇者とか生活指導の先生とやりあった行きがかり上、何度か話はしているんだ」


「これからは私が一緒に居ますから、もうあんな無茶は出来ませんよ!」


「お手柔らかにお願いします」


 こうして俺と歩美さんは2人揃って学園長室の前に立って、代表して俺が重厚なドアをノックするのだった。



果たして学園長に呼び出された重徳たちは・・・・・・ 次回の投稿は土曜日の予定です。どうぞお楽しみに!


この小説を楽しく読んでいただいている皆様、どうぞ作者に対する応援の気持ちを込めたブックマークと評価をお寄せください。この所仕事が忙しいので投稿ペースが落ちていますが、何とか時間をやり繰りして少しでも早く最新話をお届けできるように頑張ります!


同時に感想もお待ちしていますので、どしどしお寄せください! いっぱい欲しいお!

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