表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/53

40 裏ステータス覚醒

ダンジョン6階層に足を踏み入れた重徳はついに・・・・・・

 6階層はこれまでの階層とは出現する魔物が大きく異なっている。今まで散々討伐を繰り返してきたゴブリンが姿を消して、代わって動物型の魔物が登場してくるようになる。5階層のボスのゴブリンキングを倒したのだからゴブリンはもう打ち止めということなのだろう。ただしコボルトとオークは相変わらず姿を見せているな。


 早速通路に躍り出てきたのはホーンラビットだな。動物型の魔物では一番弱い相手らしい。角による攻撃に注意していれば討伐は容易いそうだ。想像通りに突進してくる魔物をバールで迎撃したら一撃で片がついてしまった。なんだか拍子抜けだな。6階層はひょっとしたら5階層よりも楽勝なんじゃないか・・・・・・ そう思っていた時期もありました。




 ホーンラビットを簡単に倒したのはいいけれど、その後から次々に通路に湧き出てくるウルフは相当に手強い相手だった。何しろ今まで対戦してきた人型の魔物と体の特性や動きが全く違うんだ。おかげで低い位置から飛び掛ってくるウルフの対処には大幅に手を焼く羽目になったな。おまけに狼とよく似た魔物だけど体格とパワーが全く違う。俺が不用意に振り下ろしたバールをカッチリと口で受け止めて凄い勢いで首を振り回してきたんだ。已む無くそのバールは手放してもう一方のバールで対処するしかなかった。とにかくシェパードよりも更に一回り大きい体で迫ってくる迫力はかなりヤバいの一言に尽きる。




 だが大量に登場するウルフはそこそこ経験値を得られる魔物だったようだ。20体近く討伐すると再びレベルが上昇する音が頭の中で響いた。これでレベル15になったんだな。なかなか順調じゃないか。



 セーフティーゾーンで一旦休憩を取って簡単な食事と水分補給を終えると再び討伐を開始する。ウルフ多数とオーク数体を倒してところで再びレベルが上昇する音が響いた。さすがは6階層だな、順調にレベルが上がっているぞ。


 ウルフの討伐にも慣れてきたので、俺は左手のバールをホルダーに戻してマジックバッグから取り出した雑草バーナーを手にしている。獣は火を恐れると耳にするから物は試しで使ってみようと思ったんだけど、これが予想以上の効果を挙げたんだ。飛び掛ってくるウルフにタイミングを合わせてバーナーの火を向けると、避けることも出来ずに顔の真正面から1000度を超える高温の炎を浴びて地面を転がり回っているんだよ。


 しかもウルフは噛み付こうとして開いていた口から炎を吸い込んで、気道と肺まで焼け爛れたらしくて呼吸が出来ずに死んでいくというオマケまで付いてきた。ホームセンターで購入しておいて良かったよな。雑草バーナー様々だよ。






 こうして順調に討伐を繰り返して時間も午後3時を回っていたので、そろそろ地上に戻ろうかという時にアクシデントが発生した。転移魔法陣に向かう方向へ通路を歩いていて、何も気づかずにトラップに足を踏み入れて、突然俺の体が謎の光に包まれた。これは不味いと思った時には俺の体はスッポリとその光の中で、もう逃げる術はなかった。




「ここはどこだ?」


 謎の光が収まるとそこは見慣れない場所だった。居場所がわからない不安で自然と口から独り言が洩れ出てしまう。そこは石造りの壁で四方を囲まれた出口も何もない体育館くらいの空間で、反対側の壁には祭壇のような物があるだけだ。どうやらあの祭壇に何か仕掛けがあるようだと判断して近付こうとすると、突如空間に異変が発生する。


 黒い靄のような物が空気中で凝縮したかと思ったら、そこに1体の魔物を形作る。現れたのはついさっきまで戦いを繰り広げていたウルフ型の魔物だ。だがその個体は6階層に現れたウルフとは完全に別物だった。


 通常のウルフは茶褐色の体毛に覆われて体長は1.4メートル、体高は1メートル強だが、今目の前に現れたこいつは違う。青い体毛に包まれたその顔の高さは俺と同じ位置にあり、体全体の大きさは牛とほぼ同サイズだ。おまけに体のあちこちに血管のような黒い管が浮き出て不気味に脈を打っているぞ。


 とにかくこの目の前に立っている魔物からは危険な波動が伝わってくる。魔物の癖にやけに風格があるように感じるのは気のせいだろうか。ともかく今まで戦ってきた相手とは桁違いに危険な相手というのは間違いない。



「グルルー」


 低い呻り声が伝わってくるな。相手は俺を完全に敵として認識している。ここを脱出する鍵となりそうな祭壇と俺との間に立ちはだかっているから、何とかしてこの魔物を突破しないとならないということだよな。相当不味い展開に陥ったみたいだ。頼りはこいつがどうやらウルフと同系の魔物であるという一点だな。


 魔物はその大柄な体格に似合わない俊敏な身のこなしで俺に向かって接近して、その前足を無造作に振るってくる。その速度が俺の反応を僅かに上回ったせいで回避が遅れて辛うじてバールで受け止めるが、その圧倒的なパワーに俺の体が吹き飛ばされる。


 俺は飛ばされた勢いのままに石造りの地面をゴロゴロと転がって距離を取る。不味いぞ! 右手のバールはまだ手にしているが、飛ばされた拍子に肝心の雑草バーナーを手放しているとことに気が付いた。俺から見ると格上のこの魔物を相手にするには、あのバーナーこそがなくてはならない切り札なのだ。


 そして俺が立ち上がると同時に再び魔物の前足が飛んでくる。今度は上手く反応出来て体を翻して前足の外側に避けていくが、僅かに掠めた魔物の爪が俺の服を易々と切り裂いていった。あと3センチズレていたら、俺の脇腹が切り裂かれていたな。危ないところだった。


 その後も何度か魔物の前足の襲撃をかわしながら俺はジリジリと雑草バーナーが落ちている場所に接近する。そして左手でようやく頼もしい武器を拾い上げた。軽くスイッチを入れると炎が噴き出してくる。良かった、衝撃で壊れたりしていないくて正常に作動する。


 魔物はバーナーから噴き出す炎を見て警戒感を示して迂闊には接近してこない。ならばこちらから向かってやろうかとバールを振り上げて威嚇する。フェイントで左足を一歩踏み込むと、魔物はその動きに反応して今度は牙を剥き出しにして頭から突っ込んでくる。たとえ警戒していようが本能には逆らえないんだな。



 ギリギリまで引き付けてからバーナーの炎を向けると同時に、その巨体の突進を右に体を投げ出して避ける。素早く立ち上がって魔物が居る方向に顔を向けると、どうやらバーナーの炎はウルフ同様に効果があった。たとえ一瞬でも1000度を超える炎に顔を炙られた魔物は苦しんだ呻り声を上げている。こちらに襲い掛かるのは後回しにして、前足で顔をしきりに撫で付けているな。


 俺はチャンスとばかりに今度は尻尾の方から魔物に忍び寄って炎を浴びせる。ギャンという大きな声を上げて立ち上がった魔物は炎とは反対方向に大慌てで逃げ去るが、尻尾の毛が焼け焦げて貧相な姿を晒しているぞ。


 2度目の攻撃でどうやら後ろ足にも火傷を負ったようで魔物は片足を引き摺っている。その分動きがガックリと落ちているから、これでだいぶ有利になったな。あともう1本どちらかの足にダメージを与えれば動きを完全に封じられるだろう。



 俺はこちらを向いて威嚇する呻り声を上げている魔物に自分から接近を試みる。魔物はしきりにまだ動かせる前足で俺の接近を阻もうとするが、その前足こそが俺の狙いなんだよ。いいから早く焼かせろ!



「グギャオーーーン!」


 伸ばしてきた前足をこんがりと焼かれて魔物は苦痛に満ちた声を上げている。俺が接近しても火傷の影響で立ち上がるのが困難になっているようだな。さあて、仕上げはその顔だ。肺まで焼け爛れて死にやがれ!


 俺はバーナーを筒先を魔物の正面に向けてスイッチを入れると、そこからゴーという音を立てて炎が噴き出していく。炎は魔物の鼻や口からその熱を体内に運んでいく。夥しい熱量に内側から気管や肺を焼かれた魔物は6階層のウルフ同様に呼吸できなくなってその命が絶えていく。



 その時俺の頭の中でピコーンという音が4回鳴って、そのあとで ”テッテレー♪” という間の抜けたファンファーレが続いた。レベルが一気に4つも上昇するなんて、今戦った魔物は相当な経験値を与えてくれたんだな。そのまま様子を見ていると、俺の目の前にスタータスウインドウが自動的に開かれる。



〔おめでとうございます。レベル20を達成しましたので新たな職業が加わります。裏画面を開きますか? はい / いいえ〕


 画面の先頭にこんな表記があったから、俺は迷わずに『はい』をクリックする。そしてついに俺の目の前に姿を見せた裏ステータスはこんな感じだった。




 四條 重徳  【武】の編  【じん】の章  【兵】の階位  第1段     



 男  15歳   



 職業   天防人あまのさきもり 


 体力   431


 魔力   154


 攻撃   391


 防御力  369


 知力    57



 保有スキル  四條流古武術  身体強化  神足1段(新)


 レベル20達成報酬によって各種数値は2倍になっています。






 ははは・・・・・・ 乾いた笑いしか出てこないぞ! 呆れるくらい一気に俺のステータスが上がっちゃったよ! それから新しいスキルが追加されているな。どんな物か調べてみようかな。と思った瞬間、再び目の前の空間に靄が集まってさっきと同じ魔物が登場してくる。どうやらモタモタしていると次々に新たな魔物が登場する仕組みになっているようだ。



 俺はステータス画面を閉じてから今度はあらかじめ身体強化を掛けておく。先程は最初の一撃を食らって体ごと吹き飛ばされたからその対策だ。体力その他の上昇と相まって極端に力負けすることはないだろう。


 そして2体目を同様の方法で討伐を終えると、俺の頭の中にまたまたレベルが上昇する音が響く。今度は1回だけだったけども、この魔物は予想以上に経験値が高いんだな。折角だからここで上げられるだけレベルを上げていこうかな。それから魔物との戦いを続けていくと・・・・・・



 うーん、もう何体同じ魔物を倒したのか覚えていないくらいだ。しかも1体倒すごとに確実にレベルが1つ上昇していく。30回くらいまでは数えていたけど、もうとっくにそんな無駄な作業は止めていた。あとでステータス画面を確認すればいいだけだからね。



「それ、これで止めだ!」


 俺は横倒しになっている狼形の魔物の巨体の頚部に踵を落とす。通算レベルが50を越えた辺りから俺と魔物の力関係がはっきりと逆転していた。最初はあれだけ梃子摺っていたんだけど、今では6階層のウルフを倒すよりもお手軽に倒していく。しかも相変わらず1体倒すごとに俺のレベルが1つ上昇していくんだから、これはもう止められませんよ! さて、ちょっとステータスを確認してみようかな。


  


 四條 重徳  【武】の章  【じん】の編  【将】の階位  第18段     



 男  15歳   



 職業   天防人あまのさきもり 


 体力   4180


 魔力   1493


 攻撃   3797


 防御力  3579


 知力     57



 保有スキル  四條流古武術  身体強化  神足2段  神速1段(新)



 えーと、今朝ダンジョンに入った時には確か体力値が200そこそこだったんじゃなかったか? それがざっと20倍になっているんですけど、一体どうなっているのでしょうか? それよりも階位の欄がいつの間にか〔将〕に変わっているな。裏ステータスを最初に見た時には〔兵〕だったはずだけど・・・・・・ たぶんレベルが上昇すると出世していく仕組みなんだろう。細かいことは後からじっくりと調べるとしよう。



 ところでレベルというのは上がるにつれて必要とする経験値が増えていくから、より高レベルになると上がり難い物ではないのかな? しかし俺のレベルはそんなことは全くお構いなしに上昇し続けている。もしかしてこれが裏ステータスの恩恵なのかな? そんなことを考えているうちにまた次の魔物が現れる。こうなると完全に魔物がお客さんに見えてくるな。気前良くどしどし経験値を俺に支払ってくださいね!




 結局俺はこの謎のフロアーで約3時間を過ごして通算レベルを100まで上昇させた。それにしてもレベルが上昇するとたとえ3時間戦い続けても全く疲労を感じないな。俺は余裕の足取りで向かって奥の壁際にある祭壇に歩いていく。


 その祭壇の中央には青い色のコブシ大の魔石と宝箱が置いてある。まずは宝箱に手を掛けて留め金を外すと、中からは一対の篭手が出てくる。日本風に言えば篭手だが、宝箱に入っていたのは西洋風の5本の指が独立したガントレットと呼ぶのが相応しい品だった。無手で戦うシーンが多い俺にはおあつらえ向きの一品だな。ありがたくマジックバッグに仕舞っておこう。


 そして中央に置いてある魔石に手を掛けようとしたその時、俺の背後で再び魔物が登場する気配が伝わってくる。他に魔物が現れる鍵となる物が見当たらない以上は、この魔石が魔物発生の原因と考えるしかないな。売れば相当な金額になりそうだけど、いつまでもここに閉じ込められても居られないだろう。


 俺は魔石を握って思いっ切り地面に叩き付けると、パリンという軽い音を残して粉々に砕け散る。それとともに靄が集まって魔物の形を成そうとしていた黒い影がきれいに消え去った。どうやら俺の勘が当たったみたいだな。砕けた魔石も光の粒子になって消え去っていくぞ。



 そしてフロアーの中央には魔法陣が現れた。あの中に入って転移しろということだろうな。他に出口が見当たらない以上は従うしか手はない。俺は意を決してその魔法陣に入っていくのだった。




 

次回は重徳の裏ステータスが解明される予定です。投稿は少し間が開いて水曜日になります。どうぞお楽しみに!


3月から連載を開始しましたこの小説がキリのいい40話を迎えました。皆様の応援のおかげだと心より感謝しております。それでは40話を記念して一言作者から申し上げます。


ブックマークと(チラッ)評価が(チラッ)欲しいなぁ(チラチラッ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ