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37 歩美のステータス

神様に選ばれた歩美さん、謎に包まれた彼女の職業とは・・・・・・

 ベッドに寝かされた歩美さんはかれこれ1時間昏々と眠っている。時折体をピクリと動かすがまだ目を覚ます気配はない。


 それにしても寝顔まで本当に可愛いな。でも俺の目の前に無防備な寝顔を晒している歩美さんは、神様に選ばれた日本ではただ1人の人だ。もしかして別の国に行ったら、彼女のような人に会えるんだろうけど。


 歩美さんの寝顔を見つめながら時間だけが過ぎていく。シンとした部屋には時計の秒針の音だけが刻まれていく。その時・・・・・・



「ノリ君、手を・・・・・・」


 まだ意識を取り戻さない彼女の手がゆっくりと動き、その口からはうわ言のような声が漏れる。歩美さんの手は俺の手を無意識に求めて布団の外に延ばされてくる。



「歩美、ここにいるから心配するな」


 小さく声を掛けると俺はその手をそっと握る。俺のぬくもりを感じたその手は何かに縋るかのようにギュッと握り返してくる。誰にも邪魔されない部屋で握った手を通して俺の想いが歩美に届くといいな。それよりも早く目を覚まして欲しいけど。




 そこから30分くらいしてようやく目蓋がピクリと動いてその目がゆっくりと開かれていく。ただ歩美はまだ何も見えていないようで焦点が合わないままだ。その顔もまだ意識がはっきりとはしない朧げな表情をしている。



「歩美、気が付いたか? 俺はここに居るぞ」


「ノリ君の声が聞こえる。どこに居るんですか?」


 目は開いているがまだ俺の姿がわからないようだ。俺は握っている手に少しだけ力をこめる。



「歩美、しっかりするんだ! 俺はここに居るぞ」


「ノリ君の手・・・・・・ 傍に居んですか?」


 開かれている目には何が映っているんだろう? 歩美さんは焦点が合わない目でしきりに何かを求めてその瞳を動かしている。それから何回か瞬きを始めると次第に眼の焦点が会ってくる。



「ノリ君・・・・・・ 私の近くにノリ君が居る・・・・・・」


 目は見えてきたようだが、その口から漏れる小さな声はまるでうわ言のように呟かれるだけで、まだ会話は出来ないようだ。先程は無意識に俺に手を伸ばしてきたが、いまだに体も硬直したかのように動かせないでいる。



「歩美、心配するな。俺はここだぞ!」


「ああ、なんだかノリ君の声が聞こえてくるみたい。あっちの方に行ってみましょう」


 どうも歩美の口振りからすると彼女の意識の中でどこかを彷徨っているようだな。どうやら声を掛ける方が効果がありそうだ。早く戻って来いという気持ちを込めてそれから3回声を掛けると、歩美の意識は水底から浮上するように現実の世界に戻ってくる。



「ノリ君! 私は一体どうしていたのでしょうか?」


「あとでゆっくりと話すからそのまま体を動かせるようになるまで休んでいるんだ」


「はい、わかりました。ノリ君、手を握っていてくださいね」


「わかったから起き上がれるまでしゃべらなくていいぞ」


 神憑りというのは思った以上に体力を消耗するのかもしれないな。自分の中に別の物が入り込んでくるんだから当たり前か。歩美さんはけっして恵まれているとは言えないが、10代の平均的な体力は持っている。それがここまで消耗するんだから、神様を受け入れるというのはそれだけ大変なのだろう。


 まだ手足は動かせないようだが、椅子に座っている俺に向かってちょっとだけ首を傾けて安心した表情を浮かべている。何もしてやれない俺はせめてもと思いながら握った手から自分の気を彼女に流している。ちょっとでも回復の役に立てばいいんだけど。



「なんだかノリ君の手から暖かいものが流れてきます。とっても気持ちがいいです」


 そう言い残すと歩美さんはもう一度目を閉じる。きっと寝ている方が楽なんだろうな。無理して目を開けている必要はないから、元気になるまでゆっくりと休んでいるといい。


 再び30分が経過すると、今度は歩美さんがパッチリと目を覚ます。意識もしっかりしてきたようだ。



「ノリ君のおかげで少しずつ体に力が入るようになってきました。もう大丈夫です」


「そう言いながら俺の手を離す気はないみたいだな」


「ノリ君の手は何があっても絶対に離しませんよ! それよりもノリ君に寝顔を見られちゃいました」


「可愛い寝顔だったぞ」


「とっても恥ずかしいです。でも私もノリ君の寝顔なら時々見ていますよ」


「いつ見ているんだ? 俺は歩美の前で寝たことがあったかな?」


「ノリ君は学科の授業中に時々寝ていますから」


 そうだったのか! シラナカッタヨ! 俺は時々授業中に居眠りをするが、こうして歩美さんにチェックされているとは思わなかったぞ。これから気をつけよう。



「ところでノリ君、私はいつの間にか自分の部屋で寝ていますが、一体何があったのでしょうか?」


「それじゃあそろそろその話を歩美に伝えるとするか。実は・・・・・・」


 こうして俺は神様から聞いた話を出来るだけ正確に彼女に伝えていく。話を聞きながら歩美自身自分の身に起きたことに対して驚きを隠せない様子だ。そりゃあ、偉い神様が自分の体を使ってしゃべったなんて聞いたら普通の人間だったら驚くだろう。



「ということは私が神様に選ばれた人間ということなんですか?」


「そういう話だった」


 歩美さんはポカンとしているな。あなたが神様によって選ばれましたよ! と言われて素直に受け入れられる人間の方が少数だろう。きっとそういう人は宗教家にでもなるんだろうな。



「でも私のステータスには何も書いていなかったのですよ」


「もしかしたら何かあるかもしれないぞ。開いてみたらどうだ?」


「その前にノリ君、私を起こしてもらえますか? 力が入らなくてまだ自力では起き上がれません」


「よし、ゆっくり起こすからな」


 俺は少し布団を捲って歩美さんの体の下に両手を差し入れると少しずつ彼女の上体を起こしていく。体を支えるように背中にクッションを差し込むと、歩美さんは起き上がった姿勢を保っていられた。



「なんだか急に病人になったみたいです。もうちょっと力が入れば自分で起き上がれるんですが。ノリ君ありがとうございました」


「どういたしまして」


「それじゃあ、もう一度私のステータスを見てみますね。ステータス、オープン!」


 そこには以下のような表記があった。



 鴨川 歩美  レベル1     女  15歳   



 職業  料理人 


 体力     38


 魔力     51


 攻撃力    19


 防御力    24


 知力     87



 保有スキル  味付け 包丁捌き



      ▽





「初めて私の職業が出ましたけど料理人になっていますね。味付けのスキルがあるのはなんだか嬉しいです」


「それよりもスキルの下にある▽は何を意味しているんだ?」


「何でしょうね? クリックしろということでしょうか?」


 歩美さんが苦労しながら手を動かしてその印に触れてみると画面が切り替わる。




 【裏ステータス】 



 鴨川 歩美  レベル1     女  15歳   



 職業  天比売巫女あまのひめみこ 


 体力     76


 神力   5100


 攻撃力    38


 防御力    48


 知力     87



 保有スキル  神威霊縛しんいれいばく  

        神雷導墜しんらいどうつい  

        神炎猛爆しんえんもうばく  

        神水霧断しんすいむだん  

        神氷槍刺しんひょうそうし 

        神光断罪しんこうだんざい

        神癒霊療しんゆれいりょう  

        神壁絶隔しんへきぜつかく

        獲得経験値3倍


 注意事項   ステータスの裏表は▽をクリックするか、音声で切り替え可能です。

   

        ▽



 

 うん、全く言葉が出てこないぞ。歩美さんも自分のステータスを見てポカンと口を開いているな。ていうか、あの神様はやりすぎじゃないか? 


 職業はどうやら神様の言葉を仲介する巫女のような役割みたいだな。それから魔力の欄が神力に変わっているぞ。でもって、このばかばかしい神力の数値とこれでもかと言うくらいに並んでいるスキルは一体なんだ? 見た感じだと教えてもらうのが怖くなってくるんだけど。それよりもこんなステータスは絶対に人に見せられないよな。だから裏表の切り替えが可能になっているんだろうな。



「ノリ君、これは一体なんでしょうか?」


 歩美さん、早速考えるのを放棄しましたね。たぶん人が持ってはいけない力のような気がしてきますよ。知るのが怖いけど、きちんとわかっておかないといざという時に使えないからな。



「歩美、俺にも訳がわからないけど、さっきと同じようにクリックすると説明が出るはずだぞ。確か神様がそう言っていた」


「そうなんですか、それではまずは職業から調べてみましょう」


 歩美さんが再び力の入らない手を持ち上げてクリックしようとしたが、ちょっとズレて自分の名前に触れてしまうと、なにやら説明文が出てくる。



 鴨川歩美・・・・・・ 父、緑斎りょくさい、母、絹江きぬえとの間に生まれた長女、15歳処女で彼氏は今まで1人もいない。四條重徳に好意を寄せている。料理が得意。



「ノリ君、見ないでくださいーー!」


「ゴメン、見てしまった」


 自分のプロフィールで明かされてしまった赤裸々な真実に、歩美さんは俯いて恥ずかしさに耳まで真っ赤になっている。ここは俺がしっかりとフォローしてあげよう。公園で気持ちを伝えようと思っていたのは事実だし、今でも有効なはずだ。



「歩美、俺も同じだぞ。俺は歩美が心から大好きだ」


「えっ! ノリ君、今なんて?」


「俺は歩美が大好きだ。世界がどうなろうとも歩美を絶対に守ってやる。必要ならば魔王もこの手で倒す!」


「ノリ君、私もノリ君が大好きなんです! やっとノリ君の気持ちがわかって本当に嬉しいです!」


 見る見る歩美さんの目から涙が溢れてくる。嬉し涙で顔をくしゃくしゃにしているな。そんな歩美さんも可愛いぞ。女の子の涙は苦手だったけど、今この瞬間歩美さんが流す涙を心から嬉しく感じるな。



「うう・・・・・・ 本当はノリ君に抱き付きたいのに、まだ体が思うように動かせないのが残念です」


「それじゃあ俺からこうしてあげるよ」


 俺は歩美の両肩に手を添えてそっと彼女に顔を近づけると、そのまま唇を重ねる。最初歩美さんはビックリして目を見開いたけど、ゆっくりと目を閉じて俺を受け入れてくれた。そのまま長い時間唇を重ね合う。



「私の夢が今日は2つ叶いました!」


 長いキスのあとで歩美さんが口を開く。叶った夢ってなんだろうな?



「実は入学してからすぐにノリ君を好きになって、こうしてノリ君も私を好きでいてくれるのが1つ目の夢でした。もう1つはノリ君とキスすることです。生まれて初めてキスした相手がノリ君で本当に幸せです」


「俺も入学してすぐに歩美が好きになったんだ。こうして気持ちを伝えられて良かったよ」


「ノリ君、もう1つの夢を聞いてもらえますか?」


「教えてくれるのか?」


「はい、それは将来いつの日にかノリ君のお嫁さんになることです」


「まさかそれはタマタマを打った日に俺が口走ってしまったのを本気にしたのか?」


「それもありますけど、ノリ君の傍にずっと居たいというのが私の夢です。だから今日のお散歩もすごく楽しみにしていたんですよ」


「歩美、俺を好きでいてくれてありがとう。これからもずっと隣に居てくれ」


「はい、私はノリ君がいつまでも大好きです」


「俺も大好きだよ」


 こうして俺と歩美さんはもう一度唇を重ねた。そしてその時・・・・・・



「歩美、そろそろ気が付いた? まあまあ、やっぱり若いって良いわね。歩美、あとでちゃんと紹介してちょうだいね」


 突然の彼女の母親の乱入で、キスをしたまま固まってしまう俺たちだった。


 

勇者も聖女も簡単に置き去りにしてしまう恐ろしい力を持った巫女様が誕生しました。そしてついに2人は結ばれて・・・・・・ この続きは水曜日に投稿します。


それから無事に主人公と歩美さんがカップルになった記念にこの小説の真のタイトルに変更したいと思います。新たなタイトルは【担任「この中で勇者は手を上げてくれ」-俺以外の男子全員の手が上がったんだけど、・・・】の後半の部分が変わります。水曜日の投稿の時に変更しますのでお間違いのないようによろしくお願いいたします。


それでは最後のいつもの一言を・・・・・・


評価とブックマーク、いっぱい欲しいお!

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