表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/53

28 般若出現!

水曜日に投稿する予定がここまでズレ込んですいませんでした。令和に元号が改まった第1弾の投稿です!

 夜も更けてベッドに寝転びながら俺は独り言を呟いている。



「今日も色々とありすぎた一日だったよな」


 学園での勇者2人の模擬戦は見ているだけだったから気楽な立場だった。だがそのあとの展開が思い掛けない形になってしまったのだ。ダンジョンの4階層にカレンと出掛けたまでは良かったが、そこで学園の先輩と出くわして、ダンジョン部の入部が決定した。先輩からは明日の放課後に部室に顔を出せと言われているし、なんだか面倒事の種が増えたような気がするぞ。



 それからダンジョンを出て我が家にオークの肉を持ち帰ったら、若い門弟たちの狂喜乱舞振りが凄かったな。カレンと俺の母親が協力して肉を捌いてトンカツにしてくれたんだ。母親も中々だけど、カレンも料理上手で大人数の食事をあっという間に用意してくれた。実際に味わってみると本当に高級黒豚と遜色ない味だったのはビックリだな。


 門弟たちからは肉の出所を聞かれたが、俺は一切答えなかったし、もちろんカレンもお口にチャックをしてくれた。ダンジョンに行っているのは門弟たちにも話していないから、さすがにこの肉がオークのドロップ品だとは切り出せないだろう。たぶん肉に飢えている門弟たちにとっては、店で売っている肉だろうが魔物の肉だろうが、美味ければ関係ないのかもしれないけど。



 おや、また俺のガラケーが着信を告げているぞ。きっと歩美さんからのメールだな。どれどれ・・・・・・



「ノリ君、今日は学校から帰って何をしていたんですか? いつものように道場でお稽古でしょうか? 今日の梓ちゃんや信長君の模擬戦を見て私ももっと頑張らないといけないと思いました。明日の実習で色々と教えてくださいね。また明日会えるのがとっても楽しみです。それではおやすみなさい」


 なんという心のこもった文面! 不覚にも涙が出そうになったぞ。ただ俺がこっそりダンジョンに行っていることで歩美さんに対して一抹の後ろめたさを感じてしまう。悪いことをしている訳ではないけど、彼女には余計な心配を掛けたくないという表向きの理由で話をしていない。本音としては、もしバレたりしたらまた目の前で泣かれて、その結果俺はダンジョンに入るのを当面は諦めるのではないかという未来が十分予想されるためだ。だからこの話が表沙汰になるような局面は是が非でも避けたい。


 それはそうとして、歩美さんには差し障りのない箇条書きのような文面で返信を送っておいた。やはり俺の作文能力ではこれが限界だ。彼女のメールにこめられた気持ちには会った時に自分の口からお礼を伝えておこう。それではおやすみなさい・・・・・・






 翌朝の教室では・・・・・・



「ノリ君、おはようございます! メールの返信、とっても嬉しかったです!」


「歩美からもらったメールも嬉しかったぞ! あんなに心のこもったメールを見て不覚にも涙が出そうになったよ」


「ノリ君、本当ですか?! それじゃあ今晩も送りますから楽しみにしていてください!」


「楽しみにしているよ。あっ、担任が来たからまた後で」


「はい、また後で」


 こうして席について担任からのつまらない事務連絡を聞くと今日の午前中は実技実習の時間となる。





 5人で集まって軽く体を解してから、ロリ長、二宮さん、義人の3人は交代しながら剣の打ち合いを始める。3人の剣の技術はロリ長が一番で次に二宮さんとなっており、義人はその2人に比べると一歩も二歩も格が落ちるな。もっとも義人はスラッシュの練習に殆どの時間を費やしていたので、本格的に剣の練習を開始してから間もないせいもあるけど。もちろん義人本人はスラッシュだけではこれから先やっていけないと自覚しているから、2人に指導を受けながらしっかりと技術を体で覚えている最中だ。


 熱のこもった打ち合いをしている3人に対して、俺は歩美さんを相手にして引き続き手刀の打ち込みから投げ技に連携する動きの練習をしている。正真正銘の初心者である歩美さんが相手なので、あまりペースを上げないでややのんびりとした空気が流れている感は否めないな。するとそこへ・・・・・・



「四條、私もこの前の動きをもう一度確認しておきたいから、歩美が一段落したら相手をしてくれ」


「二宮さん、それじゃあ少し待っていてください。歩美はあと3本俺を投げたら一旦休憩にしましょう」


「ノリ君、わかりました!」


 真面目な二宮さんがロリ長と義人が打ち合っている間に俺に体術の相手をするように申し込んできた。体力が無い歩美さんがそろそろ疲れてきた頃合いだけに、俺としてもちょうどいいタイミングだ。こうして俺の相手は二宮さんにチェンジする。



「それじゃあこの前と同じように俺が掌打を放つから、振り払って最後に腕を取ってから投げに移行してください」


「わかったぞ、この前よりももっと本気で打ち込んで構わないからな」


 二宮さんが練習しているのは当然ながら歩美さんとは違ってかなり高度な技だ。殆ど実戦に近いような勢いで繰り出す俺の掌打を二宮さんは苦も無く振り払って、5回目に伸ばした俺の腕を取ると背負って投げる。



「今のはだいぶいい感じですよ!」


「よし、忘れないうちにもう1回行くぞ!」


 こうしてもう一度2人で反復していく。動きを組み合わせた流れを反復していくと体がその流れ自体をよりスムーズに行おうと最適化していくんだよな。勇者のスキルで何でもすぐに覚えてしまう二宮さんは、回数をこなすたびにどんどん動きが良くなってくる。この調子ならばもう少し俺の掌打のレベルを上げていいかな。



「それじゃあもう1本行きますよ!」


「よし、来い!」


 俺が右手を突きだすと二宮さんが左手で払う。左手を突きだす、右手が払う。それ、右、左、右と! あれ? このタイミングで俺の手を取るんじゃないの? 流れが狂ってしまったので俺は突き出した右手をそのまま止めて待つが、二宮さんはあろうことかまだ伸ばしていない俺の反対の手を取ろうと前進してくる。明らかにタイミングを間違えたんだな。最初の頃にはありがちなミスだ。だがその結果・・・・・・



 ムニュ!


 俺の手に慎ましやかではありながらも柔らかな感触が伝わってくる。何だろう、俺の手の平にスッポリと収まるこの心地よい感触は? 俺が自分の右手がある個所を見ると、そこにはしっかりと二宮さんのオッパイを包み込んでいる俺の手があった。うん、これは外見からもわかるように歩美さんよりもはるかに小さなサイズだな・・・・・・ じゃないって! 俺は二宮さんの胸を思いっ切り触っているじゃないか!


 慌てて右手を引っ込めるが、どうやら遅かったようだ。二宮さんの形相がみるみる恐ろしげな般若に変化へんげしていく。そしてノーモーションで握りしめたコブシをフック気味に放ってくる。


 ブーンという唸りが聞こえるようなそのフックは上体を引いた俺の鼻先を掠めて通り過ぎていく。今のは完全に殺意が籠っていたぞ。フック1発で確実に人間1人をあの世に送る威力を秘めている。ヤバかった! 今のは本当に危険だったぞ! だが俺がその剛腕フックを避けたことが二宮さんの怒りの炎にますます油を注いでいる。



「四條、貴様は女子の胸を鷲掴みにするとはいい根性をしているな! その忌まわしい腕の骨と指を全部バキバキに折ってやるから素直に差し出せ!」


「二宮さん、今のは事故ですからどうか気を静めてください!」


 本気だぞ! あの二宮さんの目は絶対に本気で俺の腕を折ろうとしている。これは間違いないぞ! ここは何とかそのお怒りを静めてもらわないと、血の雨が降りそうだ。ただし俺の言い分としては、鷲掴みする程のサイズではなかったと声を大にして主張したい。精々ミニアンパンぐらいだったからこそ、俺の手の平にスッポリと収まったのだ。ブラのサイズは間違いなくAカップか、思いっきり背伸びしてBだな。でもこれは口が裂けても声には出せない。



「ノリ君、私以外の女の子に気安く触れるのは絶対にダメです!」


 歩美さん、今はそんなことを議論している場合ではないです! どうか話をややこしくしないでください! お願いですから!



「師匠! ナイスなラッキースケベッス!」


「四條はまるで狙ったかように的確にターゲットを捉えるんだね」


 義人とロリ長! お前たちは完全に事の成り行きを面白がっているだろう! 特に義人! お前はあとで必ず殺す!



「さて、四條! いよいよ覚悟を決める時が来たぞ! そこに直れ!」


「二宮さん、すみませんでした!」


 俺はその場で潔く土下座を決める。俺の父親直伝の女性の怒りを静める時には有効な唯一のスキルだ。誠心誠意お詫びの気持ちを込めて俺は地面に頭を擦り付けるしか残された手段はなかった。



「梓ちゃん、ノリ君もわざとやった訳ではないですし、どうか許してやあげてください」


「まったく歩美は四條に甘すぎるぞ! こんな女子の敵は徹底的に思い知らせるべきだろう」


「こうしてノリ君も反省していますから、2度とこんな真似はしませんよね。ねえ、ノリ君!」


 歩美さん、ナイスアシストです! ちょっとだけ二宮さんの眉間の皺の数が減っているぞ。その調子だからもっとフォローしてくれ! ただ俺に念を押すように名前を呼ぶ時の目が笑っていないかったのは気のせいだろうか?



「ちっ、仕方がないな。今回だけは食堂のパフェで手を打ってやる。次はないから心して反省しろ!」


「寛大な二宮さんのお気持ちに感謝します」


 良かった! パフェで二宮さんの怒りが収まるならば安いもんだ! ぜひとも俺におごらせてください! こうして何とか俺は立ち上がることを許可された。本当に良かったよ、たとえ偶然であっても、二宮さんにはこの手のセクハラ行為は厳禁だな。それにしても理不尽な女性の怒り程恐ろしいものはないぞ! 大元の原因は二宮さんが掌打の回数を間違えたことにあるんだから。



「歩美、こんなセクハラ男の側では安心して実習が出来ない。しばらくは少し離れた場所で歩美に剣の手解きをしよう」


「わかりました」


 こうして2人は俺からタップリと距離を取って剣の素振りを開始する。ずいぶん警戒されたもんだな。そしてようやく二宮さんの怒りから解放された俺の元には、完全に部外者の立場を気取っていた義人とロリ長がやって来る。



「どうやったら師匠のようにオイシイ思いが出来るのか知りたいッス!」


「義人、本気で自分の命を懸ける覚悟があるのならいくらでも教えてやるぞ」


「やっぱり自分にはまだ早いッス! もっと修業を積んでから教えてほしいッス!」


「遠慮するな! これから俺がお前の腕を掴んで二宮さんの前に連れて行く。そのままあの人の胸に押し当ててやるから、好きなだけ触ってこい」


「師匠! それは絶対に無理ッス! リアルに殺されるッス!」


 この馬鹿者が! 俺はリアルに死にそうな目に遭ったばかりなんだぞ! お前も師を見習って命を懸けてこい!



「四條、多分その方法だと二宮さんの怒りの鉾先は確実に君に向かうよ」


「デスヨネー!」


 うん、実は俺もそうなんじゃないかと思っていた。この場はひとまずロリ長の意見を採用しておこうか。義人よ、『好奇心は猫をも殺す』という諺があるくらいだ。興味本位で二宮さん相手に『ラッキースケベを楽しんでみたい』などと口走るなよ。本物の地獄を見るぞ。いいか、これは師匠としてお前にぜひとも伝えておきたい教えだからな。



「四條は何かするたびに騒ぎを起こすな。外野として見ている方は面白いけど。さて、それよりも気分転換を兼ねて僕と打ち合いをしてみないか」


「信長、お前もいつか女子にギタギタにされる日が来たら、クラッカーを鳴らして盛大に祝ってやるから覚えていやがれ! それよりも立ち会ってやるから、このモヤモヤした気分を晴らす意味で先に俺にお前を殴らせろ!」


「四條が尋常な手段を用いるなら構わないよ。それじゃあ一勝負しようか」


 俺は木刀を、ロリ長は木剣を手に互いに構えを取る。いきなり打ち掛かって来たのはロリ長の方だ。こいつは絶対に俺に殴らせようという気なんかないぞ。いつもののらりくらりではなくて、ビシビシと鋭い剣捌きを見せながら俺に向かってくる。チクショウめ! 俺のさほど鍛錬を積んでいない太刀では、受け止めるだけで精一杯じゃないか!



「四條、早くその木刀で僕を殴って見せてくれ」


「今から反撃に移るから待っていろ!」


 口ではそう言ってみるものの、ロリ長の剣に圧倒されて全く反撃の糸口が見つからない。こうなったら東堂先輩の時のように木刀を手放してしまおうかな。だがその時、俺の右足が地面のデコボコに足を取られて、僅かにバランスを崩し掛ける。



「隙あり!」


「しまった!」


 そこに見計らったかのようなロリ長の横薙ぎが飛んできた。俺は不十分な体勢でその剣を受け止めようとするが、ロリ長の剣はその努力を嘲笑うかの如くに俺の体を吹き飛ばす。


 ゴロゴロと地面を転がりながら少しずつ勢いを殺してようやく停止した体を起こそうとした俺の手に何か触れる物があった。四條流ではたとえ小枝でも手に触れる物があれば掴まって立て! と教えられる。無意識にそこに掴まるような感じで俺は体を引き起こそうと手に力をこめると、なんだかスルリと滑り落ちるような感触が手に伝わる。そして俺が顔を上げた先には・・・・・・



 二宮さんのお尻があった。どうやら俺が掴まって体を引き起こそうとしたのは、彼女のジャージの膝の裏側の部分だったようだな。そして下から引っ張られたジャージは太ももの辺りまで摺り下げられて、パステルカラーのパンツを穿いた二宮さんのこれまた小ぶりなお尻が朝方の太陽の光を浴びて眩しく輝いている。これはまた神々しい光景を拝見いたしました。


 俺たちは二宮さんがいた場所から十分離れていたけど、ロリ長の剣に押されてジリジリと後退しながら接近して、最後に吹き飛ばされてこうしていつの間にか手が届く距離に到達したのか・・・・・・ って、そんなことはどうでもいいだろうが! 何を冷静に分析しているんだ! そんな場合じゃないだろう!



 慌てて手を放すが、二宮さんが自分の手でジャージをたくし上げるまで、彼女のパンツは約3秒間白日の下に晒されるのだった。そして先程とは比較にならない形相で二宮さんが俺を睨み付けてくる。これはもう覚悟を決める時が来たようだ。



「この変態セクハラ野郎! 素直にその首を差し出せ!」


 こうして俺は右目の周囲に青痣をこしらえて、その後歩美さんも加わったお説教を彼女たちが納得するまで食らう羽目に陥るのだった。でも、淡い水色とピンクのグラデーションになっている二宮さんのパンツが俺の脳内メモリーにしっかりと記録されたのは言うまでもない。





今回は二宮さんのサービス回となりました。次回は第8ダンジョン部に正式に入部する話になります。投稿は明日の予定です。


さて話は変わって、この場をお借りして作者の近況をお伝えします。以前もこの後書きの欄で『家族が入院をしている』とお伝えしましたが、平成の終わりに父が永眠いたしました。


おかげさまで最期を看取って、葬儀も無事に終えることができました。その間はたびたび投稿をお休みさせていただいて申し訳ありませんでした。


今はすっかり落ち着いてこうして投稿を再開できるようになっています。今後は定期的に週に3,4話皆様にお届けしていけると思いますので、引き続きこの先品を応援いただけるようよろしくお願いいたします。


投稿できなかった間、評価やブックマークをお寄せいただきまして本当にありがとうございました。最後に一言言わせていただきたいと思います。


ブックマークと評価いっぱいほしいお!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ