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2 何とか上手くやっていけそうな予感

1話に続いて投稿します。まるっきりストックがないので週に2話程度ゆっくりと投稿していきます。どうぞよろしくお願いします。

 俺のステータスを巡ってロリ長と2人で考え込んでいるところに頭の上からアルトボイスの声がかかる。はっきりとした口調の艶のある声だ。



「君は確か四條君だったね」


 ふと顔を上げて声の主を見るとそこには2人の女子が立っていた。1人は自己紹介の時に女子で唯一の勇者だといっていた子で、もう1人は俺と同じ一般人の子だ。急に声を掛けられた相手が女子だったため、あまり免疫がない俺は対応がしどろもどろになってしまう。



「は、はい! 自分は四條重徳でありましゅ!」


 どこの2等兵だよ! 声もひっくり返っているし、思いっきり語尾を噛んでいるじゃないか! 女の子を相手にする時のしゃべり方としては0点だろうが! しかもガバッと立ち上がった動きが不自然すぎるぞ!



「私は二宮にのみや あずさだ。それから隣にいるのが・・・・・・」


「はじめまして、私は鴨川かもがわ 歩美あゆみです」


 いかにも自信たっぷりな態度で立っている女勇者の二宮さんと、丁寧にお辞儀をしている鴨川さん、対照的な2人が俺の目の前にいるのだった。ちなみに二宮さんは肩まである栗色のストレートヘアで凛とした表情が印象的な美人だ。鴨川さんは黒髪をポニーテールにしている、おっとりした表情の日本的な可愛らしさがある。頼もしく感じるのは二宮さんだが、一緒にいて安心感があるのは鴨川さんかな。


 2人の自己紹介を受けて俺が何か言う前に突然ロリ長が立ち上がる。



「どうもはじめまして! 僕は斉藤信長、早速僕のハーレム作りに2人とも協力していただけるんですね。何しろエルフの幼…」


「信長、そこまでだーーー! それ以上しゃべったらお前のこのクラスでの社会的地位が地に落ちるぞ!」


 この変態ロリコン勇者は女子2人を目の前にしていきなり何を言い出すのだろうか! 俺が止めなければ新学期早々重大な事案が発生していたぞ。急にデカい声を出した俺を女子2人が怪訝な表情で見ているじゃないか!



「残念だが私は君のハーレム作りに協力する気はない」


「私も心からご遠慮させていただきます」


「出だしから躓いたーー!」


 ザマー見やがれ! ロリ長の体から溢れる不穏な空気を素早く察知した2人から速攻で見事なお断りの返事を食っているじゃないか。こいつは自分の崇高な目的のためには見境がなくなるようだな。ある意味このクラスで最大の危険人物かもしれない。さっきちょっとだけ上方修正したんだけど、俺の中でロリ長の格付けは『変態セクハラ勇者』に格下げしてやろう。



「どうやら四條君は前に座っているバカとは違って一応の常識があるようだな。実は君を見込んで頼みがある。歩美は私の幼馴染なんだが何かの間違いでこのクラスに配属されてしまった。同じ立場の君にもぜひ仲良くしてもらいたいんだ」


「なんだか場違いのクラスに来てしまってどうしていいのかわからないんです。同じ立場の者としてどうぞよろしくお願いします」


 またもや深々と頭を下げる鴨川さん、ずいぶんと腰の低い人のようだな。それにしても目の前のこの2人は幼馴染だったんだな。女勇者と一般人という違いはあっても子供の頃からの友達を思いやる二宮さんも中々人間ができているんじゃないか。特にロリ長をバカ呼ばわりした点は実に評価が高いぞ。こいつが心の底から悔い改めるまでもっと言ってやるんだ!



「えーと、俺としても絶賛戸惑い中なんですが、鴨川さん、同じ立場としてこれから色々と協力していきましょう。それから二宮さんもどうぞよろしくお願いします」


 満足に女子と話した経験がないからこの急展開に新たな戸惑いが生じているが、それはなるべく顔に出さないように俺は返事をした。どうやら好印象を与えている模様だ。なんだか今まで感じた記憶がない新たな経験値をゲットしているぞ。



「女の子同士で幼馴染ということは2人は百合なんですね! それでも構いませんから是非とも斉藤ハーレムにお越しください!」


「どこからそういう誤解が生まれるのか1度そのアホ頭をかち割ってもいいぞ。外に出るか?」


 ロリ長、これがお前の目的に懸ける執念なのか? でもきっとそのやり方では一生ハーレムなんてできないぞ。見ろ、二宮さんの額に怒りのマークが浮かんでいるじゃないか。鴨川さんはその横でどうしていいのかオロオロしている。でもそんな仕草がなんだか小動物ぽくって可愛いな。それにしても今まで修行一辺倒の生活だったのが、こうして女の子とお近づきになれるなんてこの学校も中々捨てたものではないんじゃないか?



「ひとまずは二宮さんは落ち着いてください。この信長もどうやら今の攻撃で相当参っている様子ですし」


「バカには徹底的にわからせてやる必要があると思うが?」


「もう燃え尽きる寸前の白い灰になっています」


 ロリ長の表情は虚ろで目は宙を彷徨っているな。ちょっとくらい薬が効きすぎた方がこいつのためだろう。灰になったロリ長はそのまま放置して俺は2人とこの学校に入学した経緯などをお互いに話していく。どうやら二宮さんと同じ学校に行きたいと考えた一般人の鴨川さんがこっそりと受験して合格してしまったらしい。2人は本当に仲がいいんだな。



 こうして和やかに話をしていたらオリエンテーションのために体育館に移動する時間が来てしまった。移動する時も二宮さんと鴨川さんは一緒に俺の前を歩いている。俺はというとハーレム作りの第一歩をしくじってまだ真っ白なままのロリ長に肩を貸している。そろそろ1人で歩く気力を取り戻してほしいな。教室は3階にあるから戻る時は階段の下に放置するぞ。



 こうしてオリエンテーションが終了して、ロリ長も何とか自力で歩ける程度には回復した。俺はもちろん話など聞かずにぐっすりと寝ていたよ。今日の予定はこれで終了なので教室に置いてあるリュックを背負ったら帰る支度が完了する。女子の2人はもうすでに教室を出ているみたいだな。そしてその時だった。



「よう、一般人君。なんだか女の子といい感じにしゃべっていたけど俺たちとも仲良くしようぜ」


「これから親睦を深める時間だ。楽しくやろうじゃないか!」


 ニヤニヤした表情で俺を取り囲むのは4人、もちろん『仲良く』だの『親睦』だのというのは表向きのセリフだとわかっている。こんな呼び出しなんか中学時代に飽きるほど経験しているからな。真っ白だったロリ長は急に表情を取り戻して俺にどうするのかと目で合図を送る。どうやら手を貸すのも吝かではないというサインのようだ。



「仲良くなるのは俺1人で構わないだろう。自分の力が勇者様にどのくらい通用するのか試してみたい気分なんだ」


「ハハハ、こいつはバカなのか! 一般人が俺たち勇者に敵うとでも思っているのかよ!」


「2度とこのクラスに顔出しできないくらいにタコ殴りにしてやるよ!」


 ほうほう、どうやらもう隠す気もないようで4人はあからさまに俺を狙っているんだな。こいつらは確か養殖勇者のはずだ。体力の平均が150前後で俺よりも1.5倍くらいのスペックか。それをまとめて4人となるとこれは結構な相手かもしれないな。だがな、勝負は数字だけで決まるものではないんだぞ。



「どこでも好きな所に案内しろ」


「バカが! 後悔するなよ!」


 俺は腰を浮かせかけたロリ長を右手のゼスチャーで押し留めて4人の後にくっ付いて行く。ついさっき女の子2人とお近づきになれたかと思えば、次に待っていたのはこれだよ! だがどっちかというとこの空気の方が自分の体に染み付いているから気は楽だな。女子とのやり取りは不慣れなせいで俺が構えてしまうところがあるが、相手が野郎だったら全ての遠慮を取っ払えるぞ。さあ気兼ねなく仲良くしようじゃないか!




 4人の後についてやって来たのはお馴染みの校舎裏だった。いい加減高校生になったらもう来ないだろうと思っていたけど、入学したその日にまたもや来てしまったかというデジャブーしか浮かばないな。さて、どうしようかな、ひとまずは俺をここに連れてきた理由でも聞いてみようか。闇雲にぶん殴るのはちょっと気が引けるし。



「それで、俺に何の用があるんだ?」


「決まっているだろうが! クラスにお前みたいなゴミがいるのが気に食わないんだよ!」


「お前を追い出してから、もう1人の一般人の女を俺たちがオモチャにしてやるぜ。精々遊んでから放り出してやる」


 なるほど、目的は鴨川さんか。俺と彼女たちがさっきちょっとしゃべっていたのが気に食わなかったようだな。この連中に俺が負けてしまうと鴨川さんに危機が迫るという訳だ。



「どうだかな、お前らみたいなアホには彼女は気を許さないだろう」


「女がどう思うかなんて関係ないんだよ。隙を見て人目につかない場所に連れ込んで好き勝手に扱ってやるだけだ!」


「いずれは俺たちの言いなりになるしかないんだよ!」


「たっぷりと調教してやるぜ!」


「うちのクラスで一般人の役目って、肉便器かサンドバッグくらいしかないだろう!」


「ギャハハハハ、そのとおりだな。それじゃあサンドバッグ君には今から頑張ってもらおうか」


 好き勝手言っていやがるな。こいつらには強い力に見合った精神とか倫理観といったものは備わっていないんだな。紛れもなく勇者として失格だろう。ロリ長もある意味倫理観が欠如している最右翼だが、あいつはそれでも他人の意思は尊重するからな。そうじゃなければ今目の前に立っているこいつら以下の存在に成り下がってしまうし。



「そうか、それじゃあどちらがサンドバッグか今から立場をはっきりとさせようか。好きに掛かってきていいぞ」


 俺は自然体で構えて4人の出方を伺う。臨戦態勢に入った勇者はどんなもんだろうとその動きの詳細を漏らさずに観察している。それでわかったことはただ1つだった。



(何だ、こいつら全くの素人じゃないか!)


 身体スペックこそ高いものの、まともな戦闘経験がない人間の構えだ。重心がブレているし、手の位置が全然定まっていない。それはガードなのか攻撃に移行する準備なのかまことに中途半端だ。さぞかし手強いのだろうと色々と戦法を考えて損した気分だ。



「どうしたんだ? さっさとかかって来い!」


「望みどおりにギタギタにしてやるよ、オラー、死ねやー!」


 面倒になった俺が挑発する声を上げると、その声に乗せられて1人がコブシで俺の顔面を殴り付けるかのように踏み込んでくる。今まで経験してきた喧嘩の相手とはその速度や勢いは段違いだが、どこを狙っているのかあからさま過ぎて避けるのは簡単だ。俺はコブシが顔に迫ってくるギリギリで体を沈めて回避しながら、そのまま相手の懐に飛び込む。狙うは肘打ちで相手の肋骨、右手を軽く曲げてグーに握ると、パーにした左手を合わせていく。そして相手のコブシが俺の頭上を通過した瞬間、ガラ空きの脇目掛けて左手を強く突き出す。



「ウゲーーー!」


 ゴキリという人体の骨格を破壊した手応えと呻くような悲鳴を上げて1人目が崩れ去る。痛みと折れた肋骨が肺を圧迫するせいで満足に呼吸ができずに、見る見るその顔がチアノーゼを引き起こしている。


 肘の攻撃にも色々と種類があるが、今のはカウンターで相手の肋骨を破壊する方法だ。うちの流派ではこの時右手は形に固定したままで動かさない。肘打ちの威力を出すのはグーにした右手を押し出す左手の力と相手の突進してくる勢いだ。相手の突進速度が速ければ速い程威力が増すかなりエグい攻撃だ。当たる瞬間は体を斜めにして両足でしっかり踏ん張って、腰の回転まで加えるとパーフェクトだ。


 それにしてもいくら素人が相手とはいえ、こうも鮮やかに決まるとは思わなかったぞ。中学時代の喧嘩慣れしている不良連中の方がもうちょっと歯応えがあった気がする。あいつらは動きが変則的だから時々予期しない方向から金属バットが飛んでくるんだよな。


 さて、残りは3人か。なるべく時間を掛けずに片付けたいな。俺は倒れたやつには目もくれずに、残った3人の出方を伺うのだった。




最後までお付き合いいただいてありがとうございました。次回は残る3人の勇者との対決からお話がスタートする予定です。投稿は週末になりますのでどうかしばらくお待ちください。

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