表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/53

15 ダンジョン2階層

第15話の投稿です。ブックマークと評価をお寄せいただいてありがとうございました。

 ふふふ、ゴブリン君、君たちはどうやら油断していたようだね。油断は冒険者にとって命取りだと言われているようだが、その逆も当て嵌まるのだよ!


 俺は接近する脚を止めてその場で中段蹴りを放つ。四條流ではあまり蹴り技は多用しないが、様々な場面を想定していざという時には使えるように稽古はしている。腰の回転を意識しながら振り上げた左足はやや遅れ気味に繰り出して、当たる瞬間に膝を真っ直ぐに伸ばす! うん、稽古のとおりにしっかりと出来ているな。


 ゴブリンは座ったままで驚愕の表情を浮かべている。それだけ俺の接近が素早かったのだろう。何の反応も出来ないままに顔面に蹴りを食らうと、隣にいたもう1体も巻き込んで派手に吹き飛んでいった。どうだ! これがレベル8のパワーだ!


 2体が絡まるようにしてもんどりうって転がっていったゴブリンはダメージを受けながらも何とか立ち上がろうとするが、そんな暇を与えずに俺は追撃に出る。バールを振り被って脳天目掛けて振り下ろすと、ちょうどヨタヨタと立ち上がろうとしていたゴブリンにはその一撃が致命傷となった。頭蓋骨がきれいに陥没してドサッと音を立てて倒れていく。


 もう1体はよりダメージが深かったようでまだ起き上がれなくてうつ伏せで手足を動かすだけだ。止めに首の部分を思いっきり踏み付けるとゴキリという音を立てて動かなくなった。そのまま2体とも細かい粒子のようになって消え去っていく。ダンジョンで命を失った者はたぶんこんな運命が待ち受けているんだろうな。



 ドロップアイテムはなかったので、そのまま元の道に戻って先に進みだす。期待なんかしていなかったんだからね! これまで通算でゴブリンを100体以上倒してきたけど、アイテムを落としたのは3回だけだった。僅かばかりの経験値を得て俺のレベルアップに貢献したゴブリンだけど、さすがにお財布の事情までは省みてはくれないな。落とせばラッキーだし、仕方がないか。





 そういえばステータス画面に【身体強化】というスキルがあったけど、あれはどうやって使うのかな? 今まで全然試していないからちょっと気になるな。もしかしたら魔力を利用して体を強くするのか? でも俺は魔力の使い方なんか知らないぞ。どうすればいいのかな? 取り敢えずは知っている方法でやってみようかな。


 その前に1度ステータス画面を開いてみようか。



四條 重徳  レベル8     男  15歳   



 職業   武術家 


 体力   134


 魔力    47


 攻撃力  121


 防御力  115


 知力    57



 保有スキル  四條流古武術 身体強化 気配察知



 注意事項   新たな職業はレベル20になると開示されます。





 ふむふむ、昨日はダンジョンに入るのを自重したから一昨日からレベルは全く変わっていないな。それから保有スキルの欄にはしっかりと【身体強化】と記載されている。さて、試してみるか!


 俺はステータス画面を閉じると、丹田に気持ちを集中して呼吸を整える。これは空手の息吹や中国武術の内気功と同様に体の内側にある【気】を循環させて身体能力を向上させたり、自然治癒力を高めたりする技術だ。我が四條流にも呼吸法として伝わっている。


 10秒ほど心を静めてゆっくりと息を吸ったり吐いたりしていると、体の中で何かが巡っている感覚が伝わってくる。俺がこんなダンジョンの中でのんびりと気を巡らしていられるのは気配察知のスキルのおかげだ。この周辺には動くものの気配を全く感じていない。


 よし、この辺でいいかな。呼吸を元に戻して腕を振ったり足を上げたりして確認してみると、体が軽く感じるな。ほんの僅かだが身体能力向上に役立っているみたいだ。ステータス画面を広げて確認してみると、魔力の数値には全く変化がなかった。ということは俺の身体強化は気の力で行うということだな。だったらこの魔力というのは何の役に立つんだろうな? なんとも疑問が残るぞ。魔法なんか使える訳がないし。


 仕方がない、わからないものはわからないままに保留にしておこう。もしかしたら何かのきっかけで魔力の使い道が判明するかもしれないし。待てよ! 魔力には関係なく身体強化が使えるということはダンジョンの外でも可能ということだよな。これはいいことに気がついたぞ! ロリ長や二宮さんと剣の打ち合いをする時に使ってみようか。まだパワーでは圧倒されるけど、ちょっとはマシになるんじゃないかな。


 ところでこの身体強化のスキルはどうやって元に戻すんだろうな? 出来ればいざという時に使いたいから、今は解除したいんだけど・・・・・・ おや、元に戻ったぞ! どうやら頭の中で『解除』と唱えれば元に戻る仕組みか。


 身体強化で体が軽く感じていた分だけ、元に戻った今は少し重たく感じるな。これがノーマルな状態の自分だな。そして強化を掛けたらアブノーマルに変身・・・・・・ 言い方を間違えたぞ! これではただの変態みたいだ。俺の身近にロリコン変態勇者がいるからついつられてしまった。変態はロリ長だけでいい。



 よし、通路を先に進もうか。時間を食ったけどこれは無駄ではなかったな。自分のスキルを発見するのはこれからのダンジョン攻略にも大いに役立つだろう。もしかしたらもっとレベルが上昇すると新しいスキルとか手に入るのかな? ちょっと楽しみになってきたぞ!



 通路を進むとまた前方に新たな気配を感じる。来た来た、お馴染みのゴブリンだ。あれっ、でも様子が違うな? 体が一回り大きくて手には剣を持っている。確か魔物図鑑に載っていたゴブリンの上位種のようだ。名前はえーと・・・・・・ ゴブリンソルジャーだったかな。生意気にゴブリンの分際で剣なんか手にしおって! この俺様が成敗してやるぞ。


 一瞬睨み合う俺とゴブリン、仕掛けてきたのはやつが先だった。剣を振り上げて俺に向かって襲い掛かってくる。迎え撃つ俺はすでに準備万端だ。腰のバールを素早く引き抜いて両手で構えている。



”ガキン!”


 金属同士が打ち合う音が通路に響く。俺は両腕でクロスした2本のバールでゴブリンの剣をがっちりと受け止めている。ただし今まで相手をしてきたゴブリンとは腕力が段違いだな。でも攻撃手段が剣しかないのは俺から見ると致命的な欠点だぞ。ほら、胴体がガラ空きじゃないか! 


 剣を受け止めたまま俺はガラ空きのゴブリンの股間に前蹴りを叩き込む。この前鴨川さんに蹴られたあの地獄の苦痛をお前も味わうといい!


 ゴブリンソルジャーは剣を手放して股間を押さえながら地面を転がり回っている。魔物相手にいちいち手段なんか選んでいられないから、最も手早く無力化できる方法を選んだ。男ならこの苦痛はわかるよね。


 地面に落ちている剣を遠くに蹴ってから、ゴブリンの頭目掛けてバールを振り下ろす。うん、本日のバールは大忙しだな。防御に攻撃にと我が真の友らしい活躍ぶりだ。コブリンソルジャーが消えると遠くに蹴っておいた剣まで消えちゃったよ。もしかしたら手に入るかもしれないと期待していたんだけど、やっぱりダメだったな。代わりに魔石が1つ落ちている。確かお1つ700円相当の品だったな。それほど苦労はしてないけど報酬安すぎじゃないか?



 その後、時間をかけて2階層を隈なく探索した。出てくる魔物はゴブリンとその上位種ばかりでそれほど手を焼かずに討伐してきた。時刻はそろそろ昼が近いので、周辺の安全を確認してから昼飯を取ることにしようか。近所のコンビニで売っていたおにぎりセットとカロリ○メイトで手早く済ませる。


 討伐数はゴブリンが16体とゴブリンソルジャーが5体だな。魔石が4個手に入ったけど、肝心のレベルはまだ上昇する気配がない。どうやらこの2階層でも俺のレベルが簡単に上昇するような高い経験値を得られる魔物はいないようだ。仕方がないな、これは覚悟を決めてもう1つ下の階層に向かうしかないか。



 途中で階層の中央にある転移魔法陣を確認してから3階層に下りていく階段を目指す。1階層から降りてきた階段と3階層に降りていく階段は意地が悪くこの階層の反対の位置に設置されているのでかなりの距離を歩かなくてはならない。階段に向かう時にも何体かゴブリンやその上位種が襲い掛かってきたけど、全て返り討ちにして40分掛けて目的の場所に辿り着く。


 こうして歩いてみると結構な広さがあるよな。今までは3日を掛けて1階層をエリアごとに隅々まで攻略していたから広さを意識したことはなかったけど、こうして歩いてみると本当に広く感じる。ここはもう別の世界に片足を突っ込んでいるから、空間そのものが日本とは違う場所に存在しているんだろうな。



 階段を下りていくとそこはいよいよ3階層だ。果たしてどんな魔物が出てくるのかと身構えていると、前方から唸り声が聞こえてくる。姿を現したのはイヌが2足歩行をしているような魔物だった。確か魔物図鑑によるとコボルトだったかな。イヌといってもキャンキャンと可愛らしい鳴き声で甘えて来るチワワではない。ドーベルマンのような厳ついイヌが立って歩いているのだ。それもいきなり3体まとめて登場してきやがった。



「ガウウー!」


「食らえ!」


 飛び掛ってくるコボルトの首元にバールを一閃、ゴブリンに比べるとその体の構造上首が長くなっている。バールによる打撃によって喉を潰されたコボルトは呼吸が出来ずに首元を押さえて喘いでいる。弱点がわかったら徹底的に攻める、これも四條流の鉄則だ。うちの流派に限らず大抵はそうだろうけど。


 こうして喉を潰されてピクピク痙攣しているコボルトが3体地面に並んだ。それじゃあ止めを刺しますか! ゴブリンと同じように首を踏み付けてゴキッという音がしたら完了だ。コボルトのうちの1体が魔石をドロップしてくれた。貴重な小遣い銭ゲットだぜ! 昨日購入したバール代金の元も取らないといけないから、この調子で色々と落としてもらいたいものだ。



 コボルトを無事に撃退してひとまずは中央にある転移陣に向かおうと歩いていると、またまた前方にゴブリンが現れる。でもこのゴブリンは今までのやつに比べると姿が全然違うぞ。俺が討伐してきたやつらはゴブリン伝統の腰巻スタイルだったんだけど、こいつは神父さんが着るような服を生意気にも着込んでいるし、左手には杖を持っている。


 どうやらこいつもゴブリンの上位種みたいだな。魔物図鑑に載っていたと思うんだけど、ゴブリンだけで何種類もあったからコロッと忘れたぞ。何だったかな?



「&%M!?&&%#」


 ゴブリンの口から聞き慣れない言葉が発せられると、前方に突き出した右手から突然炎が俺に向かって飛んでくる。そんなの聞いてないよ!



「おわー!」


 さすがに火は不味いからその場から飛び退いて避ける。炎は俺の頭があった場所を通り過ぎて、はるか後方で爆発する音が通路に響いた。



(ヤバいな、こいつは魔法を使うのか)


 初めてこの目にした魔法がゴブリンが放ったものだった。そうだ思い出したぞ! こいつはゴブリンメイジだ! ゴブリンにしては魔力が多くて魔法で攻撃してくるやつだ。魔物図鑑に・・・・・・ 以下省略。




「&%M!?&&%#」


 また変な言葉を口にしているな。もしかしたらあれは魔法の呪文じゃないか? そう当たりを付けると予想通りに再び炎が飛んでくる。このスピードだったら回避するにはまだまだ余裕があるな。そして魔法を撃った直後がこちらのチャンス! 俺はバールを手にして一気に駆け出す。ゴブリンメイジは慌てて呪文を唱えようとするが、残念ながら俺の脚が一歩速い。


 右手のバールがザックリと脳天に突き刺さった魔物はそのまま粒子になって消えていく。それと同時に俺の頭の中でレベルが上昇するピコーンという音が響くのだった。



 

ひとまず重徳はレベル9まで到達しました。果たしてこの3階層でどのような魔物に出会うのか、そして彼の活躍は・・・・・・ 次回の投稿は水曜日の予定です。どうぞお楽しみに!


引き続き感想、評価、ブックマークをお待ちしています。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ