透明ラップは便利です。
天気がいいので、順調です。
太陽の周りをいくつも月ぐらいの大きな星っぽいのが並んでいても気にしてはいけない。
延々と続く森の道で熊さんには出会ってないけど、ウサギさんに出会った。
2度目の魔獣はうさぎさんです。
目が赤いですが、額にユニコーンのような角が生えてます。
目が合ったとたんに、敵認定され攻撃態勢を取られました。その親の仇に出会ったような、フシャーって、とても恐ろしい上に可愛さのかけらもない。
そして、速攻、金髪ディクルトが走ったと同時にクビ飛んでた。
あっという間の出来事でした。
私が同じ目に会わなくてよかった…。
明日は我が身、ヤツに腹たっても、我慢する。
物理でクビキリは勘弁してほしい。
ウサギは後ろ足強いから、上の方に逃げる、猪系は逆に下に逃げる…らしい。
予測できれば、比較的難しくないんだって。
いやいや、難しいよね?ここでは普通なのか?
「血抜きと解体するから、カリーン着いてきて?」
「ハーイ」
できることは手伝います。
動物の解体ってしたことないな。
あんまり綺麗なもんじゃないだろうけど、若い子みたいに血で気を失ったりしないだろう多分。
解体も自分の今後にどれだけ役立つかわからない。
ここはどう考えてみてもみても近代日本ほど食の安全と量を確保できるような畜産業は進んでないと思われる。
自分の事は自分で。
自分の食べるものも自分で。
…となると、なんでも覚えてモノにしなければ!
「ふーん、ナイフはまぁ持てそーだねー。ちょっと持ち方が不安定だけど。じゃ、次はこれ剝でね。注意点は、すべるから手まで切らないことー。」
解体の前にどれだけ手伝えるかを確認するようで、山うさぎと違うもの渡されました。
あ、山うさぎさんは何か現地語で単語がでましたが、山のうさぎさんと私が認識したからか、次からの言葉は勝手に山うさぎと聞こえるようになってます。
異世界言語能力のお陰で、知らないうちに単語をドンドン覚えて認識してくれており、意思疎通に支障をきたしておりません。
ありがとう!
渡されたものは、芋みたいな見た目の片手サイズの黄色い皮に、土が少しついたものです。
うわ、トロロ芋に似てる。剥いていったら、手がべたべたするし、滑るわこれ。
異世界包丁は、包丁ではなくナイフみたいなものを渡されてました。
これが通常のものなのか、旅先だから兼用しているのかはわかりりません。慣れてないから使いにくいかも。
それにしても、この芋、ずっと持ってて、かぶれたら、やだな。
ん?そうだそうだ、ラップを手袋みたいに手に巻いてみた。
ふふーん、大成功。
………になるわけないか。手首から先が透明になったわ!
慌てて外して捨てました。あぶない、あぶない。見つかってないよね?手がズルズルになるけど、がんばって芋っぽいものの皮をいつもの里芋の要領で剥いていきました。
自炊していて、よかった。
「じゃ、まず血抜きして、そのまま解体いくよ?」
「ハイ!」
芋っぽいもので包丁さばきを確認したのか、解体作業のお手伝いが認められました。
「僕が今からするのを、シッカリ見ててヨー?血出るし、内臓も出すからね。でも解体するなら、基本だし、これが出来たら鹿もいけるからさ~」
「ハイ!」
下腹部にナイフ突き刺し、喉までビーと切り上げ、胃と腸の取り出し。
あとは、目を凝らして、ずっと見ていた。
ウサギの血が地面に広がり、手も血塗れ。
下に飛び散った血は鮮血で、魔獣なのに血の色は同じなんだ。
初めて見た解体は、覚悟があるだけまだマシ、耐えられる。
衝撃的ではあるけれど、生きていくためには、大丈夫、吐き気なんて我慢する。
40代でいろいろ余計な知識があってよかったかも。ほんと、これはじめて見たらきっついわ。
一度だけネット上で、病院の手術後の画像が流れて、見てしまったことがあった。その時の画像がもう、これね。誰だよ流した奴、と当時はむかついたけどさ、その時の方が絵はすごかった。
こちらは、匂いと感覚があるから総合的にいけば勝るとも劣らない。
とにかく、何とかじーっと見てられましたよ、よかった~。頭に刻まれて忘れられないよ。解体は、しっかりと覚えていられる気がします。
骨取りして、筋切って、お腹をすっかり取ったら、中の血を洗う。
最後に皮剥ぎしたら、ピーって切って、キレイに皮をベロって剥がせた、後ろ脚に苦労したけど。ちゃんとウサギの皮剥も終わり満足です。時間はかかったけどね。超初心者がお手伝いしてるんだもん仕方ないし!
ウサギ肉は熟成が必要らしく、本日の食事用お肉は前に獲れたモノでした。
熟成は既に後片づけしていて(早っ)処理方法までは見れなかった。
残念だけど、メモも取れないから覚えきれないか。
山ウサギさんの肉は合鴨のような味わいです。野性味感じるけど、更に野趣感ある猪肉にはない可愛い味がしたような気がした。
食欲ないけど、可愛いウサギさんの姿(敵認定後のうさぎは怖かったが)が血塗れになったのが頭から消えないけど。
頑張って食べるよ!私の血となり肉となるがいい!
初めて皮剥したウサギさんの皮を少し貰ったので、大事に透明袋に入れておく。いつか、御守りとか、チョーカーみたいに身につけておけるものを作ってみたいな。
そして、ごはんは最後までシッカリ食べました。
「カリンさん、カリンさん」
「何ですか?」
言っときますが、追加でチー鱈渡しませんからね?警戒してる私です。
「嫌ですね、わかってますよ。チー鱈は明日頂きます。表情に出て感情がわかりやすいですね」
「わかりやすくて、すみません?じゃあ何でしょうか?あ、クラッカーもダメですからね?」
「あ、それも明日くださいね。気になってたのは、お持ちのバッグなんですけど、私も触れるんですが、やっぱりバッグの中身を取り出せないし、確認できないんです、何ですかその面妖なの」
やっぱり?そうなんですよね〜。不思議ですか?同感です。でも、私まで不思議顔してたら変なので、そんなの普通でしょ?という顔にしてます。
なってるよね?表情読みやすいらしいけど、さすがにわかんないですよね?
透明バッグから出したチー鱈とクラッカーですが、私だけが引っ張り出せるんです。
さらにバッグの中のものは私だけが見えるみたいです。口が開いていてもそれは同じ。
布で包んでるから、布から出したように見えるけど、中身はなし。でも膨らみはあるので、何かはソコにあるのは理解できるというマジックな状態。
そんなことができた理由としては、多分名前。
試しに、ラップ袋に自分の名前書いてみたんです。そしたら、所有者登録できたみたいなの。フルネームで日本語で鞄に指で書きました。名前が一瞬光ったように見えたし、今も透明バッグにネームプレートのように張り付いてます。
うん、なんでなのか分からない。
けれど、これで安心安全な盗難不可バッグが出来ました。うれしい。
これは売れるんじゃないの?と一瞬思ったけど、透明で私しか見えないし他の人が取り出せない入れられないなんて、使えないなら意味ないか……。
さっき意地悪されて、体格いい団長の頭より上にあげられたときには困りました。
だけど、中身は出せない、落としたらどこにあるかわからないとか使い道ないわこれと、返却されたんです。あたりまです、そいですけどね?子供かあんたは!最初のダンディーさはどこいった。
「これは、私が買ったラップっていうもので作った鞄ですね。物を入れるとラップの中身が見えなくなります」
「そうですか、らっぷですか。こちらでは聞いた事がない素材ですね」
「自分しか見えないなんて、すごくないですか?でも、所有者の私は見えるんですよ~。透明ですが鞄の形も私にはわかるんです」
うふふ~と得意げに自慢しました。
「えー、ソレ何ですか!!拡張バッグより、機能性高いんじゃないです?」
「拡張バッグがまだ詳しくわかってないですが、前に物流革命起こしたって言ってたものですよね」
「そうですね、拡張バッグは普通のバッグと違い、中に入れたものが別空間に保管されるので、持ち運びがとても楽になるという魔道具のことです。簡易版の拡張バッグもありますが、私が持っているものは、大きな容量を持つ上級版の物ですね。これを作るためには上級魔法使いが付与する魔法力がより必要なため容量が増えるほど値が高いのです」
「そうなんですか。そうですね、便利な方が高いし、手間もかかるから仕方ないですねー」
ウンウン、頭も一緒に振り、わかったと態度で示してみた。
別空間って、異世界事情がすごいよね?便利。私の透明ラップ袋は私には役に立つけど、ほかの人には無用みたいだし。軽量化もないから、普通に重い。
「郵便や配送に必須なため商人になったら、まず揃える魔道具でこれぐらいの容量ですと値段がかなり高いんですよね」
「わかってますよ?さっき容量が多いほど高いんですって聞きました」
「私は上級魔法使いですが、空間魔法に適性がないのです。そのため、自作できないので、購入することになります」
これぐらいが基本でして、と、3段カラーボックス程を手で示すと、値段はこの基本の大きさを基準にして、倍の容量の大きさなら倍の値段ですって。軽量化の魔法も併せて付与されれば、更にもっと軽く出来るそうです。
軽くすればするほど、付加価値が上がってしまい、更に高くなるんだって。
別空間にあるなら物が中に入ってないんでしょ?軽量化する意味あるのかわかりませんが、そうゆうものなの?
バッグ自体が大きくなって重くなるとか?
中身は軽量化できるけど、入れるための袋の軽量化ができないとか。
「私が持っているものは、ここからそこぐらいの長さのたて、よこ、高さの容量に相当するんですよね。そうすると、さすがに別空間にあっても取り出しする際などに大きなものだと自力でだせない重さのものだって入ることがあるんですよ。そのための軽量化です」
ああ、確かに。物置大きかったら、ついいろいろ買いこんでしまったり、するする、するね。拡張バッグの中身が重くなってしまうのではなく、出し入れの際に外に出した時に軽量化して出し入れしやすくするんですね、へー。
というか、エルマールさんの拡張バッグ大きくないですか?軽く四畳サイズでしたよ、先ほどこれぐらいとか言ってたサイズ。
それに、持っているのは一つじゃないらしいです。この人は研究員だから、いつでもどこでも思いついたらすぐに調べたいと思う気持ちが抑えられず、本とか器具とか素材とかを金にあかせて買った拡張バッグに詰め込んでるですって。わからなくなるので用途別に持つとか、お金持ちだよ。
拡張バッグは自由人(民間人のことらしい)が、普段の生活ために使う基本サイズ(カラーボックスね)は、お値段は高いけど、なんとか手が出る値段に抑えられていて、商業ギルドの管轄するギルドとか登録商店で販売されているそうです。
ふうん。でも、あったら凄く便利よね?
小さい子供でも買物行けるし、遠方の買物とか、薬草採集も狩猟も捗りそう。そりゃ物流革命だわ。
私もほしいな。これからどこか落ち着くまでは自分の買ったりもらったりしたものを保管しないといけないからね。バッグがあれば、持ち歩くことを諦めたものも持てるし、たとえ野宿になっても、道具をいろいろ揃えておけば一人でも何とかなるかもしれない。
こんなの日本にいた頃でも欲しかった。牛乳と野菜ジュースとお米を一度に買ったときに、持ち手が紫色になったことが懐かしい。今の方が拡張バッグ切実に必要ですけどね!
ちなみに、上級騎士は一般労働者の10倍ぐらいは稼ぐらしいけど、拡張バッグは騎士の年収ほどだと聞きました。
カラーボックスの基本サイズが1万リル。
ウエイトレスで30リルの日当ですが、一体何日働いてカラーボックスサイズの拡張バッグが買えるのですか。
それよりハイクラスのバッグはは上級騎士の年収らしい。そもそも年の概念が分からないです。年収とか聞いても、前の年収概念と同じと考えていいのかな。でもまずは、一般労働者がそもそもどのぐらい稼いでいるのかとか、何日働いていて、年収となるのかを急ぎ教えてください。
え?ああ、ありがとうございます。
そうですか、ササッと一覧にしていただきありがとうございます。
んん?
一般人がこんだけ働いて、1万リルを貯めるには。そして、騎士様の年収がこう計算して、うん。
はい、すごい金額になりました。
エルマールさんの金銭感覚のように、拡張バッグを買えたらいいんですが、無一文の私には関係ない。
一生買える見込みなさそうです。
後からヨルンくんに聞いたら、自由民も基本サイズの拡張バッグでさえ、いつか欲しい魔道具の1番に燦然と輝く憧れの品なんだそうです。
基本でさえ買える気がしない…。
拡張バッグの大きいバージョンなんて、エルマールさんが普段使いしているのが異常なんですよ。
これだから富豪は。
エルマールさんが要らなくなった拡張バッグを福利厚生の一環でくれたらいいなとちょっと思ったカリンです。
口に出してないから、厚かましくないよね?