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色持ちって魔力が多いらしい。所変われば違うのね価値観って。

異世界生活2日目ぐらいの桂花梨(カツラカリン)

現地年齢190です。


「ところで、色持ちってなんですか?私を連れてくと、差し障りがあるとはどういう意味でしょうか?」


ちゃんと答えて欲しいですよ、今後の生活に支障をきたしたら困ります。


なんでわからないのか分からないって顔されましたが、まだこっちきて2日目あたりです、異世界情報など知る訳がありません。

そんな怪訝な顔してみないでもらえません?そこの金髪。


「カリンは、黒髪で黒に近い瞳だから、魔力が多いって、すぐバレんだよ、みんな囲い込みに入るだろ?」


そうなの?


「黒いと魔力が多いの?それは絶対変わらないの?」


銀髪で魔法チートはないのでしょうか。

突然変異レベルでしか薄い色持ちの魔法使いはいないのかな。


「そうですね、私も髪が黒ですが、魔力が普通の方達に比べて多いですね。その魔力と魔力量が認められて現在魔法騎士ですし。

確かに例外はあるかもしれませんが一般的には濃い色を持つ方ほど魔力は多く、大きな魔法を使うことができると認識されています」


知識担当エルマールさんが答えてくれます。

濃い色ほど魔力が多いなら、黒が一番濃いよね、確かに。


けれど、魔法ですか?

日本にいるときには、お目にかかったことないですよ。

魔法って言葉には夢と浪漫の匂いがします。

ですが日本人、東南アジア系、レゲエの国の人たちまでも含めれば相当数の黒髪保有者がいましたけど魔法を使えるなんて聞いたことない。

映画や小説に魔女が出てくるけど、純日本人が魔女として出てくることになんか違和感感じるぐらい、ない。

現代日本で魔法は、人智を超えた何か、超常現象な扱いですよね。


うーん。あっちでは、ありふれた色としか思えない、この色合い。

それがこっちでは、滅多にお目にかかれないほど超貴重。


日本人ならほぼ全員魔法使い。

それも、驚く程の魔法を使えるとか。


実感ないな。


「黒以外にも、濃紺とか真紅とか濃色はたくさんある筈ですが、やはり黒色が一番なんでしょうか」


ありふれてて、なんの変哲もない髪ですが…。


「黒が全ての色に増して力があるというのが通説ですね。これも、全ての方に当てはまるかどうかは、わかりかねますが。

ただ、私の場合、学園在学中や魔法騎士総会に出席した中で言えば、私より上位の魔力の方はそう多くいらっしゃいませんでしたね。

もちろん、魔力のみなので、その力を使って実際に顕現させた場合の、使い所が巧みな方と魔力の力押し一辺倒な方など比べれば、どちらがより最終的に大きな影響を及ぼすか、測れるものではありません。ただ、魔力量そのものは、大きな基準の一つです」


エルマールさんは、魔力もあるけど見た目25歳で副団長。騎士総会に出席もする人物なんて、頭もいいんでしょうね、きっと。


「魔力は多いほど、良いことなんでしょうか?だから囲い取り込んでおくことで、人材確保ができてない人よりも何か優位になるんでしょうか。それとも数が少ないから、囲い込んで、保護してくれているのですか?」


絶滅危惧種的な扱いですかね?


「色持ちか?数は少ないぜー?うちの町じゃ、真っ黒ってのはいなかった。濃紺はいたな。学園行った」


「学園?魔法力のある人が通う学校なんでしょうか?では、魔力があるエルマールさんは同じところに通われてたんですか?」


「魔法学校はこの国では一校しかございませんので、私もそこの学生でしたよ」


「俺は薄い色見たらわかんだろ?騎士学校ってのが別にあっから、そこ行った。」


「魔法を扱う学園は能力の高い、入学時点での魔力量が多い順に入学許可が下りるんですよ」


魔法学校!

えええ、なんだか、なんだかほんとの異世界だ。


「そうだな、国が設立した魔力があるのが通うトコだ。ちっせー時に見つかれば普通は教会行くし、そこで分かんない時は、力がわかり次第で学園だな。魔力が弱いのは、別のとこにあって、他の教科の勉強もするぜ。そっちの学校は騎士やら商人やら希望するのも混ざるな」


ええと、魔力持ちと判明したら、小さい時は教会で、大きかったら学園に行くと。


それ、子供の内に家族と離ればなれなの?


歳の刻みが違うので、判断基準が曖昧だな。どういう捉え方が正しいのかわかりません。

小さい時が50歳なら、親元離れても問題なさそう?


「んで、200。成人だな。そこまで見つかんなければ、本人単独でギルド登録が出来るようになるんだ。

そこで、はじめて自分の選択ができるようになる。自分の意思で選べばいい。大人だから自分で学園に行く、行かない、教会か学園かも選べる。

もし選択の強要をされても、ギルド登録後に本人が魔力供給した実績があってギルドへの貢献が認められたらギルドが護ることになる。

ほかだと、成人前でも上位貴族の後援者がいれば、問答無用で教会、学園に行かされるっていう拘束力はないな!」


自分の選択肢は200から。その前は問答無用で教会か魔法学校行き。

魔法学校は楽しそうだけどな。


「町にいた時のあいつは子供ん時は、親と同じで髪は水色だった。だから教会には取り上げられなかったんだ。けど、デカくなったら色が乗ってき出して、学園行き決定。あと少しで200だったんだけど見つけられたから、泣く泣く学園行った」


泣く泣く行った?

問答無用で行くのは聞いたけど、そんなに行きたくない所なの?


「今は連絡とってねーし、とれねーし、どうしてんのか分かんね」


「ディクルトのいたところは、ちいさい町なんで少ないけどね〜。大きいとこなら色持ち自体は結構いるんだ〜。黒はほぼないけどね。制度は一緒だね〜」


ヨルンくんは、なんか物知りですね。


「あの聞きたいんですけど、親から子供を取りあげようとしても、希望しない親も中にはいるでしょう?学園とか教会とかに行かされる、それは絶対に仕方ないことなんですか?町や国で定められた法律のようなものがあるのでしょうか?

それとも魔法が暴走するからとか、魔力が篭りすぎると身体をこわしてしまうとか理由があるのでしょうか」


「まぁね〜あそういうのも確かにあったかもね。今は平民の中に魔力ある人がほぼいないからあまり知られてないけど、そんな大義名分なしに連れて行くのは流石に無理じゃない?

魔力持ちを無理に連れて行っていいとかの法はないよ〜。今、平民ばっかの町に強力な魔力を持って生まれるなんて子はほとんどいなくなったけど、教会は見つけ次第に制御を教えるとかを建前にして連れてくらしい、噂では。最近は魔石の供給が需要に追いついてないから、もっとひどい事になってるかもしれないな〜」


魔力持ちはどこの町や街でも見つけられしだい連行される。

魔力持ちがほぼ根こそぎで集められて、居住者数の多い街はまだしも町にはいなくなってる。


これ、やばくないですかね。

ちょっと、どうしましょう。

私は元々焦茶色にオシャレ染めしてた筈なんですが、こっちの飛ばされてきた時に黒に戻ってます。

さらに若返り、自称190となってますが、大丈夫ですか?選択肢ない成人前です。

教会、いや学園に強制通学ですか。


「それにしても、どうしても連れて行くんですか?残された親は納得しないんじゃないでしょうか」


「まぁね〜、子どもを持ってかれるなんてヒドイ話しだよねぇ。だけど、教会の洗礼式は決められたもので、住民登録も兼ねてるから省けない。学園は支配層の貴族から強烈な圧力がかかってるんで、200の成人前までに色持ち見つけるために必死だよ。金と名誉って、ホント怖いね〜」


お金と名誉?


「えっと、お金とか名誉のために親から子どもを取りあげるんですか?供給が追いつかないから魔力を供給させることが出来る人を多く集めてるんですよね多分。魔力でお金と名誉を受けられるんですか?」


「学園、教会ともお金は手に入れやすいよ〜。生みの親へは確かに教会も学園も子ども連れ出す時に、大金を置いていくらしいけどさ。その親にしたら、そのまま大きく育てていけばギルドでもっとその子供が稼げるのがわかってるんだよ〜。お金に多少余裕あるなら渡さないよ学園にも教会にも。

第一、可愛い我が子を、選民思想持ってる貴族あがりの神官とか貴族ばっかりが優遇される教会と学園に行かせたい?行かせたくないはずだよね。

たとえガメツイ親でも、将来金を生むのわかってて手放したくないのに、普通の親ならそんなの関係なく一緒に居たいよね」


「…親の意向を無視してでも連れて行って、教会と学園では子どもに何をさせてるんですか?」


「教会は、将来逆らえないように洗脳的な教義を叩きこんだ上で、見目が良いのは高位の貴族か高額な金を積み上げた奴のとこに売られてるって噂だよ。

一応嫁か養女って体裁は整えてるらしい。

嫁・養女、婿・息子になれなかった売れ残りはギルドの魔力供給で稼がせてるようだよ。どっちにしても本人は小さい頃から教育されているから、そこは納得してんのか報酬を寄付させても大丈夫みたいだよ~。だから小さいうちに入れとく教会のがすんなり進むみたいだね」


教会って、聖職者が毎日敬虔に神さまにお祈りを捧げるっていう場所ではないのか。

建前でも、お金とか欲とかに遠いとこに存在するんではないのですか?


ここは違う?


確かにね、あっちにいた頃だって、聖戦だって言い放ち、他人を害する歪んだ集団はいたけれど、ここは国教会が自ら人身売買している。

そして、それを容認しているこの世情。


「……今は生活していくのに、魔力は不可欠なんだよね〜。商業ギルドの拡張バッグは恐ろしく魔力食う。でもさ、流通の根本を変えてしまったんだ。魔力があれば拡張バッグで単独で大量に、それも速くいろんな物の運搬が出来るようになった。馬も人手も費用もかからない。なんて便利、なんて素晴らしい」


拡張バッグ?

ライトノベルでよくあるインベントリとか異次元収納のことでしょうか。


「他にも魔力石に魔力を供給すれば、領地争いでも戦争でも有利になります」


そうなの?

有利な使い道がわからないけど。


「今よりさらに快適な生活を送るために魔道具は欠かせません。魔道具と魔力は切っても切れない関係です。作るにも、使うにも、維持するにも魔力は不可欠ですから」


魔力持ちは今では、優位な立場を得る手段にとても有効なんですよと、穏やかな微笑付きのエルマールさんですが、言ってる事は不穏ですよ、それ。


「そうなんだよなぁ。腕っ節が強くても魔法が使われれば、魔法でしか対抗できないんだ今んとこ。そん時は、自慢の剣術も役に立てられない。

俺はこっちで家買って、鄙びた便利悪いとこにいる親呼んでやりたいんだ。けどこのところ俺のが功績あげても派手な魔力使える奴のが、級は上がりやすい。実戦で役に立てるかどうかのが大事だろうと思っちゃいるが、上はそう思わないらしい」


級っていうのが上がると昇進になるけど、今は魔法使える方が出世しやすいと。ふんふん。


「でもな!魔法はスゲーけど、実際にそれを活かして使うには数が足りてない。無理させた魔法使いはそのまま使い潰されてるのも多いんだ。そしたら、最後は基本に立ち返って武術だろ?今は魔法に頼って使いすぎ。結局自分の首締めてんじゃねーの?数減るばっかじゃね?」


うん、そしたら私、危険よね。

黒髪、黒瞳、かなり状況不味いよね。

魔力あったら、使い潰されてしまうんだって。

危険信号ピカピカしてます。


「学園も基本、教会とおんなじだよな。引き取った子どもの保護者として立つ学園は、そいつらを嫁でも婿でも養子でもいい、同じ学園に通う貴族の家に大金積ませて学園が納得したら実質的に引き渡す。

ここでも、教育がしっかり施されてっから、不満を言うのはいないらしい。本当かどうかは知らね。それで貴族の嫁、婿なら子どもバンバン産ませて、濃いのが生まれたらそれだけで使い所いっぱいだしな、買った貴族は大当たりだ。養子にしたら、払った以上に嫁がせるために魔力活かした職で働かせてるか、高位の身分を引き寄せるため、キナ臭いとこに貸し出して恩を売ったりな。

金は融通してもらえる、政治的意見が通りやすくなるとかあるんじゃね?」


うん。

私は魔力あっても、隠すことは必須だな。


「学園は、自分達が連れてきた魔力持ちを同じ学園に通う貴族向けに秘密裏に競りに出してる噂だけど、ほぼ間違いないだろな」


「秘密裏でも競りとか無理あるでしょう?」


「学園は成人前の色持ちを学園に取り込む。競りに出してるって言うのは、そこで見合わせて高値をつけられたのから貴族に買われてくからだ。廊下で授業で食堂で、彼ら貴族は見てるんだ。自分達の一族に相応しいのかどうか、組み込む価値がある血かどうか。逆に、学園に引き込まれた魔力持ちは、なるべくたくさん子供を産むように言われ続けてたはずだ。その通り、たくさん産まれた子供の中に魔力持ちがいれば、平民でも大いに役に立てた嫁として、婿として相応の待遇を得られるからな」


「集団見合い…」


「見合い目的の爵位持ちがこぞって参加するぜ?学園に通う子は、淑女教育、高等教育も存分に施されてる。なんせ、学園はなるべく高位に売り付けておきたいからさ。だから、あそこは貴族にとっては、いいとこだけど、平民にとっては、将来が左右される場所だから、より良い先に行けるように必死だってさ」


今の学園も教会もおかしーぜ、ぶつぶつ文句言うディクルトですが、全くです。

その通りですよ!


「……大きく外れてはないが、別に、平民だけが搾取されているわけではない。魔力があるとわかれば、低位貴族は高位貴族に逆らえない。無理に養子に出されてもいるし、強硬手段を取られていることもある。

平民ながら、貴族として、食べるものも住む場所も、到底平民のままでは及ばない限りの贅沢が出来る。望めるなら、その地位にありたいと願う者もいるだろう。実際に魔力があるとわかれば、高位貴族と唸るほどの金持ちが、奪うように魔力持ちを取りにいくのが現状だと思う。

魔力持ちが自殺したり、病気になると、元も子もない。大事に扱われる事が多いとは聞くが、もちろん酷い扱いを受けていることもあるだろう」


ため息ついた団長も、あんまり気持ちの良い話しではないらしい。


だけどそれって、やっぱり理不尽だよね?

連れ出された子供は逆らえないように教育されているだけじゃない。

親なら必死で隠すよね。

私だって逃がせるなら逃がしてる、そんなところに行かせたくない。


「ほかにも、娼館ならすぐに人が指名するから、店の売り上げ伸びんぜー」


「そこまで言わなくてもいいだろうに、余計なことを…」


コイツには危機感っていうものがないから、ここでしっかり頭に入れた方がいいんじゃね、もうすこし慣れてからでも十分だ、いやいやコイツ危ないですよこのままだととか団長と金髪がコソコソ話してる。


「しょうかん?」


「基本女が春を売るとこだな」


「はる……はる?しょうかん…、あ、あー娼館」


あれ、払った金額稼がせるのにギルドで魔力供給で稼がせたり、キナ臭いとこに恩を売らせたりとかじゃないの?


「ギルドで魔力供給したりじゃないの?」


「女で、貴族に嫁いだのに、全く孕まないとか孕めないような病気にかかったら売られる事も…ある」


「子どもができないから、売られてしまうの?今まで奥さんとして隣にいた人なんじゃない」


「……娼館で魔力もちを買う男は富くじみたいなもんだ。もしかしたら、子が出来る可能性があるのが春売りに出るからな。

万一出来たら、子の保護者になれる。大金持ちだ。だから、買う男は日付と自分の特徴を細かく書き残すようになってる。

後で、生まれた子がいたら、その特徴とどの買った男が親なのか探しやすいからな。

普通の女買う値段じゃないし、目的も多分そっちのが多い」


何それ、なにそれ。

ありえない。

人の事をなんだと、なんて事してんのよ。


「ギルドには行かないの?成人してるんでしょう?」


「ギルドに保護を求められたら困るから外出制限するし、監視もついてんぜ。買った男が拐かしするかもしんねーから、出入り出来る男も規制があるしな」


「ギルドで払われる報酬はまぁ言ったら出来高制なんで、売った貴族が払いを受け取れんのは先になる。金払いは娼館のがいいんだよ。現金化がすぐ出来る。現金化できてなに買うんだかな、新しい魔力持ちか?人でなしだな、そんな奴」


ディクルトはもしかしたら、町の友達だったっていう人を思い出してるのかな。

本当だよ、人でなしだよ。ろくでなしだよ。

奥さんを、そんなとこに売る神経がわからない。


高位の貴族だから。

自分たちと違う平民だから。

区別してるの?

魔力だけが目的で、同じ場所に立つ人だとは認めていない?


「ギルドが助けたりはしてくれない?」


だって、始まりは拡張バッグの流通革命と快適魔法生活という魔道具を提供したギルドのために魔力持ち狩りがはじまったんでしょう?


「まーね、ギルドだって、あくまでも商人とか冒険者の管理業務請負業の取り纏めでしょう〜。

国家動かしてるような支配層貴族とまともに対峙するようなことなんてしないよ。

騎士団とかみたいに国民守る義務がないぶん、捜査権限もないとこだよ〜。依頼されてもないのに勝手に人様の財産、ここで言う売られる魔力持ちのことね、を動かせないし、娼館への売りも阻止できない!」


「不幸かもしれないが、娼館にいる間に子ができないことが確定した時点で契約は終了する。稼いだうちの決められた割合で彼女達にも金が渡る。かなりの額だから、その後はギルドで保護を受けて魔力供給を少しすれば十分生活に不自由はないだろう」


子ができないことが確定。

女じゃなくなったらってこと?

ああ、月のモノがなくなるか、子宮も病気とかで機能しないのが確認できたらってこと?


彼女達が望んでそんな場所に行くだろうか?

ご飯が食べれても、美味しいだろうか。

国ぐるみで希望していない事を強要されていて、自分の価値を見失わないだろうか。


もっと酷い扱いをされる人もいるだろう。

彼女達が世界で一番不幸ではないだろう。

だけど、そんな状況をわざわざ作る必要ないでしょう?

そこに追いやる必要もないでしょう?


ディクルトは、お前アブねーぜと態度は悪いし、コイツ頭悪くねと口も悪い。

でも、学園に泣く泣く行った友達と私を重ねたのかもしれない。


もかしたら辿っていたかもしれない未来。

知らず、私もその友達と同じ場所に行くかもしれない。


怖い、無理。わからない世界で、理解できない理由で、自分の未来が塗り潰される。



涙が勝手に溢れてた。





「カリンのとこは、そんなにいっぱい黒い髪の人がいるんだ?珍しいよね。

そんだけ魔力あるはずなのに、なんで自分の魔力わかんないの?」


「私の国では、魔法がそもそもありません。今私が魔力持ちというなら、魔力が出せないような力が働いていたんでしょうか。

知っている限り、私以外にも魔法とか魔力はありませんでした」


涙は止まらないが、なるだけ情報を仕入れておかなければ、未来が暗い。


魔法ですか、地球規模でないよ。

だって魔法でしょ?

そんな怪奇現象起こす人って、いなかったよ。知らないとこではあったかもしれないけど、多分ないよね。


「そうーなんだー。じゃあ、気をつけないと。知らない間に誘拐されて、高値取引されないようにね?」


可愛い笑顔付きで背筋凍ることを言うこの子とは友達になれないと思います。


「また貴方は…。あんまり怯えさせないように。カリンの顔色悪いまま戻りませんし、涙が止まりそうにないでしょう、可哀想に」


「たしかに、もう少し気を使え。……大きく間違ってはないがな」


団長も間違ってないと同調してきました。

もう魔力になんの魅力も感じません。

魔法少女になりたくない。


これから私にどうしろと!

そんな恐ろしいとこに、行くなんて絶対いや。でもでも、これから働かないと食べていけないよ!非力だし、体力、持久力ともにない。パソコンスキルがこちらで役に立つなんてことはないだろう。パソコンないし。

一般事務員だったから、役立ちそうな看護師スキルで人助け、のようなこともできない。一人暮らしで身につけた掃除洗濯家事料理。人に自慢出来る水準ではない程々(ほどほど)レベル。ナイナイ尽くしのこの状況、どうすればいいの。


身売りは嫌です。

自力で真っ当に生きたいの。

ダンナの一存で娼館行きが決まる未来なんてゴメンです。


私自身は大したチート才能ないようです。

それならば、売れるかどうかわからないけど、在庫切れの心配なさそうなチーズ鱈とクラッカーをこの人たちに買い取ってもらうとか?

売り物になるなら、できれば買取りしてほしい。あと、就職の世話とか、今後んl身の振り方の相談もしたい。


シラナイアイダニヨメハイヤ。

キヅケバショウフモイヤゼッタイ


「カリンさんにはまだどれほどの力があるのかわかりません。

領都に帰ってから、騎士団で測定できる法具で確認後、適正な魔法師に指導してもらうことにしましょうか。

団長には結果を先に伝えるよう手配します。良いですか?」


なんか上級魔法騎士の副団長と、寡黙に頷く総団長がわたしの未来を勝手に決めましたよ!いやいや、そこ私も混ぜてくれません?


「魔法騎士団って、女いたか?アー、あのオトコオンナいたな。アイツ、言葉もカッコも変だけど、魔法だけはできるか。ま、いいんじゃね?」


ヨカッタナーと言いながら、バシバシ叩くな!痛いんだよ。あんた筋肉あるんだから手加減してよ!


「では、そろそろ行きますか〜?カリンはあんまり役に立たないんだから、洗うのと片付けるの手伝ってよね」


ついでに顔洗ってきて、盛大に面白い顔になってるからとか余計なんですけど。

わかってるわ!

言われなくても洗ってくるから。いっぱい泣いたし、悔しいしでもう顔は大変残念な事になっているだろう。


「僕が最初にするところ、見といてねよね。あんまり手間かけさせないでよ?何回もおなじこと言わされたらキレるから」


筋肉のアイツと嫌味なコイツは友達。

やっぱりこいつら類友ってヤツでしょ?

文句多いとこが似てるんじゃないの。




「カリーン、こっち来て、これ持って。僕こっちの桶とか一式持ってくから。川はあっちだけど、勝手にどこかに行かないで、ちゃんと後について歩いてよね?」


ハイハイ。


「カリンは魔力あるけど、使えないなら宝の持ち腐れだね。僕がもう少し他人の魔力制御できたら、パパーと使って、サラっと仕事してすぐ終わらせるのに〜」


人の魔力をパパーっと気前よく使うのはダメだと思います。


「ここらへんは森の中だけど比較的領都に近いから大型魔獣が出ないって言われてるよ。だけど魔力持ちは、魔獣からしたら、手っ取り早く魔力増加と回復ができるんだって。カリンみたいな、小さくて逃げ足遅い個体は狙われやすいんだよ〜」


「っそうなんですか?!」


そうなんだ!確かにそうだろ。気を引き締めていかないと、野獣か魔獣かに狙われる。


「僕って見習いだから、正騎士に上がったばっかなんで、襲われても助けてあげられないからね。自力で何とかしてよね?助けてあげられなくても恨まないでよ〜仕方ないでしょ、だって雑用兵兼衛生兵なんて討伐に期待なんてされてないんだもんねー。僕まだ見習いだから、鍛錬も訓練も魔力制御もまだまだなんだ」


だから僕から助力は諦めて?とかなんとか、やっぱりコイツ嫌い…

わざわざ言わなくてもいいことを、ペラペラと。


「洗ったの?じゃ、ここに纏めといて。後から風魔法で乾かしてもらうから」


「魔法使うの?拭いたらすぐ終わりそうだけど」


「拭いたら、時間かかるでしょ〜!今は時間押してるし、ここからは、魔力使うようなことなさそうだからね。魔力節約より、速度重視かな〜」


と僕は判断したけどね、団長達が決めることだから。魔力温存のがいいなら、その場で拭けばいいし。

とりあえず、急いでよー?

早歩きで、話しながらだから、そんな風に聞こえたんだけど、ちゃんとこの子も考えて動いてる。


さっきから見てたけど仕事の流れに無駄がなかった。段取りにも全く問題ないと思う。


ふーん。

安心安全な日本で、のほほんとした仕事してた私に言われたくないだろうけど。


「そこに置いといてくれ。エルマールが乾かしたら、後を片してすぐに出る。あとカリンはここの櫛で髪梳いとけ」


普通に言われたよ?


「え、え?団長?髪梳くって?いきなりですけど、なんでですか?なんか黒い髪を纏めて隠すとかですか?」


見つけられないように偽装するの?


「ああ、そうか、そうだな。後で布で髪色わからない程度に纏めておいてくれ。

それと別に髪を梳いた時に出る抜けた髪はここの布の上な」


ハイ?抜けた髪をどうするって?


「抜けた毛で何かするんですか?」


異世界引くわー。呪いの人形作るとかしか思いつかないんだけど?

それか、黒髪は徹底的に隠さないとダメなのかな。落ちた毛の始末まで考えないといけないとかって面倒そう。そこまで隠す必要があるのか。これから、ごみ出しも大変そう。


「ああ、今までならエルマールだけだったが、カリンのも長いし、魔力が篭ってるから馬のいい魔力補助になるだろう」


「カリンさん?ここに置いてるんで。私はこちらの布を使うので、貴方はそちらのにどうぞ。魔力量を簡易ですが計った上で与えたいので、私のものとは別にしましたよ」


二人とも普通だよ!!!

なんだよ、抜け毛残すって。

隠すためじゃなく、食べさせてみたり、魔力計量のためなんですか。

ところで、魔力補助ってさ、馬って髪食べるの?近寄ったら、頭齧られそうで怖いんだけど?


…やっぱり誰か、ここの常識を誰か教えて下さい!


髪の毛って魔力増加材になるの?

普通なの、それって普通?

睫毛はどうよ。

体毛なんて、どうなんの?

日本で光脱毛してて、心底よかった。心から思う。肌のお手入れの度に、処理後のものを馬に食べさせたいとか言われたら私の羞恥心が天元突破(てんげんとっぱ)するっての。


異世界コワイ。







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