転移しました。
現在私は途方にくれている。
見渡す限り、見知った地形、覚えのある建物などは、まるきり見当たらない。
「……どこ?」
焦って、グルグルその場で回転して目を凝らすけれども、果たしてそこは全く他人の顔した景色しかありません。
現状を把握するため、記憶をたどってみる。
さっきまで、確か寝てたよね?
今日は久しぶりの休日で、やっと思う存分楽しんで自宅満喫するんだ〜うふふ。
何しよっかなぁ、朝は好きなだけ寝るでしょー、それから、好きなもの買い込んで、好きなだけ食べるの。コンビニって、いつでも開いてて親切便利よね。
でも、この休み前日の夜更かしは堪らない。
もう、夕方から、帰りに何買おうかなぁ、ビール?チューハイ?
チョット高いのいっとく?もう楽しい!
遠足前の小学生の気分を満喫。
買い込んだお酒に、いい気分でチーズ鱈とクラッカー食べて、余った分ラップで皿に包んで……。
ハッ
自分の手にある、このラップ!
そしてお皿!
一緒にいるのね。
酔っ払いって、どうして冷蔵庫に入れるつもりで一緒にベッドで寝てるんですかね。
ラップとお皿が、現実的です。
ラップごとありますよ?
この細長い箱までベッドに持ち込むなんて、
ちょっぴり悲しいような。
お酒は控えるべき?
森の中、周囲から浮いてる感がたっぷり。
私今深い森にいるらしいですね。
林ほど疎らではなく、背の高い木々がバラバラに生えてて、手入れしてるような、してないような?
林業に携わってないから、イマイチわからない。
先に道っぽい(多分)のが、前方のとこに見えるんで、そこに行きます。
どこにいるのか不明なので、とにかく人里に辿りつかないと。
非力で生存競争では早めに退場させられるほどにしか生命力ない私です、早く人のいるとこに行かねば、遭難確定ですよ。
室内靴(お気に入り)でゆっくり進む。
空気が澄んでて、休暇には最高ですが、用意万端ではない今では、只々見知らぬ周囲に恐怖がジワジワ。
どうして、こんな場所にいるのか?
気付けば、ここに立っている。
泣きたいけど、頭が混乱していて、ちゃんと泣けない。歩いて時間が経つに連れ、不安要素しか感じない。
なんで、今は明るいのか。その割に十分寝た後のスッキリ感がないのか。
いくら目を凝らしても、建物はおろか、立札も案内板もない。今住んでる家の周りでこんなに何もない山は知らないよ?
森の中でも、普通なら人間の気配がするナイロン袋のゴミぐらい落ちてあるはずなのに。
ダラダラ、冷や汗と勝手に流れる涙で顔が大変なことになってるけど、止められない。
絶対に顔色は悪いだろう。
とりあえず!
あそこの、ポカリとした空間のとこまで行きます!!
道(多分)よね?
お願い!!!
もうすぐ40代突入、営業事務。
今絶賛迷子中。
現状を打破するために、行きます!