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第6話 万能通貨(1)







 怪我のせいで意識が朦朧としてたこともあって、それは幻聴のように思われた。

 だけど、何かが引っかかる。

 それに、この声は『剣術』を手に入れた時にも聞いた気がする。


「幻聴、じゃない?」


 こんな時にスキルの取得?

 どうしてだ? 俺は何もしていない。


 スキルは3つのレア度に分類される。

 剣術などの大多数のスキルを含めたコモン。

 鑑定などの生まれ持った才能で左右されるといわれるレアスキル。

 そして、それらに分類されない希少なユニークスキル。


 コモンスキルのことは知っている。

 以前父にもらったスキル辞典を何度も読んだからな。

 レアスキルについては、有名なのをいくつか知っているだけだ。

 だけど……


「万能……通貨……? なんだそりゃ、聞いたことないぞ……レアスキルか……?」


 俺は試しに鑑定で自分のスキルを閲覧した。


 


 ―――――



 ベルハルト



 スキル 万能通貨、剣術(1)、鑑定(1)




 ―――――



「レベル……なし?」


 いよいよ本当に自分の頭がおかしくなったのかと思った。

 鑑定したスキルのレベルが表記されてないなんて聞いたことがない。


 一瞬頭にユニークスキルのことが浮かんだ。

 神に愛されたもののみが先天的に取得しているスキル。


(いや、いくらユニークスキルでもレベルは表記されるよな……それに仮にユニークスキルだったとしても

 それを後天的に取得できたなんて話聞いたことないぞ)


 俺の鑑定スキルのレベルが高かったら、詳細からレア度が分かるんだけどな……


「ぐっ……!」


 試しに使ってみよう。

 なんにしても今の状況じゃ、頼れるものに頼りたかった。

 俺はスキルの使用を頭の中で念じる。


 すると頭の中に文字が浮かんだ。

 実際に目に見えていたわけではないけど、俺にははっきりと分かった。




 所持金『0G』




「所持金……?」


 なんだこのスキル。

 けど、所持金って言ったら、これのこと……だよな……?

 ポケットから今の全財産である銀貨2枚と銅貨4枚を取り出す。

 すると突然手に持っていた硬貨が目の前からふっと消失する。

 見えない何かにかき消されたかのように……




 所持金『2400G』




 なんだこれ……? 硬貨がスキルに吸収されたのか……?

 俺には理解できない……財布代わりのスキル?

 これだけじゃ何の役にも立たない。

 さすがにここで財布代わりのスキルとか……泣くぞ……


「……万能通貨……『万能』、か……なら、何でも買える……とか? 金払ったらこの怪我治してもらえたり……」


 はははっ。

 いくらなんでもそれは――――



 全回復『100G』




「――――――」


 思考が一瞬停止した。

 頭に浮かんだ文字列の意味が分からない。

 いや、分かる……分かるには分かる、けど……これって。


 頭の中に声が響く。

 スキル取得の時と同じ声。



『購入しますか?』



 喉がカラカラに乾いていく。

 心臓がバクバクと早鐘を鳴らした。


「……購入する」


 そう呟いた瞬間、薄緑色の光が俺の体を包み込みその光に癒されるかのように、痛みが引いていく。

 擦過傷が塞がり、折れていたはずの手足の感覚が戻る。


「まじかよ……」


 驚いた。

 いや、驚いたどころじゃない。

 なんなんだこのスキル。

 見たことも聞いたこともない。

 お金を消費して回復できるスキル……いや、待て、それだけじゃない。

 だって……


「万能……」


 俺の胸は高鳴っていた。

 この万能通貨、果たしてどの範囲まで効果があるのか。



「武器……とか」




 錆びたナイフ『100G』


 鉄のナイフ『4000G』


 銀のナイフ『25000G』


 ミスリルナイフ『200000G』


 ―――――――――


 ―――――――――


 ――――――………




 すると武器のリストがイメージとして描写され、武器は買えるらしい事が分かった。

 正直これだけでも信じられないけど、さっき怪我が治ったばかりなので受け入れるしかないだろう。


「………高いな」


 いや、高いってのは言い方が悪いな。

 値段自体は普通だ。

 普通なんだけどさっきの全回復が100Gだったから高く見える。

 


「薬草」




 薬草『50G』



 うん、普通。

 むしろちょっと高いくらいだ。

 けどさっきの全回復は安かったよな……治療院で頼んだら金貨が飛ぶけど……

 物品は比較的高いのか?

 それとも今すぐ手に入ると思えば安いのだろうか?


「それなら……そうだな、形のないもの……」


 ありえないけど……試すのはタダだしな。

 そして、俺はその言葉を口にする。

 絶対にありえないもの。

 この世界で購入出来てはいけないはずのもの―――


「スキル」


 頭の中に情報が流れてくる。

 脳内に文字が走り、表示される。

 




 剣術(2)『2000G』


 鑑定(2)『10000G』


 体術(1)『1000G』


 錬金術(1)『1000G』


 投擲(1)『1000G』


 短眠(1)『1000G』


 身体能力強化(1)『1000G』 


 偽装(1)『5000G』


 ―――――――――


 ―――――――――


 ―――――――――


 ―――――――――


 ――――――………





 声が出なかった。

 何度も頭の中のそれを確認する。

 しかし、それは間違いなくスキルだった。

 この世で絶対の力。

 努力と才能によってのみ手に入れることのできる能力。

 そのはず、だった。




「―――――――は?」





 さすがにそれを信じられなかった俺は暫くその場で固まった。








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