第52話 パーティ(5)
「良い宿ね」
シャルとルーシーは宿の隣にある従魔用の宿舎に預けてきた。
そして、クレアの手続きを待つ。
名簿に名前を記入して空いていた部屋を一つ借りた。
そのまま夕食を食べながら会話は自然とお互いのことになっていった。
「そういえば、ベルとミアは主従関係というよりかは冒険者仲間みたいな関係なのよね?」
「ああ、そうだぞ」
固めのパンをスープに浸して口に運ぶ。
それを咀嚼してからクレアに答えた。
「部屋は隣同士なの?」
「ん? いや、同じ部屋だぞ」
「へー、同じ……同じ?」
クレアのスプーンを持つ手がピタリと止まった。
俺とミアの間で視線を彷徨わせると何かに気付いたように「ええ!?」と、声をあげた。
元から赤いクレアの頬がカーッと熱を持ちさらに真っ赤に染まった。
「ご、ごめんなさい! その、そういう関係だとは思わなくて!」
クレアに気を遣われる。
俺は慌ててクレアを止めた。
「待て、クレア。お前何か勘違いを……ミアも何か言ってやってくれ。俺とミアがなんてありえないだろ?」
ミアを見る。
なんか凹んでた。
「あ、ありえない……」
肩を落として俯きながら、どんよりしたオーラを出している。
もしかして俺がミアのことを嫌いだという風に受け取ったのだろうか。
「ベル! 今のはよくないわよ! 恋人にそんな否定のされ方したらミアだって傷付くわよ!」
「いや、違っ……別に俺はミアのことを嫌ってなんてないぞ? ミアだって俺と恋人なんてありえないだろ?」
「え、そうなの?」
クレアに頷く。
誤解が解けそうなのでこの隙に慌てて弁明する。
そんな誤解されたらパーティとして気まずい。
俺とクレアの視線を受けてミアが答える。
「え、えーと、そ、そうですね……はい……ありえない……ですかね……」
ミアが搾り出すように言う。
それを聞いて俺はクレアに「な?」と、向き直った。
「……ベル、なんとなくなんだけど……」
「ん?」
「いや……なんでもないわ。あと大体理解したわ」
よく分からないが理解してくれたようで何よりだ。
だけどなんでミアの肩をそんな優しく叩くんだろうか。
クレアは凄い何とも言えない微妙な顔をしていた。
「あ、そういえば」
そこでクレアは思い出したように顔を上げた。
「ギルドで貼り出されたクエストのことはもう知ってる?」
「ん? いや、ギルドにはまだそんなに行ってないからな。何かあったのか?」
今のところ登録手続きとクエストの受注と報告だけだ。
ギルドで何かあったのだろうか。
気になったのでクレアに聞き返す。
「近々大規模討伐クエストがあるらしいのよ。私たちも参加してみない?」




