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第47話 クレア






「な、なんのことですか?」


 目の前の少女の言葉が理解できなかった。

 疑問を投げかけるが返ってきたのは敵対心丸出しの赤い視線。


「ギルドで噂になってるのよ! 小さな奴隷の女の子を戦わせて、その上成果を自分の手柄にする男がいるってね!」


 なんだ? 一体何の話をしてるんだ……? 

 いや、待てよ? 

 確かに俺には心当たりがある。

 ミアは奴隷で冒険者……そして、俺はそんな彼女のランクを上げようと手伝っている。

 ついでに言うならクリムゾンベアーやゴブリンの半分はミアが倒したようなものだってことにしてるけど、おそらくはそれもよくなかったのだろう。

 傍から見たら奴隷の女の子を戦わせているうえ手柄を横取りしている最低な男にも見えなくはない。


「いや、それは誤解……」


「誤解って……何が誤解なの? その子が首に巻いてるのは何?」

 

 む……咄嗟には良い言葉が出てこなかった。

 そんなこちらの様子を見てほら見たことかと少女はさらに視線を強めた。


「ギルドで仲間も見てたのよ? 自分だけ楽をしながら可愛い女の子をこき使っているゲスがいるってね!」


「人聞き悪すぎる!?」


 いくらなんでもそこまで言われるようなことはしていない……はず。うん、たぶんしてない。


「あ、あの……」


 見かねたミアが仲裁に入ってくれる。

 よかった。

 この場を止めれるとしたら彼女だけだろう。


「ご主人様はそのようなことをする御方ではないのですが……」


「……本当なの?」


 ぎろりと睨まれる。

 凄い疑われてるな……疑惑の目がこちらを射抜いてくる。

 背筋に寒気を感じながらもなんとか頷いた。


「分かった……私もいきなり初対面の人に色々言い過ぎたわ……失礼だったわね、ごめんなさい」


 分かってくれたらしい。

 先ほどとは一転、一歩下がって頭を下げてくる。 

 どうやら誤解は解けた……のかな?

 しかし、少女は「け・ど!」と、びし! と指を突き出してきた。


「私にはそれの真偽が分からないわ」


 駄目だった。

 解けてなかったらしい。


「な、ならどうするんですか?」


 すると少女は今度はミアに視線を移す。

 俺に向けていたのとは違う明るい笑みを浮かべながらミアに言った。


「貴女は確か冒険者なのよね? パーティを組ませてもらえないかしら?」


「ご、ご主人様に聞いてみないことには、私では、その……なんとも……」


「む、そうなの?」


 そして、再びこちらに矛先が向けられる。


「どう? 入れてもらえないかしら? これでもアタシ強いのよ!」


 強さはこの際どうでもいい。

 だけど本当にそんな噂があるなら入れないと面倒ごとになるかもしれない……

 せめてさっき聞いた不名誉な噂の真偽だけで確かめさせないといけない。

 自分で言うのも何だがミアの俺に対する懐き具合は尋常じゃない。

 すぐに誤解も解けるだろう。

 なら、それまでの関係だ。


「分かりました。これからよろしくお願いします」


 この人をパーティに入れることで解決するかは分からないけど、少なくとも入れなかったらこの人は納得しないだろう。


「タメでいいわよ? そっちが素なんでしょ?」


「……分かった。俺の名前はベルハルト、ベルって呼んでくれ。こっちはミア」


 こちらが名乗ると、少女は二カッと快活な笑みと共に名乗った。


「こっちの狼の子がシャルでこっちの犬の子がルーシー。この子たちは魔物だけど私の従魔だから安心して大丈夫よ。そして、私がクレア。魔物使いのクレアよ」







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