第45話 冒険者登録(4)
もうゴブリンじゃ相手にならないな。
自分の成長を嬉しく思う。
ちょっと前までは凄いビビってたからな……今じゃ多少の魔物なら動じることなく倒せそうだ。
魔核をミアと共に剥ぎ取りながらうんうんと頷いた。
「ご主人様、こちら終わりました」
「ああ、こっちも終わったところだ」
布袋に6個の魔核を入れる。
今のところ薬草が20束ちょっとでゴブリンの魔核が6個。
日はもうそろそろ沈みそうだ。
成果としては十分かな。
「ん?」
やたらと大きい反応が探知に引っかかる。
なんだこれ……オーク、じゃないな。
でもオークと同じくらい強い気配を感じる。
「ミア、あっちに強い魔物がいる」
「どうされます?」
「オークと同じくらい……Dってところだな、たぶん倒せるから行ってくるよ」
「……オーク並みの魔物ですか、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だ、ミアは待っててくれ」
探知は気配で大まかな強さも分かるからありがたいな。
すぐに探知スキルに引っかかった魔物のところへと向かう。
「なんだあれ……赤い熊?」
そこにいたのはオークよりも一回りほど大きい熊だった。
熊の背後の木に身を隠しながらそいつを観察する。
どうやらゴブリンを食べているらしい。
さっそく俺は背後から斬りかかるために剣を構えた。
全身をスキルで強化して一息で熊の背後に滑り込む。
首を斬り落とすべく一撃を叩き込んだ。
「……ッ!」
毛で滑った……意外と硬いぞあの毛皮。
それでも向こうも無傷とはいかなかったらしく、首の辺りから血が滲んでいる。
「GURU……ッ!」
そして、見つかった。
赤毛の魔物はこちらに気付き振り向いた。
そして、その巨大な爪でこちらの命を散らさんとしてくる。
「………遅いな」
慌てて見切りスキルを発動したけどあっさり躱せた。
何かの罠かとも思ったがどうやら本当に遅いらしい。
威圧感はある。力も強そうだ。
だけど速さはオークほどじゃない。
「GUR―――!」
赤毛の熊が威嚇をするように体を大きく見せて吠えようとした瞬間、俺は地面を蹴り上げて熊の方へと土塊を飛ばした。
一瞬の隙。
身体能力を強化して見切りスキルで敵の懐へと潜りこむ。
口に入った泥を吐き出そうとえずいていた相手の口内から上顎に剣を突き立てた。
いくら毛皮が硬くてもここはそうじゃないはずだ。
俺はそのまま怪力スキルで力任せに剣を押し込んで脳天を貫いた。
◇
魔核の買取はミアに任せて俺はギルドに置いてあった魔物図鑑で先ほどの魔物のことを調べていた。
赤い熊は……お、これかな?
先ほどの魔物そっくりの挿絵を発見する。
「えーと、何々?」
クリムゾンベアー(Dランク)
体長は2~3mほど。
その巨体と血のように赤い深紅の毛はそれだけで威圧感を与える。
動きは遅いが力が強く、剣で斬ってもその分厚く硬い毛で滑るため致命傷を入れるのは難しい。
冬はほとんど眠っていてその姿が確認されることは稀だがその分暖かい気候での時期の活動は活発。
見つけたら絶対に近寄らないようにするのがいいだろう。
特に空腹時は気性が荒くなり生き物を見かけたら襲い掛かってくることが多い。
手を出してはいけない魔物の代表格ではあるがその赤い毛皮は人気が高く討伐に向かい返り討ちになる冒険者が後を絶たない。
「毛皮高かったのか……放置してた……」
今から取りに行くのは……さすがに危険だろうか。
暗くなり始めてるし明日見に行って残ってたら回収しよう。
一人で落ち込んでいると何やら騒がしいことに気付いた。
なんだろう?
「ミア、どうした?」
ミアに声をかける。
「あ、ご主人様、それが……」
「ミアさん! 聞いてますか!? クリムゾンベアーを討伐した方をFランクのままにはしておけません!」
えーと?
「つまりミアがクリムゾンベアーを倒したことでランクが上がるってことですか?」
俺も話に加わる。
「そうです! ミアさんが強いことは分かってましたけどまさかDランクの魔物をソロで討伐できるレベルに至っていたなんて!」
ルルさんは興奮気味だ。
そんなに強い魔物なのか……オークの方が強く感じたけど……
いや、オークもよく考えたら相当に強い。
討伐できたのはきっと凄いことなんだろう。
「ま、マジかよ……あの獣人の子そんなに強いのか?」
「まだ子供だよな……?」
「っていうかすげー可愛いな」
周囲からもざわざわと話し声が聞こえてくる。
なんだろう、ミアが褒められると俺も嬉しい。
ご主人様として鼻が高いよ。
「いえ、実はこの魔物はごしゅ!?」
ミアの口を慌てて塞ぐ。
(待て待て、せっかくなんだし一緒に倒したことにしよう。その方がミアのランクも上がるし)
(……複雑です……本当はご主人様が御一人で倒されたのに……)
ミアは俺が正当に評価されないのが我慢できないらしい。
俺の手柄を自分が奪ってしまうことも嫌なのかもしれない。
(俺が言うよりミアが言った方が説得力あると思う、任せた)
俺はここでは力を見せてないからな。
それなら強いと思われてるミアの口から説明してもらった方がいいだろうと考えた。
ミアがルルさんに説明をしてくれる。
その間俺は先ほどまで見ていた魔物図鑑を読みながら待つことに。
しばらくするとミアが戻ってきて、こちらへカードを見せてきた。
「Eランクか、おめでとう」
さすがにいきなりDランクまで上がることはなかったみたいだ。
これでミアはEランク冒険者。
元々実力もそれ以上はあるだろうから問題はないだろう。
「は、はい……申し訳ありません……」
だけどミアは申し訳なさそうにしている。
猫耳をぺたんとさせて謝ってくる。
「何を謝ることがあるんだ? 凄いじゃないか」
「ですが……ご主人様の御力なのに……」
「俺のことなら気にしなくてもいい、それにそれなら本当に狂化なんて使わなくてもソロで倒せるくらい強くなってやろう、俺も協力するからさ」
「うー……分かりました」
ミアは才能があると思うから強くなれると思う。
こうして複雑そうなミアと俺は一緒に宿に戻るのだった。




