第44話 冒険者登録(3)
「おめでとうございます」
ミアが冒険者の証を受け取る。
ちなみに冒険者の証とはその名の通り冒険者であることを証明する証だ。
結果は文句なしの合格。
ルークさんはDランクの冒険者だ。
それならそのルークさんを倒したミアはDとかCからになるのだろうか?
そう聞くとあれはあくまで強さの確認だからランクにはさほど影響しないらしい。
どんな冒険者でも基本的には最低ランクであるGから始まるらしい。
けど、それでもミアはその強さを見せたおかげでFランクからのスタートらしい。
これはそれなりに珍しいことらしくそれだけミアが期待されてるってことなんだろう。
「嬢ちゃんは……いや、ミアはあんなに強かったんだな……合格おめでとう。これからは同じ冒険者仲間だ。頑張ろうぜ」
「はいっ」
ルークさんにがしりと握手されるミア。
別にいいんだけど俺もこういうイベントをしてみたい。
冒険者同士の絆というかなんというか。
俺はまだ冒険者にはなれないから素直に羨ましい……
ちなみにリンゼさんたちは別のクエストに行ってしまったらしい。
結果を報告したかったのだが……また今度でいいかな?
「依頼は何を受けるか決まったのか?」
「いえ、これからご主人様と探そうかと」
するとルークさんはギルドの中の一か所を指差す。
「あれがクエストボードだ。だけどあれに貼ってない依頼もあったりするから何かお勧めをルルから聞くといいだろう」
親切に教えてくれるルークさん。
お礼を言うと俺たちはルークさんのアドバイス通り受付嬢のルルさんのところへと向かう。
「クエストを受けたいんですが」
「はい、どのようなクエストを御希望ですか?」
ミアがどうしましょう? とこちらに顔を向けてくる。
これに関してはいきなり魔物の討伐は危険だと思う。
ギムルで魔物は倒していたけどここでは土地勘も何もないし、何よりどんな魔物が出るのか全く分からない。
クエストを失敗したら違約金もあるし……
「最初は簡単な採取クエストがいいんじゃないか?」
ミアにそう伝えると「分かりました」と、ルルさんに伝える。
「それでしたら薬草採取などはどうでしょう? 採取する数には決まりはありませんが10本ごとに200Gの報酬が出ます」
やっぱり薬草採取はかなり安いな。
けど今のところはお金に余裕もある。
盗賊の件で手に入れた分もあることだし、いきなり高難度は受けなくてもいいだろう。
「分かりました、それでお願いします」
さっそくクエストを受けたミアと一緒に俺たちはギルドを出ようとする……と、その時、ルルさんが俺たちを呼び止める。
「北東にある森の奥には行かないように気を付けてください」
「北東? 何かあるんですか?」
「魔の森と呼ばれる場所があります、食物や自然の実りが豊富な場所なのですが……」
それの何が駄目なんだろうか?
俺たちが疑問に思っているとルルさんが説明してくれる。
「魔物が多く集まるんですよ……高ランクの冒険者でも滅多なことでは近付かない場所です」
「なるほど……分かりました、気を付けます」
ちなみに、とルルさんが付け足す。
「Dランクの魔物の群れも普通に出ますからね」
……Dランクってオーククラスだよな?
それが群れか……絶対行かないようにしよう。
そう心に誓うのだった。
◇
冒険者の証を門番の人に見せて通してもらうと俺とミアはさっそく人のいない森の中にまで来ていた。
勿論ルルさんの行っていた魔の森ではなくその反対側にある森の中だ。
「ミア、薬草の特徴は覚えたな?」
「はい!」
そして、スキルを発動。
「『探知』」
以前よりも広く精密な情報が流れ込んでくる。
周囲に魔物は……
「めっちゃいる……」
索敵範囲の広くなった探知スキルだけど、ギムルの時よりも遥かに多い魔物や小動物の情報が流れ込んできた。
ギムル方面だと歩いて1匹2匹出てくるって感じだったけど、ここは探知を使うだけで簡単に引っ掛かる。
ここ凄いな!
「薬草を採りながら魔物を倒していこう、ミアは倒した魔物の魔核の回収を頼む、俺は警戒と薬草の採取をする」
「分かりました!」
ミアの元気の良い返事を聞いてさっそく歩き出す。
歩きながら見つけた薬草も採取していく。
俺は昔から薬草を採取して生計を立てていたんだ。
どこに生えるかなんてのは俺にはすぐにわかる。
この辺りは魔物だけでなく薬草なども豊富にあるようでその数はあっという間に20を超えた。
「ミア、あっちにゴブリンがいる」
「倒してきます」
「いや、待った待った、複数いるみたいだ。俺が行ってくるよ」
複数いるのは珍しい。
少なくともギムルでは見たことがなかった。
「複数ですか……」
ミアが少し考え込む。
ゴブリン6匹くらい問題はない。
だけどミアは万が一を考えてくれているんだろう。
どれだけ心配性なんだ……
「ご主人様、やはりここは私が」
「あとで膝枕をしてもいいぞ」
冗談で言ってみる。
さすがのミアでもそこまでは……
「………」
黙ってしまった。
色々と忠実なミアさんだった。
「……いってくる」
「ああ!? ち、違うんですご主人様! 膝枕は卑怯です!」
迷った末に食い下がってきたミアに言ってやる。
「一瞬悩んだよな?」
「うぐっ!? で、ですが万が一御怪我をされたら……」
「その時はミアが助けてくれ」
心配するミアの頭を軽く撫でてやる。
「いってくる」
「ぁ……っ、は、はい!」
探知で周囲に人がいないことを確認。
このくらいなら身体能力強化だけで十分すぎるな。
全身を強化すると即座にゴブリンの傍まで直進した。
向こうはこちらが急接近したことに気付いていない。
数は6匹と大量だ。
俺は背後からゴブリンたちに斬りかかった。




