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第42話 冒険者登録(1)





 少し進むとそこは大通りで服飾店や八百屋、肉屋や様々な屋台が軒を連ねていた。

 どうやら演劇を上演しているところもあるみたいで、今日の演目はいつかリンゼさんと盛り上がった冒険譚が題材らしい。

 リンゼさんがいたらきっと目を輝かせたに違いない。

 遠くの方で断続的に煙が上がっている一角は鍛冶屋や武器屋が集まっているのだろう。

 大通りの突き当たりには豪奢な領主様の屋敷が建っている。

 その近くには領主様の屋敷には及ばないが大きな建物がいくつかある。

 別れる前に聞いた話だとそこに冒険者ギルドや商人ギルドと言ったギルドの建物が集まっているらしい。


「じゃあ俺たちは活動拠点を探すとするか。どんな宿がいいかな?」


「2人部屋がいいと思います」


「いや、そうなんだけどもっとこう……具体的な意見はないか?」


「そうですね……ご飯が美味しいところがいいです」


 たまに忘れそうになるけど俺には借金があるしお金には少し余裕はあるけどあまり高いところには泊まれないかな。

 そう思ってギルドや商店街から少し離れた通りを歩いているとミアが一軒の宿を指差す。


「あ、あそこの宿なんかどうでしょう? いい匂いがしますよ!」


 確かにいい匂いがするな。木造の落ち着いた雰囲気の宿だ。


「小鳥の止まり木停、か」


「可愛い名前ですね」


 ミアの言葉を微笑ましく思いながら宿に入る。

 赤と茶色が混ざった感じの髪色をした女の子……たぶんちょっとだけ年上くらいかな?

 その子に声をかけるとお申し訳なさそうに言ってきた。


「あ、お客さんですか? ごめんなさい。ちょっと待っててくださいね」


 落ち着いた雰囲気とは裏腹に宿内は活気があった。

 

「お待たせしました。お昼時は忙しくて……えと、宿泊ですか? それともお食事を?」


「泊りで。食事は時間とか決まってる?」


「真夜中や早朝でなければいつでも構いませんよ。お代を払ってくれるならお弁当もつくります」


 ふむ、意外とって言うのも失礼だけどサービスがいいな。

 そして聞いたところ、さっきも言っていた通り食事処と宿を兼ねているみたいでご飯は朝食と夕食を別料金で食べれるらしい。

 宿泊している人は少し安くなるみたいだ。

 清掃も行き届いてるみたいだしいいところを見つけれたかもしれないな。


「ミア、ここにしようと思うんだけどどうかな?」


「いいと思います」












「冒険者ギルドか……なんか緊張するな……」


「大丈夫ですか? どこか調子でも?」


 いや、単純にいい思い出がないだけだ。

 なんというか絡まれたりしたことがほとんどで、また変なことに巻き込まれるんじゃないかと……

 けどずっとギルドの扉の前で立ち尽くしているわけにもいかないので意を決して中へと入る。

 ぎぃっと音を立てて木製の扉が開いた。


「あっ!」


 声をかけてきたのはリンゼさんだった。

 隣にはルーシャさんとサリアさんもいる。

 依頼の報告でもしていたのだろうか?


「さっきぶりですね、宿は見つかりましたか?」


 サリアさんが質問してくる。 


「はい、小鳥の止まり木停というところです」


「あーあそこはいいところよね。私たちも駆け出しの頃はお世話になったわ」


「お勧めの宿とか教えてあげればよかったですね。今更だけど……」


 ルーシャさんが申し訳なさそうに謝ってきたので慌てて気にしてないと言う。

 それにいい宿も見つかったのだから問題ない。

 ちなみにリンゼさんたちにはあまり俺たちが盗賊を倒したことは言わないでほしいとお願いしておいた。

 手のうちは隠しておきたいだろうってことで納得してもらえた。

 そのあたりは信用出来る人たちだと思うから大丈夫だろう。


「なんだあ? 坊主も冒険者になりたいのか? がははっ、精々死なないようになっ!」


 気の良いおっさん冒険者に背中を叩かれる。

 悪意とかはない感じだ。


「俺はDランクだが冒険者歴は長い。なにかあったらアドバイスくらいできるぜ」


「ありがとうございます。なにかあればぜひ」


「おうおう、礼儀良いな。おう、ちなみにお前の話してたリンゼたちもそれなりに腕が立つぞ」


「そうなんですか?」


「ああ、さっきも賞金首を捕まえてきたらしいしな。坊主も俺たちみたいに強くなれよ。じゃないと冒険者なんてすぐに死んじまうぜ?」


 あーうん。

 いや、俺は全然いいんだけど、リンゼさんとルーシャさんとサリアさんは何か言いたそうにうずうずしていた。

 あ、ミアも何か言いたそうにしている。

 耳がピクピク動いてる。

 ……大丈夫かな。

 言わない……よな?


「それじゃあミア、登録しにいこうか」


「は、はいっ」


 ちょっと緊張気味のミアと一緒に受付へと向かっていった。






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