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第35話 買取(1)





 台車を買うことも検討したけど、出したところで山道は険しい。

 そのため子供2人で運べるようなものではないし、鳥の素材を俺たちだけで全て持って帰るのは無理だろうという結論に達した。

 なのでせめて魔核だけは持って帰ろうと街へと向かう。

 大丈夫だとは思うけど、あの鳥を誰かが見つける心配もあったので、少し急ぎ足でギムルの街にあるギルドの扉を潜った。

 相変わらず少し酒臭く、冒険者たちの声で賑わっていた。

 ミアはフードをかぶっていないので何人かの冒険者からの視線を浴ている。

 中にはミアを見て鼻の下を伸ばしている冒険者もいたけど、俺がミアを隠すように遮ると舌打ちされた。


 そしてギルドにて買取を待つ。

 人が並んでいたので少し時間がかかりそうだ。

 本でも読ませてもらおうとギルドの本棚に常備してある魔物図鑑を手に取った。

 せっかくなので戦ったばかりの魔物について調べてみた。



 ―――メタルクロウ(Bランク)


 縄張り意識が強く産まれた場所から出ることはあまりない。

 だが、繁殖期になると北にある繁殖地に揃って飛んで行く。

 体長は6、7メートルほど。長い2本の尻尾があり、体色は黒。

 主にその長い尻尾による攻撃と尻尾の先の羽根を飛ばして攻撃してくる。

 その他にも爪による攻撃や体当たりもしてきて尻尾を使う攻撃には一歩劣るがその巨体ゆえに十分危険。

 特に爪は鉱石を削り取るため非常に発達していて、鋼鉄をも切り裂く硬度を持っている。

 更には諸刃のスキルを持っている個体が多く守りに関しては弱い反面、敵を倒すための力に関してはAランクに近い。

 消化の助けにする為なのか岩を食べる習性があり、その特殊な消化器官で岩に含まれる金属を精製する。

 戦闘の際に金属を操ることができるが、体内に溜まっているのはごく微量なので切り札のようなもの。



(あいつそんなに凄い魔物だったのか……ほんとによく生きてたな俺たち……)


 あれ、でも体色が微妙に違うような……?

 それに金属の攻撃バンバン使ってきたけど……もしかしてあいつ亜種とかだったのか?


 と、そこまで考えたところで名前を呼ばれる。

 順番が回ってきたのだろう。

 本を閉じて買取カウンターへと近づいた。


「魔核の買取をお願いしたいんですけど」


 冒険者ギルドで買取担当者のお姉さんに声をかける。

 すると、いつだかのオークの魔核の時の人だった。


「はい、何の魔核でしょうか?」


 スライム、ゴブリンなどの小さい魔核に合わせてあの投擲オークの魔核を提出する。

 

「……これで全部ですか?」


 少し間を置きながらも二度目だからか、スムーズに事は進んだ。

 最後にあの鳥の魔核を目の前に置いた。


「? これは何の魔核でしょうか?」


「たぶんメタルクロウだと思います、襲われたので倒しました」


「え―――」


 するとしばらく動きを止める。

 たっぷり数秒間固まった後で女の人は「ふぅ~」となぜか呆れたようにため息をついた。


「えーと、お名前は何でしたっけ?」


「ベルハルトです」


 答えてはみたもののなんで名前を聞かれたのだろうか?

 疑問に思っていると女の人はどこか咎めるように言ってきた。


「ギルドの職員に虚偽の報告をすることは明確な犯罪行為です、子供といえども許されません」


「虚偽?」


 すると少し苛立ったように声が大きくなる。


「メタルクロウはランクBの魔物です! あなたみたいな子供に倒せるような魔物ではありません!

 それに加えて魔核の色も違いますっ、正直に答えてください? これは何の魔核でどこで手に入れたんですか?」

 

 ジッと疑いの目でこちらを見てくる。

 怪しまれてるのね……

 こっちとしてはあの金属の塊を外に置いたままなのでできれば急ぎたいんだけどな。


「いえ、別に盗んだとかではないですよ、確かに自分たちが倒したものです」


 しかしこれは事実である。

 何と言われようとこれしか答えようがないのだから仕方ない。

 色が違うのは亜種だからだろう。

 ゴブリンの時にも色が違ったし。


「……分かりました。そこまで言うならこれを使います」


 女の人は何か白いカードのようなものを取り出した。

 なんだろう? ギルドカード……ではないよな?

 

「これは魔道具です」


 すると買取の女の人は説明をしてくれた。


「魔核に触れることでカードに情報が表示されるという代物なのですが……ここまで言えば分かりますよね? 撤回して謝るなら今のうちですよ?」


「撤回も何も事実ですし」


「はぁ、もう謝っても遅いですよ?」


「じゃあもしも間違ってなかったらそっちが謝ってくださいね?」


 はいはい、と担当の人は魔核にカードを近付ける。

 こつんとカードが触れた瞬間カードの色がカメレオンのように変わっていく。

 そうして自信満々にカードに表示された文字を確認した―――


「ぇ?」


 目をぱちくりさせる買取担当者を見て内心安堵する。

 こんな便利な魔道具があるならなんとかなりそうだな。

 だけどそれからは色々と慌ただしいことになってしまい、質問攻めにされた。

 魔道具で嘘をついてないかどうかの確認もされたし……

 ミアも怯えてしまいちょっとだけ俺の服を摘まんで来るのだった。

 ある程度は覚悟してたけど、そこまで驚かれるとは。


 それとこの買取の人にはあとで謝られた。 

 あの時の言葉は半分くらい冗談みたいなものだったから別によかったのだけどギルガンさんがそれを良しとしなかった。

 涙目で謝られたので気にしなくていいですよと言っておいた。

 実際疑う気持ちも分かるし。

 そして、その後またギルドマスターの執務室に呼ばれた。

 別に話すのはいいんだけどギルガンさんは仕事とか大丈夫なのだろうか?





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