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第2話 親が残したもの(1)






 テーブルを挟んで2人の男が向かい合う。

 片方は俺だ。

 もう片側には向かい合う形で、整った身なりの男が座っている。

 俺は今聞いた言葉が何かの間違いではないかと思い、目の前の男に聞き返す。


「え~と、ガルムさん……でしたっけ? 何かの間違いじゃないんですか? 人違いとか」


「いえ、あなたのご両親が確かに500万Gを借りています」


「500……万?」


 500万Gは大金だ。

 平民の家族が1か月に消費する金額が20万くらいだと言えば分かるだろうか。

 何のためにわざわざそんな大金を借りたのかは分からないけど、普通に暮らしていたらそんな金額が必要になるわけがない。


「今はいくらになってるんですか?」


「240万です、最初の3年間はお支払いをされていたようですが、1年前から支払いがなくなったので本日催促に来させていただきました」


 1年前……両親が蒸発した時期と一致する。

 確認のために契約書を見せてもらった。

 俺の見た限りでは正式なもので、両親の名も明記されていた。

 蒸発したのには何か理由があったんじゃないかと、そう思っていた。

 正確には思いたかったのかもしれない。


「くそっ!!」


 それが、借金だと!

 なんだよそれ、心配してた俺が馬鹿みたいじゃないか!

 怒りと落胆が同時に俺を襲い、ひどく暗い気持ちになる。


 俺は両親がいなくなった時期に、生活費を得るために何か売れるものはないかと思い家中を調べた。

 その結果高価なものが根こそぎなくなっていることが分かった。

 今思えば両親は借金を俺に押し付けて逃げたのだろう。


 それがあれば借金を返済出来ていたであろう消えた家の金品や物。

 いなくなった両親に、未払いの借金。

 これらが意味することは一つだった。


「失礼ですが、ベルハルトさんのお歳は?」


「……13です。もう少しで14になります」


 まとまらない頭で、放心しながらもなんとかガルムさんの話を聞く。


「その年齢ですと、支払いは厳しいでしょう。こちらとしても困るので、ベルハルトさんが成人する15歳まではお支払いをお待ちします」


 確かにこの年齢でこの身なりだと雇ってくれるところはないだろう。

 風呂には入っていたけど、毎日外で薬草や木の実なんかを探しているため服はボロボロだ。

 衣服を買う余裕なんてほとんどなかったから、格好はみすぼらしいものになっている。

 頼れる知人でもいればいいけど、生憎この辺りには俺以外に住んでる人間はいない。

 俺はその状況を理解しコクリと頷きを返す。


「しかし、そうなりますと今から約1年間此方にお金が一切入ってこないということになります。

 なのでベルハルトさんにはその後の返済を1年という短期間で済ませていただくことになります」


 今から払い始めるか、待ってもらってから短期間中に全額払うか……金のない俺には選択肢はないか。

 問題を先延ばしにしてるだけかもしれないけど、受けるしかないだろう。


「500万を借りて利子は100万Gです。最終的には600万Gを返すという契約でした」


 頷き返すとガルムさんは続けた。


「残りは240万Gなので1年で支払いを済ませるとなると1月で20万Gを払ってもらうことになります」


 軽く計算したけど問題はない。

 俺は自分を納得させる意味でも頷いた。


「それではこちらの借用書に改めてベルハルトさんの名前を記入してください」


 借用書も一通り見て問題がないことを確認する。

 払えなかった場合は奴隷になるしかないらしい。

 陰鬱とした気分になりながらも、そうするしかない俺は借用書に名前を書いた。












 ガルムさんが帰ってからもしばらく何もする気が起きなかった。


 気分を変えようと家の外に出て風に当たった。

 沈んでいく夕日を眺めているうちに心は落ち着くものの、現状を解決できる案は思いつかなかった。


 いつまでもこうしてはいられない。

 払えなくなったら奴隷落ちだ。

 何としてでも1年で少しでも多くのGを稼ぐ必要がある。


「鑑定」


 俺はスキルを使って自分の能力を閲覧した。

 鑑定はレアスキルだ。

 俺の鑑定のランクは(1)ではあるが、それでも自分のスキルを見るだけなら問題はない。




 ――――



 ベルハルト


 スキル 鑑定(1)、剣術(1)



 ――――



 俺の覚えてるスキルはこの2つだけだ。

 いつか父に教えてもらって習得した剣術スキル。

 今時1、2年鍛えたら誰でも覚えれる……。

 けど父に褒められたことが自慢だった。

 このスキルを習得した時は本当に飛び上がるほど喜んだ。

 だけど……今は見たくもなかった。

 俺は忌々しいそのスキルを視界から外すように、ステータスを閉じた。







計算ミスりまくっていたので修正しました!

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