表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/52

第1話 借金







 トントントントン……


 そんな音で僕は目を覚ます。

 その音はおかーさんが朝ご飯を作ってる音なんだと思った。

 包丁がまな板に当たる音。

 それに続いて何かを炒める音が聞こえてきたかと思うとバターの香りが室内を満たした。


 まだ霞む目を擦りながら窓の外を見ると、ブンブンとおとーさんが木刀で素振りをしていた。

 おとーさんの引き締まった体には汗が滲んで太陽の光でキラキラと輝いていた。

 そんな姿を素直に格好良いと思った。


 僕は一つ伸びをするとおかーさんのところに。


「おはよう……おかーさん」


 次の料理をしていたおかーさんはその手を止めて、

 僕のほうに振り替えると、優しい声で顔を洗うように言ってきた。


「は~い」


 欠伸をするように返事をして、洗面台でジャバジャバと顔を洗っていると、いつの間にかおとーさんも素振りから戻ってきていた。


「おとーさんおとーさん! 今日はお仕事休みなんでしょ? どこか行こうよ! 剣術も教えてほしいな!」


 そう言うとおとーさんは、僕の頭を大きな手で撫でてくれた。

 いつも剣を握ってて、ごつごつとしてるけど、とても温かいこの手が僕は好きだ。


 おとーさんに剣術のことをしつこく聞くと

 おとーさんは嫌な顔一つしないで全部答えてくれた。

 そんなことをしてるうちにご飯ができたみたいで、

 おかーさんが僕たちを呼んでくれた。


 僕はそんなおかーさんも大好き。

 優しいし、ご飯もおいしいし、風邪の時はずっと傍で手を握ってくれていた。


 ご飯が終わると、おとーさんの手を引いて近所の原っぱに行くと、おねだりして、剣術の特訓をつけてもらった。

 一生懸命にしてたら、いつの間にかおかーさんも来てくれたみたいで、

 おかーさんも木刀を握っておとーさんと模擬戦を見せてくれた。

 やっぱりおとーさんとおかーさんは凄い!


「僕ね! 大きくなったら冒険者になりたい! そしたらおとーさんとおかーさんを怖い魔物から守ってあげるんだ!」


 僕がそういうとおとーさんとおかーさんは嬉しそうに笑顔を見せてくれた。


「でもやっぱりすごいや、おとーさんとおかーさんは……やっぱりいらなかったかなあ、コレ」


 僕はポケットに手を突っ込むと、そこに潜んでいた石を取り出して、

 おとーさんとおかーさんに見せた。

 その綺麗な石を見たおとーさんとおかーさんは、不思議そうな顔をして、しばらく見つめ合った。


「えっとね、おとーさんとおかーさんが怪我とかしないようにっておまもりをつくったんだ。でも、おとーさんとおかーさんはとっても強いからいらないよね……」


 僕が自信なさそうにしていると、おとーさんとおかーさんは――――











 目が覚めると、脳裏に焼き付いていたのはまたあの夢だった。

 随分と昔のことだというのに俺はたまに両親の夢を見る。


 何も言わず、消えた両親。

 俺にはその理由がわからず、最初は何かの間違いだと思った。

 帰らない両親に何かあったんじゃないかと心配もした。

 けど―――――


 俺は両親が姿を消した理由を嫌でも理解することとなる。

 突然家にやってきた男の言葉によって――――



「ベルハルトさんには負債があります」


「は?」









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ